第三章
◇◇◇
7月26日(土曜日)
夕方、俺たちは電車で夏祭りに向かっている。
俺たちの地元は人口密度が高いため祭りに行ってもいつも混雑してしまい、あまり楽しむ余裕がない。
なので少し距離がある場所へ行くのが狙いだ。
同日に開催している電車で1時間以内に行ける場所を探していたところ、人口もそれほど多くなく、小規模で開催される地区の夏祭りを見つけて、行くことにしたのだ。
俺は電車で隣に座る夏希に伝えた。
「浴衣似合ってるよ。向日葵の柄が夏希っぽくて可愛い」
「ありがとう。そんなに褒められるとは思わなかったからなんか嬉しい。本当に照れるね」
夏希は手をうちわの様に仰いでいた。
俺は夏希の浴衣姿を当たり前なのだが初めて見た。
水色の生地に黄色い向日葵の柄が入っており帯も向日葵の色に似合う配色になっていて、まさに夏希にピッタリと似合っていた。小麦色の肌がなお着物と夏希の可憐さを引き立てている。
花火大会が開催される地区に着いた。
目論見通り、人はそんなに多くない。
おかげで、人混みに紛れることもなく、ちょうどいい具合に屋台を楽しむことも出来そうで、この後花火も打ち上がるのだから、絶好の夏祭り日和だった。
「ねぇ、早くっ!!屋台見て回ろうよっ!!」
夏希は今日を物凄く楽しみにしていた。
電車の中でも屋台を全制覇すると意気込んでいた。
食べ物も全部食べる気なのだろうか。
少しそこが心配ではあった。
またもや杞憂に終わった。
夏希に驚かされるのはこれが2回目だな。
さすが運動部ともいうべきか食欲旺盛だった。
俺の3倍くらいは食べてた気がする。
そんなに食べても太らないのだろうか。
夏希に聞いてみたらこう返ってきた。
「私、いくら食べても太らないんだよねー」
現実にそんな奴が本当に存在することを俺は知った。
それからは金魚掬いや、輪投げ、射的など定番のゲーム性のある屋台も回った。
宣言通りほぼ全ての屋台を周り終わった。
素直に感心してしまった。
そうこうしているうちにまもなく打ち上げ花火が始まるアナウンスが入った。
「打ち上げ花火をお祭りの会場で見るのなんて久しぶりかも」
「そうなのか?」
「うん。今までは部活のことで頭がいっぱいだったから」
「じゃあ、今日は最高の思い出になるかもな」
「なるかもなって、なにそれ。もうなってるよー」
夏希が俺を見上げて、ニコッと微笑んだ。
瞬間、ヒューッ、ドカーンッという爆発音とともに煌びやかな大輪の花が夜空一面に咲き誇った。
赤、青、黄、緑、紫、色とりどりの花が並んで咲いている。
連続で新たな花が咲いては散るを繰り返している。
儚くて美しい、まるで命の連鎖のようだった。
最後に特大の大きな花火が打ち上げられた。
「見て、綺麗だよ」
「あぁっ」
俺は夏希の方を見た。
夏希も俺を見ていた。
夏希は笑っていた。
夜空の下で光の華に包まれた夏希の笑顔は今日見上げたどんな花たちよりも煌めいて見えた。
◇◇◇
7月27日(日曜日)
俺たちは、海に来ていた。
空は雲ひとつない快晴で、砂浜にはたくさんの人で溢れていた。
俺は海の家で借りたビーチパラソルを立てたり、シートを敷いたりと準備をしていた。
夏希はまだ着替えているみたいだ。
準備を終えて、待っていると着替えを終えた夏希がやってきた。
「秋斗、お待たせー」
夏希はイエローのオフショルダーワンピースの水着で登場した。
昨日の浴衣といい、やはり夏希には黄色が似合うなと思った。
まさに向日葵のイメージに近い。
「えへへっ、どうかな」
ワンピース部分をひらひらさせながら夏希が上目遣いで聞いてきた。
「凄く似合ってるし、凄く可愛い」
俺は首に手を当てながら呟いた。
「秋斗は何でも褒めてくれるね。
嬉しいよ」
「それじゃ、海に入ろうか」
俺は夏希に手を差し出した。
「ちょっと待って!!その前に」
夏希が何かを持って差し出してきた。
「日焼け止め、塗ってくれない?」
「お前、塗ってなかったのか?」
「うん。はじめから秋斗に塗ってもらうつもりだったから」
これは健全な高2男子にはかなりハードルが高い気がする。
日焼け止めはクリームではなくオイルだった。
でも夏希のお願いなのだから、やらない訳にはいかない。
「わかった。指示をくれ」
「よろしい」
なぜか夏希は上から目線な立ち回りで指示をしていた。
「ここでいいのか?」
「そうそう、次は背中をお願い。うんうん。ひゃんっ!!」
「変な声出すなよ」
「えへへ。こういうのも定番かなと思って。
何も感じてないから大丈夫だよー」
そういう問題じゃない気がするが……。
それに俺の方は別の問題が発生しそうだったが、なんとか塗り終えた。
