⑦ 猫族の国
「さて、次はと…一応、ナイショにするのも、アレだし、筋を通しておきましょうか…。」
サンジェルマンは、そんな独り言を言いながら、コントロールパネルに、次の座標を入力した。
並行宇宙No.00001
猫暦1992年02月02日
時刻09時00分
北緯35度10分
東経136度54分
神の配慮か、運命の悪戯か。
つまりそれは、並行宇宙ナンバー以外、全て、サン・ジェルマンのアジトがある、名護屋テレビ塔と同じなのであった。
どおりで、気軽に猫王子がやって来る訳である。
言ってみれば、彼の城は、テレビ塔の時空の裏側に有ったのだ。
あの場所の座標に、ひょっとして、何か特別な意味があるのではないのか、と疑いたくなって来るのは、サン・ジェルマンだけではないだろう。
ともあれ、黒いビートルは、無事、猫王子の城の中庭に到着したのである。
突然の訪問だ。
当然、衛兵あたりが、バラバラと大挙してやって来るに違いない…と身構えたが、なんと誰一人現れない。
サン・ジェルマンは、逆に心配になって来た。
(おい、おい。仮にも、一国の主の住まう、城の敷地内だぞ?セキュリティが、ガバガバじゃないか?大丈夫なのか?…私も他人のコト言えないけど…。)
彼は用心しながら、ゆっくりと運転席から外に出る。まだ、何も起きない。
取り敢えず、一番近くの入り口から建物内部に入る。まだ、何も起きない。
そのまま、長い廊下を突き当たりまで歩いてみる。まだ、何も起きない…ひょっとして、城中みんなで、何処かへ外出中なのかな?
そんな考えが、ふと頭をよぎる。
突き当たりのドアのノブに手をかける。
カギはかかっていない。
サン・ジェルマンは、ゆっくり取っ手を回して、ドアをコチラ側に開いた。中は薄暗い。すると…。
パーン!パ、パーン!パンッパンッと、部屋のアチラコチラから、乾いた破裂音と、火薬の匂いが…。
とっさに彼は(撃たれた!)と思った。
直後に室内に明かりが灯り、自分のカラダを確認するが、無キズ。
そして部屋中が、急に騒がしくなった。
「おい、王子じゃないぞ!」
「なんでココにハダカ猿族が?」
「衛兵を呼べ!」
もう、そこら中でニャーニャー言ってて、どうにも収まらない。
どうやら、王子の誕生日かナニかの、サプライズを仕掛けたようだった。
サンジェルマンは、慌てて事態の収拾に努める。
「えーと、あー、すいません。ちょっと聞いてください!私はサン・ジェルマン伯爵という者です。アポ無しで、誠に申し訳ありませんが、どうかミケーネ王子に、お取次ぎをお願いします。」




