⑤ 基地作りの助言
さて、次は昭和29年の名護屋テレビ塔前だ。
彼は以下のように、必要な時空データを入力し、黒いビートルを飛ばした。
並行宇宙No. xxxxxx
西暦1954年06月20日
時刻11時00分
北緯35度10分
東経136度54分
サン・ジェルマンは、現地に到着すると、路肩にクルマを停めて、早速この時点の自分を探す。
居た。展望台への、列に並ぶ群衆に紛れて、出来たばかりのテレビ塔に、すっかり見惚れている。
私はこの時、あんなに隙だらけだったのか。
改めて自分の姿を、後ろから客観視した彼は、密かに反省した。もっと気をつけなければ。今や、いつ、どこから、アラハバキや四次元人が、襲ってくるのかも、わからないのだから。
それはさておき、早速あの自分に、テレビ塔亜空間の、ヒントを渡さなければ…。
何しろ、それを元にして、この場所に、私たちの基地作りが始まるのだから…。
彼はさり気なく群衆に紛れて、この時点の自分の後ろから、その上着のポケットに、メモを入れた。
はなはだアナログなやり方だが、自分自身と直接会話する事は、何かと危険そうなので避けたかった。
メモには、亜空間の正確な座標と、それを安定させるための方法を、書いておいた。
まずはコレで一安心だ。
と、そこで、あの時の自分の記憶に無い、何者かの気配を感じた。
居る。間違いない。ヤツラだ。
アラハバキの残党だ。
さては、アジトが出来る前に潰そうと考えたな。
なんて執念深いんだ。
残ったヤツラを、完全に根絶やしにするまで、終わらない、という事か。
サンジェルマンは、こんな事もあろうかと、準備ししておいた黒いビートルの機能を使って、テレビ塔周りに電磁的な結界を張った。
これで、そこそこ暴れても、一般市民と、あの時の自分には、ひとまず影響は無いはずだ。
ヤツラの気配は空からだった。
彼の腕のデバイスにも、反応が出ていたのだが、自分の事に集中していて、気がつかなかったのだ。
今回の集団も、懲りずに、多機能そうな乗り物に跨っている。もしかしたら、アレには、そのまま時空を超える機能も、有るのかもしれない。
敵の数は、ざっと50機程か。
それ程多くはないが、一人で相手をするには、些か骨が折れそうだった。
さて、どうしたものか…。
「困っているなら、お手伝いしましょうか?」
不意に背後から声を掛けられ、サンジェルマンは、不覚にも、一瞬ビクッとしてしまった。
彼が振り返ると、そこに居たのは、笑顔で佇む永遠の17歳、真田雪子であった!