「それじゃあ、海に入ろう」
今度は夏希が俺に手を差し出した。
俺たちは海に向かって走った。
「ひゃっ!!冷たい。海水ってこんなだったけ?」
夏希が驚いて、声をあげた。
「海に入るのも久しぶり?」
「うん。だから、慣れるまでよろしくね」
そう言っていた、夏希だったがすぐに海水に慣れた。
気づけば俺たちは沖まで泳いでいた。
「おぉ、こんな所まで泳いでいたとは。
自分の身体能力の高さに感服してるよ」
夏希が自慢げにドヤ顔をしていた。
落ち込んでた時よりも元気になっている様子が見れて良かったと思った。
一通り泳ぎきった俺たちは海の家で昼食を食べることにした。
「やっぱり海の家っていったら焼きそばだよねぇ。
なんでこんなに美味しく感じるのかなー」
「たくさん泳いだからエネルギーの消費が凄かったんだろうな」
「エネルギーか。あとは景色がいいからかもね。
お腹も心も満たされていく」
夏希が満足そうにお腹のあたりを撫でていた。
「もちろん食後のデザートもたべるけどね。
じゃーん、かき氷のブルーハワイ味。
これも定番だよね」
俺はかき氷のイチゴ味を頼んだ。
イチゴ味の方が定番な気がするが。
「ねぇ、見て」
夏希の方を見ると、ベーと舌を出していた。
「ふへっ。ふぁふぉふふぁふふぇふ」
どうやら青くなってると言ってるらしい。
小さな子どものような仕草なのに思わずときめいてしまった。
夏希の舌の表面は赤色ではなく青色に変色していた。
「かき氷のシロップってさ、色が違うだけで味は同じなんだって。だから、それちょーだい」
夏希が「あーん」と口を開けた。
かき氷を掬い上げ、夏希の口の中に入れる。
「あれっ?イチゴ味だ」
俺のかき氷を食べた夏希はおかしいねと笑っていた。
そして、また舌を出していた。
「ふぁふぃふぃふぉふぃふぁふふぇふ」
「紫色になってるぞ」
「私と秋斗のが混ざっちゃったね」
夏希が悪戯に言ってきた。
こいつは俺が照れるのをわかって言っているのか。
それとも何も考えずに言っているのか。
どっちにしても、俺の頬や耳がイチゴシロップよりも赤く染まるのは仕方のないことだった。
舌鼓を打った俺たちは、また海を楽しんだ。
時間を忘れて、ひたすらに海を満喫していた。
気づけば、日がもう落ちかけていた。
そろそろ帰らないといけない時間だ。
橙色の夕日が海面に映った、波打ち際には夏希が佇んでいた。
「夏希ー。そろそろ行かないと電車に乗り遅れる」
俺は夏希に呼びかけた。
「あーーーーーっ!!
忘れたくなーーーーーいっ!!!」
夏希が海に向かって叫んだ。
夏希が振り返った。
「なんかさ、こうゆうのって青春って感じしない?」
はにかんだ笑顔を浮かべた夏希は顔が少し赤くなっていた。
それは、日焼けのせいなのか、照れているのか。どっちなんだろう。
つられて俺も笑った。
「本当THE青春って思うよ」
「だよねー。あーまだ帰りたくないなぁ」
「気持ちはわかる。けど帰るぞ。明日も一緒に遊ぶんだからさ」
「そうだね。ねぇ、秋斗、また来年、一緒に来ようね」
久しぶりの海水浴を堪能した俺たちは海辺を後にした。
◇◇◇
7月28日(月曜日)
今日は遊園地に来ていた。
現在時刻は午後14時。
ここらでは割とメジャーな場所だ。
観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドなど定番の遊具に出店や土産屋がある、ありふれたレジャー施設の一つだ。
「まずは何をする?」
俺は入場時に受付で貰ったフロアマップを広げながら夏希に聞いた。
横から夏希が覗いてくる。
「そうだなー。秋斗は絶叫系アトラクションはいける方?」
「いけるよ。ここのは割と緩いものが多いからな」
「私も絶叫系ってあんまり乗らないけど、ここのは小さい頃からよく乗ってたんだよね」
「じゃあお互い乗りたいものに乗っていこうか」
「そうだね。行こう行こう」
夏希が手を絡めたので、俺たちは歩き出した。
「まずは軽いやつからだな」
小さな子ども向けのミニジェットコースターの列に俺たちは並んでいた。
やはり子づれの家族や小学生が多く並んでいる。
「小学生の時は大きく感じてたけど、今見るとなんかそうでもなく感じるね」
「俺たちが成長したからな。体感的に小さく感じるんだろうな」
「数年前までは、あんな小さかったのに子どもの成長って凄まじいねー」
「なんとなくわかるよ。でも俺たちも大人から見ればまだ子どもなんだろうな」
「いつか大人になっちゃうんだね。なんか自分が大人になってるイメージが沸かないや」
「気づいたらなってるものなんじゃないか?
