⑪ 雪子に紹介
サン・ジェルマンが、"昭和の時間軸"の亜空間レストランに戻ると、そこには既に雪子が居て、レモンティーを飲んでいた。
まるで自宅のように寛いでいるが、本来の彼女の時間軸が"照和"である事は、再三述べている通りである。
「あら、お帰りなさい。お先に、お茶をいただいてるわ。」
「おお、コレは、コレは、雪子さん。ちょうど良いところに、いらっしゃいましたね。」
「…どうかしたの?何だか随分、楽しそうな顔をしているじゃない?」
「実はつい先日、ちょっとした発明をしまして…見せましょうか?」
「あら、何かしら。見せて、見せて。」
「では地下駐車場まで、ご一緒にどうぞ。」
そんな訳で二人は、今来たばかりの駐車場へ戻って来た。
「コレなんですがね…。」
「あら、今度のビートルは黒いのね。渋くてイイじゃない。好きよ、私。」
「…心臓部に、"並行宇宙へ跳ぶ機能"も追加しました。」
「なに、それ。凄いじゃない!」
「まだ完成度としては、80%といったところなので、他所の時間軸に行く時には、多少、誤差が出ますが…この前なんか、超時空雪女会議の真ん中に出ちゃって、流石の私も焦りましたよ。」
「ああ、村田京子さんのご先祖様たちの会議ね?」
「何故か私の事も、話題にしているようでしたよ。」
「だってアナタは、"あの"サン・ジェルマン伯爵なんですもの。」
「だから、なんですか?ソレ。」
「うふふ。そのウチに分かる日が来るわよ。」
天下のサン・ジェルマンにも、この世に分からない事があるのが、雪子には愉快だった。
「まあ、そういう訳で、そのウチに、雪子さんの"照和の時間軸"にも、実験がてら、お邪魔しますから…その時はヨロシクお願いしますね。」(第21巻 参照)
「あら、それは楽しみね。待っているわよ。じゃあ、これで私とアナタだけは、お互いの時間軸を、双方向に行き来出来る事になったのね?」
「はい。めでたくも、そういう事になりました。」
「ところで、そのマシンの技術は…やっぱり秘密なのよね?」
「ええ、ソレが猫族との約束なので…まあ、でもコレ、雪子さんには、必要有りませんよね?」
「そうでもないわよ。私のチカラは、あくまでも、自分の同位体が居る並行世界に、魂を飛ばして、憑依させる事が出来るもの。"昭和の時間軸"だけは、雪村のチカラのおかげで、例外だけどね。」
「…とにかく、この技術は、極力秘密にします。アラハバキたちも、不便なポータルを使っているうちは、大規模なニンゲン世界への侵略も、出来ませんから。」
「そうね。それがイイわね。」
雪子も同意見だった。




