エピローグ
◇◇◇
なんてこともなく、俺たちの日常は続いていた。
夏希はまた陸上部に復帰した。
精神的にも安定してきたのか、タイムも好調らしい。
俺はといえば。
「お待たせー。秋斗」
俺は夏希の部活が終わるのを待っていた。
「いつも来てもらってごめんね」
「別に、学校の図書室で勉強してるから」
「そうなんだ」
「だから何の問題もない」
俺たちはいつも一緒に帰っている。
「ねぇ、秋斗、あれ覚えてる?」
歩みを進める中、夏希が笑みを浮かべ聞いてきた。
「何を?」
俺は‘あれ’が何のことを言っているのかわからない顔をした。
「私のやりたいことリストのこと!!最後の項目、ぐちゃぐちゃに黒くしたやつ!!」
夏希が忘れてたの?と顔を歪ませる。
「あー。あれか。結局何だったんだ?」
ようやく合点がいった俺は改めて聞く。
夏希がちょいちょいとしゃがむよう手を招く。
「それはね、秋斗と……だよ」
夏希が耳元で囁いた。
それを聞いて俺はしばらく歩みを止めた。
「あれ?秋斗?なにやってんの?置いていっちゃうよ!!」
横に俺がいないことに気づいた夏希が振り返り声をかける。
「あぁ、わるい、わるい」
俺の彼女は足も速いが、どうやら気も早いらしい。
また走れるようになったのはいいことだけど。
それでもまだゆっくりでいいのに。
でもその夢に向かって、ゆっくりだけど俺も走り出そう。
俺は先に前を歩いている夏希の元へ走っていった。
これからも彼女の隣にいられるように。
俺たちはまだ少し暑さが残る夏の夕日に包まれながら歩いて帰った。




