表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/70

第五話 学院決戦・神々の衝突(クラッシュ)



 黒い祈りの波が迫る。

 世界の色が奪われるほどの圧力。

 ルカダスが本気を見せた証だった。


「祈りの自由は世界を壊す。

  だから私は再構築する。

  この学院から――。」


「させません……!」

 リツが前に立つ。


 ナナシがゆっくりと風を広げた。

 新しい身体は安定し、透明の風線が光のように揺れている。


『リツ、みんなを守るわ。

  あなたは回路の第2段階を準備して。』


「はい。」



◆1 ナナシ、新風形態の“初戦闘”


 黒い波に向かって、ナナシが踏み込んだ。


 足音は軽い。

 だが風の音が世界全体に響き渡る。


「……風の神がよみがえるか。」

 ルカダスが目を細める。


『よみがえるんじゃない。

  みんなの祈りが……私を“ここ”にしてくれたの。』


 ナナシが一瞬だけ消えた。


 そして――

 次の瞬間にはルカダスの背後にいた。


「な――」


 ルカダスが振り向くより先に、

 ナナシは掌を添える。


風紡ふうぼう――切調せつちょう。」


 風が“音”として爆ぜた。

 ルカダスの身体が後方に吹き飛び、地面に深い溝ができる。


 カガリの目が丸くなる。


「な、なんだ今の!? 音速超えてたぞ!!」


「違う。」

 リツが説明する。

「ナナシさんの風は“祈りの回路”に直接触れて動いている。

 風ではなく――意志が動いているんです。」


「意志の……風……」

 ユラがかすれた声で呟いた。



◆2 ヴァイルの反撃:記憶の嵐


 ヴァイルが空へ逃げ、

 ナナシに向けて無数の光矢を放つ。


「神の記憶を暴く――魂閃こんせん!!」


 空が閃光に染まる。

 ナナシは一瞬で風壁を形成したが、

 記憶の矢は風壁をすり抜けて迫る。


『……っ!!』


「ナナシさん!!」

 ミオが叫ぶ。


 矢が心へ触れようとした瞬間――

 リツが割って入り、手で矢を弾いた。


「あなたの記憶は、触らせませんよ。」

 リツの声は静かな怒りに満ちていた。


 ヴァイルは驚いて翼を広げる。


「なぜ記憶矢を弾ける!?

 人間の精神では――」


「あなたは間違えている。」

 リツが言う。

「人間の心は、脆いけれど――

 守りたいものがあれば、神より強くなれる。」



◆3 アスハの“祈り拒絶血統ゼロライン


「黙れ……」

 アスハが前に出る。


 その周囲の空気がゆっくりと変質した。

 風ではない。

 祈りでもない。

 “祈りを拒む空気”だった。


 ヴァイルが恐怖で羽ばたきを止める。


「お前……まさか……

 “ゼロライン”……!」


 リツが息を飲む。


「アスハくん……

 あなた、もしかして――」


「言うな。」

 アスハが遮る。

「俺は……神族の“反逆ライン”だ。

 祈りを否定するために生まれた血統。」


 ミオの手が震える。


「アスハくん……ずっと苦しかったの……?」


 アスハは目をそらす。


「関係ない。今は戦いだ。」



◆4 ミオの祈り、暴走の兆し


 ミオが胸を押さえて息を乱す。


「ミオちゃん!?」

 ユラが支える。


「……私の……中の“空白”が……

 すごく……動いてる……!」


 空気が揺れ、

 ミオの周囲だけ重力が歪むような感覚が走った。


「ダメだミオ!!

 その“空白”はまだ制御できない!!」

 アスハが駆け寄る。


「でも……」

 ミオは涙目でルカダスを見つめた。

「あの人が……

 みんなの祈りを壊そうとしてる……!」


 ルカダスは静かに微笑んだ。


「君の祈りの核……

  やはり美しい。」


 その一言で、

 ミオの“空白”が一気に膨れ上がった。


「ミオ!!!」

 ナナシが叫ぶ。



◆5 リツの第2段階:“共鳴祈路きょうめいいろ


 黒い祈りの波が一斉に襲い、

 学院が揺れる。


「リツ!! 対処しないと学院が持たない!!」

 ナナシが叫ぶ。


「任せてください。」

 リツは術式の中心へ走った。


「第2段階――

 共鳴祈路きょうめいいろ・展開。」


 術式が拡大し、

 学院全体が光の回路で覆われた。


「な、なんだこれ!? 足元が光って……!!」

 カガリが叫ぶ。


「私……祈りの声が……静かになっていく……」

 ユラが涙を拭う。


 アスハは息を呑む。


「……全員の祈りを一時的に“並列化パラレル”して……

 暴走を抑えているのか……。」


「そう。」

 リツが頷く。

「誰かの祈りが暴れたら、

 みんなの祈りで“均等化”する。」


「すげぇ……」

 カガリが口を開ける。

「これ……学院の全員を守ってるのか……!?」


「はい。」

 リツが微笑む。

「学院は……ボクの祈りの家ですから。」



◆6 ルカダス vs ナナシ(第二ラウンド)


 ルカダスが呪言を唱え、

 黒い祈りの刃を無数に生成する。


「世界は一つの祈りに統べられるべきだ。」


 ナナシは風を展開し、

 透明な羽衣を広げた。


『いいえ。

  世界は……たくさんの祈りがあって美しいの。』


 風と黒祈りの激突。

 地響き。

 空が割れるような衝撃。


「ナナシ!!」

 リツが支えるように術式を強化する。


 ナナシは振り向き微笑んだ。


『リツ、見てて。

  これが……

  あなたが“繋ぎ直してくれた風”よ。』


 風線が白光となり、

 ナナシの身体から無数の風刃が放たれた。


「風紡・散羽さんう。」


 ルカダスの黒刃を迎え撃つ。



◆7 戦局、逆転


 ルカダスの黒い祈りが削られ、

 学院全体が光に包まれた。


 ミオの“空白祈り”は

 第2段階の祈路と共鳴し、安定を取り戻す。


「……大丈夫……

 みんなの祈りが……支えてくれてる……!」

 ミオが息を吐く。


「そうだミオ。」

 アスハが微笑む。

「お前はもう一人じゃない。」


 ルカダスは初めて表情を歪めた。


「……なるほど。

  君たちの祈り……

  想像以上だ。」


 そして指を鳴らした。


「だが、これで終わりだと思うなよ。」


 黒雲が再び開く。


「次は――私の神界しんかいを呼ぶ。」


 学院の空が裂けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