最終章
◇◇◇
7月31日。
いよいよこの日を迎えた。
夏希が言った世界が終わる日。
正直、俺は半信半疑だった。
昨日観た映画をまだ引きづっているのか、夏希に対する天邪鬼な思いなのか。
俺たちは電車に揺られていた。
向日葵公園という俺たちが住んでいる県にある向日葵畑の観光地へと向かう。
これだけは映画とは違う。
夏希の意思なのだろうか。
今日は俺たちは制服だった。
なぜ制服なのかというと。
これも夏希の案だった。
昨夜のメッセージのやり取りはこうだ。
夏希『明日は制服で集合ね?』
秋斗『なんでだ?』
夏希『もしかしたら今後は制服を着ることもなくなるかもしれないからね。あと思い出のため?』
秋斗『わかった』
夏希『よろしくという猫のスタンプ』
秋斗『了解という猫のスタンプ』
という訳だ。
制服姿に学校で使う鞄。
その姿だけ見ると校外学習みたいだった。
「そう言えば、なんでここに行きたいんだ?」
俺は隣に座る夏希に聞いた。
「恋人とここに来るのが夢だったから」
夏希がきっぱりと答えた。
段々と夏希はこうことを言うのが平気になってきたのかあっさりとしていた。
俺はまだ耐性がついておらず狼狽えていた。
「そうなんだな。そりゃ嬉しいな。楽しみだ」
揺られるこの1時間。
更に歩いて10分
目的の場所に着いた。
「おぉっ!!本当に向日葵畑だ」
そう表現するほかないというほど、一面に向日葵が咲いていた。
一面に溢れる向日葵を見て俺のテンションは上がっていた。
「どう?感動しない?」
夏希が誇らしげな顔でこちらを見ていた。
俺がこうなることがわかっていたのだろうか。
「これは、うん、するよ。感動なのかな。でも非日常な空間にいるみたいだ」
晴れ渡った空に、熱い日差しを浴びせる燦々とした太陽、一面の向日葵。
これほど夏というイメージが似合う場面があるだろうか。
その中には制服姿に麦わら帽子を被った夏希。
まさに映画のワンシーンのようだった。
「気に入ってくれたみたいで良かった」
夏希が微笑んだ。
「夏希、写真撮ってもいいかな?」
俺は思わず口に出していた。
「えっ、別にいいけど」
「それじゃあ」
俺はスマホを夏希に向けて構えた。
「夏希、ハイチーズ」
夏希はピースをして笑ってくれた。
「見せてよ。あとで送って。てか二人で撮ろうよ」
夏希が少し照れながら言った。
「わかった」
確かに俺たちが二人一緒に写真を撮るのは初めてかもしれない。
「それじゃあいくよー」
夏希が自撮り棒を持っていたので、画角を調整して撮る。
「ハイチーズ」
「これは、なかなかいい出来栄えじゃないの」
夏希が写真を俺に見せながら言った。
「いいね。これ。夏希の麦わら帽子姿本当に似合ってるなぁ」
まさに夏そのものが似合う印象だ。
それと向日葵が俺の中の夏希のイメージとなっている。
こんなこと本人には言えないけど。
「もう、秋斗ってほんとに私のこと好きだよねぇ」
「あぁ、好きだよ」
夏希は冗談で言ったのだろうが、俺あえてそれに本気で返答した。
「な、な、なんだよー。いきなり」
夏希が少し狼狽えていた。
「いや、本当に好きだから」
「もう、秋斗ってたまにそーゆうとこあるよね……」
夏希はボソボソっと呟いていた。
夏希の顔が赤くなっていた。
「ねぇ、秋斗、今日さ、本当に世界が終わると思う?」
「わからない。けど、俺は終わってほしくないな」
「なんで?」
「だって、この先も夏希とずっと一緒にいたいから」
俺の言葉を受けた夏希は、「嬉しい」と呟いて下を向いた。
それから、また口を開いた。
「私さ、初めは、秋斗のことは本気じゃなかった。
もちろん、恋愛感情はあった思うけど、まだよくわかってなかった。
でもこの1週間、毎日秋斗と過ごして、あぁ、私、本当にこの人のことが好きなんだって気づいた。だから、その……。私も秋斗が好き」
そう言って夏希は俺の胸に飛びついた。
そして、キスをした。
「ん……。これで本気って伝わったかな」
夏希は俯いていた。
「何言ってんだよ。そんなの、反則だろ……」
俺は夏希を抱きしめた。
「秋斗っ!?」
「夏希……。あのなぁ、お前なぁ、可愛いすぎるんだよ。そんなの好きにならない訳ないだろ。俺の方がお前のこと大好きなんだよ」
俺は今まで留めていた気持ちを爆発させた。
「もう、どうしちゃったの?」
「お前のせいだろ……」
もう一度俺たちは向かい合った。
「秋斗、耳まで真っ赤だよ」
夏希が微笑んだ。
背景の向日葵に負けないくらい俺にはキラキラと輝いて見えた。
夏日に照らされながら、俺たちは二人の思いを確かめ合った。
向日葵と太陽が向き合うように、俺と夏希も見つめあっていた。
こうして、俺たちの世界が幕を閉じた。




