-1章1部 振り返れ、そして進め-
闇が深くなる頃、自分を振り返る。
いつからこんな陰気をまとうようになったのか。
それぞれの世界を作る年齢になるころ、私はインターネットに出会った。
同級生の勧めで初めて見たホラーゲームを実況する動画。
それは私に色を与えた。無色透明で何にも染まろうとする私に暗い色を与えた。
暗い、でも明るいそんな色だった。
これは私にとっては創生の救世主のようにも感じた。
人が書いた空想の世界にこもって、現実で見える世界をぼやかしてくれる麻痺薬に溺れる私は
麻痺薬の倉庫にこもっていた。
刺激を与えてくれるはずの本は、外の刺激を緩慢とさせる鎮静剤へと変わっていった。
いつか、こんな世界に。と本気で思っていた。
彼らが織りなす、素敵で救われる世界にいつか自分もいけるんだと。
それは叶わない。
お前はそこには行けず、ただ進めといわれる世界に戻される。
その世界に暗い明かりを見つけた瞬間だった。
そこからは波にのまれ、情報量の海原に流れ出した。
波は私を分解して、構築した。
一体何をして生きてきたのか。そこに気づいた私は自分の色をつくりだそうとした。
ただ色は存在した。すでに多くの色が出尽くした。希望と絶望を同時に味わい、私は色を強調できる方法を探した。
私は気づいていた、しょせん真似事しかできない私なのだと。
もう、出ているものをさも自分のものであるかのように掲げ、たしなめられ嘲笑される。
それを繰り返し、いつしか色の出し方がわからなくなった。
また無色に戻るのだろうか。いやだ。もう染まりたくない。
もう人の色で染まるのは嫌だ。
ささやかな抵抗を続け、私は暗い色を持っていた。
この暗さを明るみの中に出していた。
それが私なのだと、染まりたくないゆえに黒になろうとした。
違った。それは黒ではなかったのだと気づくのはもっと先だろう。
若干十数歳の私には、視野がなかった。
目の前にとらえた世界がすべてなのだと、それに突っ走ることが正しいと思っていた。
私は何をしていたのだろうか。
振り返ると案外、あさましい自分なのだなと笑えてくる。
でも今を作り出したのは私だ。紛れもなく自分で作ってきたといえるのだろう。
だからこそ、今の色を手放したくない。
大事な私の色は、いろんな光に瞬く点を持っていた。
夜空の中に見つけられる光のように。
決して作られたものではなく、確かに作ってきた光だった。
ほかの光に照らされた、紛れもない光。
私の黒が出来上がる前に、刺激を与えてくれた人、モノそれぞれが私の中で光っている。
余計なものと切り捨てようとした、光。
それを自分の中に内包し、黒を主張する私は何がしたいのか。
今でもわからない。
しかし確実に導いてくれている。
星が私をその場所へ導く。
なぁ星よ、私はどこまで行けるだろうか。
グラスに残る金に輝く液体を流し込み、冷えた風を全身に受ける。
もう、わからないな。