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第七話 祈り逆流・崩れる神界構造



 リツの術式が神界祈りへ食い込み、

 ルカダスの祈りが逆流し始めた瞬間。


 天の裂け目が――悲鳴をあげた。


 ミシ……ミシミシミシ……ッ!!


 まるで空間そのものが軋むような音。

 神界が“自壊”していく音だった。


「……な、何だこれは……!」

 ルカダスの顔から初めて余裕が完全に消えた。


「あなたの祈り構造が……歪んでるからですよ。」

 リツが静かに言う。


「“統祈”は、祈りを一つにまとめる構造……

 でもそれは同時に――

 すべての祈りを同じ“枠”に押し込む構造でもある。」


 ルカダスの瞳が揺れた。


「……黙れ。」



◆1 崩れていく“統祈神界”


 空の裂け目から、

 白黒のガラスのような破片が落ち始める。


 ユラは声を震わせた。


「祈りの……音が……ぐちゃぐちゃに……!

 世界の“声”が……割れていく……!」


 カガリが拳を握りしめる。


「神界が……落ちてきてるのかよ……!」


「落ちるんじゃない。」

 アスハが静かに呟いた。

「“崩壊してる”んだ。」


 風が暴れ、

 学院の地面にヒビが走る。


 ミオは胸を押さえ、苦しそうに息を吐く。


「ルカダスさんの祈り……

 苦しい……重い……冷たい……泣いてる……!」


 その言葉に、ルカダスの表情がわずかに揺れた。


「……泣いてなどいない。」


 しかし視線はわずかにミオから逸れていた。



◆2 ナナシの風が細る


 ナナシの身体の透明線が細り、

 風の光が弱まっていく。


「ナナシ、無理はしないで……!」

 リツが叫ぶ。


『大丈夫……。

  だって……あなたが繋いでくれた風だから……。』


「でもその身体はまだ不安定なんです!

 第3段階の負荷で……!」


『心配してくれるのね……

  リツ、優しい……。』


 ナナシが微笑むたび、

 その身体が風にほどけそうになる。


 ミオが焦って叫ぶ。


「ナナシさん……消えないで……!!」


『消えないわ。ミオ……あなたの祈りが……ここにあるから……。』



◆3 ルカダスの過去、アスハの出生


 ルカダスは崩れゆく神界の光の中で、

 アスハをじっと見つめた。


「お前は……私の“後継”として生まれた。」


「……知ってる。」

 アスハは静かに言う。


「統祈の血統は、祈りを“均一化”し、

  神界を永遠に安定させるための存在だった。

  個人の願いなぞ、弱さでしかない。」


「だから俺を――

 “祈り拒絶血統ゼロライン”として生んだんだろ。」


「そうだ。

  個の祈りを拒絶し、

  統一された世界を作るための“道具”としてな。」


 ミオが息を呑む。


「じゃあ……アスハくん……

 生まれたときから……祈れなかったの……?」


 アスハはミオの方を見ない。

 ただ、拳を強く握りしめた。


「祈りのない世界なら……苦しむ人はいないと、

 そう信じ込まされていた。」


 ルカダスが冷たい目で言う。


「それは正解だ。

  祈りは争いを生む。

  個々の願いは世界を歪める。

  統祈だけが世界を保つのだ。」


「それでも……!」

 アスハがルカダスを睨む。

「俺は……ミオの“祈り”に救われた。

 祈りは……誰かを繋ぐものだ。」


 ミオは目を潤ませる。


「アスハくん……」



◆4 ルカダスの捕食の祈り、発動


 ルカダスが両手を広げる。


「なら……見せてやろう。

  個の祈りの“終焉”を。」


 裂け目から、無数の黒白の祈り刃が降り注いだ。


「全員、回避!!」

 リツが叫ぶ。


 カガリが拳で弾き、

 ユラが祈りの音を曲げ、

 アスハがゼロラインで祈りを遮断する。


 だが――


「きゃっ!!」


 三本の刃がミオへ向かった。


「ミオ!!!!」

 アスハが身体を投げ出す。


 ――その瞬間、世界が“白”に染まった。


◆5 ミオの“空白領域”が広がる


 ミオの周囲の地面が真っ白に染まり、

 刃はすべて無効化された。


 ミオは立っていた。


 泣きながら、震えながら、

 それでもまっすぐルカダスを見据えて。


「もう……誰も傷つけないで……!」


 空白の風がミオの背から舞い上がる。


「これ以上……

 誰かの祈りを奪わないで……!!」


 ルカダスが眉をひそめる。


「その力は……制御できない……!

  世界を消すぞ!!」


「消さない……!」

 ミオの涙が光る。


「私の祈りは――

 壊すためじゃなくて、

 “守るため”にある!!」


 空白の領域が広がり、

 黒い刃をすべて溶かしていく。



◆6 リツ、ついに“代償”を払う


逆流術式が暴走し始めた。


「やばい……!」

 リツの身体がぐらつく。

「これ以上は……ボクの魂が……!」


 ナナシが叫ぶ。


『リツ!! もうやめて!!

  あなたの魂が砕けたら……私は……!!』


「大丈夫です……!」

 リツは笑いながら言う。


「この学院は……

 あなたが守った場所だから。

 ボクも……守りたいんです。」


 光がリツの胸を貫いた。

 

「リツさん!!!」

 カガリが悲鳴を上げる。


「リツさん!!」

 ユラが泣き叫ぶ。


「やめて……!」

 ミオも叫んだ。


 アスハだけが、愕然とした声で呟く。


「……馬鹿野郎……

 そこまでして……」



◆7 神界が崩れ落ちる


 ルカダスの神界がついに形を保てなくなり、

 裂け目は巨大な破砕音を立てて崩壊し始めた。


 ガラガラガラガラァァァァァッ!!!


学院の上空に、

 黒白の結晶が雨のように降る。


「やめろォォォ!!

  私の神界が……!!

  私の“統祈”が……!!」


 ルカダスの声が乱れた。

 その目には恐怖と焦燥が浮かんでいた。


「私の世界を……返せ……!

  私の“祈りの秩序”を……!!」



◆8 崩壊の中心で立つ“3人”


 泣きそうな顔でミオが立つ。

 青ざめた顔でリツが術式を維持する。

 ボロボロの風線を揺らしながらナナシが立つ。


 その三つの祈りが重なった瞬間。


 空気が震え、

 崩れゆく神界の光が均一に揺れた。


『リツ……ミオ……

  私は……あなたたちの祈りが……好きよ……。』


「ナナシさん……!」

 リツの声が震える。


「お願い……ナナシさんも……生きてて……!」

 ミオが泣きそうに叫んだ。



◆9 ルカダス、最後の叫び


 ルカダスが両手を天に伸ばし、

 崩れゆく神界に必死で繋がろうとした。


「やめろ……やめろ……!!

  私は……祈りを統べる存在……

  すべてが一つにならなければ……

  世界は……!!」


 しかし、その手は届かなかった。


 神界の光は消え、

 裂け目は完全に崩壊した。


 空は――

 重い沈黙の灰色に染まった。


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