⑯ 救出許可
「…まあ、だから、これからナニをするべきかは、分かっているのです。」
サン・ジェルマンは言う。
「どうするの?」
「彼女を、もっと良い環境の場所に、引っ越しさせるんですよ。」
「…なんでオンナの子だって知っているの?」
「ああ、これはまた、口が滑りました。実は私、個人的な興味から、以前、ネッシーについては調査済みなんですよ。」
「それじゃあ…。」
「でも、以前より確かに環境が悪くなってますね。水が随分澱んでいる。恐らくこれまで地下で繋がっていた、海や川との水路が、塞がってしまったのでしょうね。」
「…まず、どうしたら良いのか、教えて!」
「由理子さんに、まず頼みたい事は…。」
「なに、なに?何でもするわ。」
「猫王子…いや、犬王を呼び出して下さい。」
「アヌビス君を…どうして?」
「彼の許可が必要なのです。」
「…?」
「一つの命を、別の世界線に移動させる許可をね?」
「よく分からないけど、取り敢えず呼ぶわ。」
由理子は、左腕のリングのスイッチを押した。
次の瞬間、目の前の空に、銀色のアダムスキー型UFOが現れた。間違い無い。犬王の船だ。
取り敢えず光学迷彩を掛けて、湖畔に降りてもらい、伯爵もビートルを同様にして、隣に着陸した。
「おお、由理子!元気だったかい?おや、泣いていたのか?」
船から出て来るなり、尻尾をブンブン振りながら、話しかけてくるアヌビス。
「うん、大丈夫。アヌビス君は元気そうね?」
「あの〜、大変申し訳無いのですが…。」
済まなさそうに、伯爵が、二人の再会話に割って入る。
「なんじゃ、サン・ジェルマンではないか?」
少し不機嫌になる犬王。
「私の用事で、お呼びだてしてしまって、済みません。」
「何の用じゃ?せっかく由理子と二人切りじゃと思ったのに…。」
「実は早速、例の装置の使用を許可していただきたくて…。」
「まさか今から、他の世界線に行くのか?」
「いや、或る生物を、他の世界線に送りたいのです。」
「なんじゃと!?そんなバカな事を許せるはず…。」
「…ワタシからも、お願い。可哀想な子を救いたいの。」
「由理子お〜。オマエまで何を言って…。」
「お願い。」
仔犬のような眼で犬王を見つめる由理子。
「…うん、いいだろう、許す。」
アヌビスはあっさり折れた。
ソレを見ていたサン・ジェルマンは、不覚にも笑ってしまった。




