② 伯爵の質問
さて一方、面食らったのは、雪女族の面々だった。
突然、会議場のど真ん中に、クルマで乗りつけた妙な男が、オカシナ事を口走っているのだ。無理もない。
「ちょっと、アナタ。随分と失礼ね。まず、名を名乗りなさい。それと、目的も。」
本日の議長、サンタクロースの娘、スネグーラチカが問いかけた。
透明感の有るワンピースを着て、緩くウェーブのかかった美しい銀髪に、スカイブルーの瞳。なかなかの美人だ。
「あ、ああ、済みません。申し遅れました。私は、サン・ジェルマン伯爵と申します。日本の"昭和の時間軸"から、やって来ました。並行宇宙の旅の実験中に、ちょっとした手違いで、コチラへ出てしまい、ご迷惑をおかけしておりまして…。」
「なんですって?」
「今サン・ジェルマンと言ったわよ?」
「サン・ジェルマンですって!」
皆が口々に喋り始め、議場全体がザワついた。
しかしまた、「皆、静粛に!」の議長の一声で、静かになった。
「アナタが本当に、あの伝説の、サン・ジェルマン伯爵なの?」
彼は議長から、再度確認される。
「…ええ、多分、私がそのサン・ジェルマンです。」
彼は今日も、"変なオジサン"みたいな口調で答える。
「アナタ、私たちの末裔と、事実婚の間柄というのは、本当かしら?」
「…と、おっしゃいますと?」
「私たちは皆、雪女族なのよ。だから、もしもアナタが変な真似をしたら、一瞬で氷漬けよ?」
そう言ったのは、中国のシュアンニュだった。銀髪お団子ヘアーで、シルバーのチャイナ服を、美しく着こなしている。
「おお、そうでしたか。ソレは奇遇ですな。ええ、いかにも。私のパートナは、村田京子さんです。どうか以後、お見知り置きを。」
そう言いながら、彼はコッソリ左手で、この場所の座標を、チャンネル登録した。まったく油断のならない、食えない男である。
「ああ、そうだ。皆さんが雪女なら、この機会に是非、お尋ねしておきたい事が有るのですが…よろしいですか?」
「あら、なにかしら?言ってみてもらえる?」
議長が言った。
「ありがとうございます。ではまず第一に…。」
「…ちょっと待って。一体、いくつ有るのかしら?」
「二つです。」
「…まあ、良いでしょう。」
「…私の内縁の妻も、貴女方の末裔なのですが、食事はニンゲンの食べるモノで、全然大丈夫なのです。ですが、本来の雪女の皆さんは…。」
「…他の生物から、直接生体エネルギーを奪って生きている。それは、どの時点から変化したのか?という質問なのね?」
後の言葉は、議長がそう引き取った。




