③ 雪女の回答
「そもそも私たちは、そのエネルギーの取り方で、不老不死のカラダを保ち、並行世界を旅する能力を維持して来たの。」
「…なるほど。」
「だけど、ある時期から、ニンゲンと共に暮らしたい、と希望する者が現れて…。」
「ああ、確か北関東の方で、ニンゲンとの間に、10人も子どもを作ったという…。」
「そうよ。良く知っているわね?」
「ええ、まあ、妻に関連する事ですから、私も少しばかり、研究してまして…。」
「…まあ、そういう訳で、ニンゲンと暮らすうちに、ニンゲンと同じモノを食べ、徐々にニンゲン化して行く者たちが現れて…。」
「…その子孫が、すっかりニンゲン化した私の妻、という訳なんですね?」
「その通りよ。」
「ご回答、ありがとうございます。では、もう一つ。」
「次は何かしら?」
「大熊猫…つまり、ジャイアントパンダの件なんですが…。」
「えっ…?」
「…似てますよね?貴女方と。」
「何ですって?」
「明らかにクマの姿、肉食に適した牙と、胃腸などの消化器系の作り…なのに"笹と竹が主食"という矛盾。それにあの、まるでゴリラのように発達した筋肉の、強靭な前足と、掌の構造。何もかもが、チグハグな感じだ。」
「…。」
「ひょっとして…雪女と大熊猫の間には、何かしらの関わりが…?」
「アナタ、ここに居るのが雪女ばかりで、雪男が一人も居ないという事には、気づいてるかしら?」
「…えっ、ああ、確かに。」
「そして、アナタたちの掌の、小指の外側に当たる位置に、ワタシたちはもう一つの指が有る…片手に合計6本の指が。」
彼女はそう言いながら、右の掌を、顔の前に出して見せた。
「あっ!」
「つまり、そういう事よ。」
「はっ?」
「雪男の成れの果てが、大熊猫なのよ。」
「ええっ!?」
「彼等も初めは、他の生物から生体エネルギーを奪っていたわ。でもやがて肉食になり、それも辞めて、雪の中で、竹や笹ばかり食べ始めた結果、あんな"クマもど き"の姿にまで、退化をしてしまう事に…そのせいで、並行世界を旅するチカラも、今ではすっかり失ってしまったわ。」
「そんなことが…?」
「もちろん、今でも肉食を続けている者も、数少ないけど存在しているわ。彼等は、ニンゲンたちから、イエティとか、サスカッチとか呼ばれ、恐れられている…今やすっかり希少種の野獣ね。」
「おお、なるほど。そうでしたか。どおりで…。」
サン・ジェルマンは、日頃の疑問が、イロイロと解消したようだった。
「いやあ、ありがとうございます。おかげ様で、大変勉強になりました。」
「なんの、なんの。我が末裔のパートナーの頼みだからね…特別に協力してあげたわ。それで、今後も村田京子の事を、大切にしてくれますよね?」
「ええ、それはもちろんですとも…あの、そろそろ私、お暇してもよろしいでしょうか?」
「ああ、いいとも。ただし、この場所の事は、くれぐれも口外しないように頼む。」
「了解しました。それでは皆様、お元気で!」
そう言うとサン・ジェルマンは、そそくさとビートルの運転席に戻り、出発地点に戻るスイッチを押したのである。




