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「サン・ジェルマン並行宇宙を行く」(セーラー服と雪女 第22巻)  作者: サナダムシオ


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⑲ 村田京子

 二人はエレベーターで、地下駐車場に戻って来た。

 5台並んだビートルのうち、京子は迷わず黒い1台を指差した。


「コレでしょ?新型は。」

「はい。」どこか諦め顔の伯爵。

「…どうせもう、私より先に、誰かナビシートに乗せたのよねえ?」


「はあ、どうしても、緊急でしたので…。」

「一応、昨日私に報告した事は、褒めてあげるわ。」

「…はあ。」


「今日は、これから、埋め合わせをしてくれるのよね?」

「ええ、それはもちろん…。」

 会話しながら、クルマに乗り込んだ二人。


「さあ、どこへ連れて行ってもらおうかなあ…コレ、並行宇宙…つまり異世界にも行けるそうじゃない?」

「ええ、まあ…。」


「猫王子の世界とか…犬王の世界とか…雪女の世界もあるのかしら?」

「超時空雪女会議なら、たまたま乱入してしまった事も有りますけど…。」


「なに、それ?面白そうじゃない。行きましょうよ。

「いやあ…そんなにウェルカムな感じでは有りませんでしたが…。」

「雪女の末裔の私が、挨拶しに来ました…というテイで良くない?」


「…どうしても、希望しますか?」

「うん、せっかくだもの。タダのタイムトラベルじゃない旅をしたいわ。」


「解りました。」

 サン・ジェルマンは、先日の、雪女会議の登録座標を出した。そして、あの瞬間から30分後にずらして、目的地を設定する。


「それでは、行きますよ?」

 伯爵はそう言うと、装置のスイッチを入れた。


 次の瞬間、やはり当たり前に、会議場のど真ん中にビートルは出現した。

 ちょうど会議が終了して、みんな帰り支度をしているところだった。


「なんだ。また来たのか?サン・ジェルマンとやら。」

 スネグーラチカに言われた。

「ああ、度々済みません。今度はウチの妻が、皆さんにご挨拶をしたいという事で…。」


「じゃあ、後はユキメに任せる。もうこの会議は、今日の部は解散だからな。頼むぞユキメ。」

「え〜。私にもイロイロと都合が有るのに…少しだけですよ?」


「お手間を取らせて申し訳ないです。じゃあ、京子さん、御挨拶して。」


「あ、ああ、初めまして。私は村田京子と申します。祖母からは、隔世遺伝で、雪女のチカラを、代々受け継いで来たと聞いております。」


「こんにちは。私はユキメ。日本の雪女よ。だから多分、アナタの遠い先祖に当たるわね。私の姉妹の誰かが、北関東でニンゲンと暮らしたせいで、アナタの直接の先祖が生まれたのよ。」

「そう…なんですね?」


「そう。それから代々ニンゲンとの暮らしに染まり、ニンゲンと同じモノを食べ、掌の指の数が5本になり、チカラが薄れる事になったの。だからアナタも、ニンゲンの精気を吸ったりしないでしょ?」


「…はい。確かにそうです。」

「アナタが私に訊きたかった事は、こんな感じじゃなかった?」


「そう…ですね。」

 長年の疑問を、一気に説明されて、何だか京子は拍子抜けしてしまった。

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