そんな焦ることもないと思うぞ」
「秋斗って考え方が大人だねー」
夏希が揶揄うように笑った。
「うるせーよ」
「あっ、やっぱりまだ子どもだー」
そんなやり取りをしながら俺たちは列を待った。
「なんか懐かしいって感情が一番大きいかも」
ミニジェットコースターを乗り終えた夏希が言った。
「俺も久しぶりに乗ったけど、あっという間に感じたよ」
各々の感想を言い合う。
そんなことを繰り返しながら絶叫系アトラクションを俺たちは楽しんだ。
「次はこことかどう?」
そう夏希が指差したのはゴーストハウスと書かれた、ようはお化け屋敷だった。
「本当に大丈夫なのか?」
「平気だって。私ホラー得意だから」
そう言う夏希を俺は信じて、いざ突入した。
「きゃーーーー。ひゃーーーー」
そう叫ぶ、夏希が俺の腰に飛びついてくる。
「夏希、ホラー得意じゃなかったのか?」
「あれれ、おかしいな。得意なはずなんだけど」
「もしかして、都市伝説が好きなだけで、幽霊は苦手とかそういうことか?」
「確かに幽霊は苦手かも」
という衝撃的な事実が判明した。
ハウスを出るまで夏希が何度も叫んでいた。
むしろ絶叫系アトラクションより絶叫していた気がする。
「ようやく出れた。うぅ、こんな筈じゃなかったのにな」
夏希が落ち込んでいた。
「別に苦手なことがあってもいいだろ?
それに夏希が怖がる姿なんて新鮮で俺はいいと思ったけど」
「もうー、そういうことじゃなくてさ……。
まぁ、いいや。ありがとうっ!!」
夏希はなぜか頬を膨らませていた。
「やっぱりさ、遊園地に最後に乗るって言ったらあれだよね?」
夏希は大きくそびえ立つ巨大な観覧車を指差した。
「これはさ、子どもとか大人関係なく高く感じるよね」
「そうだろうな。俺も観覧車に乗るの久しぶりでちょっと楽しみかも」
「秋斗から楽しみなんていうなんて珍しいね」
「そうか。そんなことないと思うけど」
「そんなことあるの。ほら、行こう」
俺たちは空へと向かうカプセルに乗り込んだ。
俺と夏希は正面に向かい合った。
「凄いっ!!どんどん景色が遠くなっていく!!」
カプセルの位置が高くなるほどに夏希は気分が高くなっている。
今の俺たちの気分は観覧車と比例しているようだった。
「観覧車に乗ってるとさ、特別な気分にならない。
なんかついテンションが上がっちゃうよね」
俺と同じようなことを夏希も感じていたのだろうか。
「俺も今、テンション上がってるよ。
いつも見てる街がさ、ジオラマみたいに小さく見える。それだけでも不思議な体験だよなぁ」
「ふふっ。秋斗、本当にテンション上がってるね」
「うん。上がってる」
二人しかいない密閉された空間だからなのか。
お互いにテンションが高ぶってきたからなのか。
カプセルが頂点になった時、俺たちは、キスをしていた。
どちらからともなく、二人とも同じ気持ちだった。
夏希の熱が唇から唇へ伝わってきた。
「はぁっ……」
「ふぅっ……」
急激に体温が上がったから熱を冷まそうという生理現象なのかお互いに深呼吸をしていた。
「えへへ。キス……しちゃったね」
夏希が恥ずかしそうに言う。
「したな……」
俺も、多分真っ赤な顔になってた。
下に辿り着くまでカプセルの中は夏の暑い空気と俺たちの熱気で充満していた。
「さっきはその嫌じゃなかった?」
夏希が不安そうに聞いてきた。
「そんな、嫌な訳ないじゃん!!
むしろ、嬉しかったよ。
ごめん。ずっと黙ったままで、どうしたらいいかわかんなくてさ」
「へへっ。そっか。私も嬉しかったよ」
「あぁ、うん」
お互いに会話がぎこちない。
「今日はもう帰ろうか?」
夏希がそう提案してきた。
「そ、そうだな」
俺もその案に乗るしかないと思った。
「それじゃあ、ね。また明日」
「あぁっ。また明日」
お互い気恥ずかしいのか、今日はもう解散となった。
夜、夏希に連絡しようとしたが、何て言えばいいのかわからなかった。
結局連絡できずに0時を迎えた。
◇◇◇
7月29日。
今日は水族館に行く。
「よう」
先に改札前に来ていた夏希に俺は挨拶をする。
「んっ……」
昨日の出来事がまだ頭にこびりついていて、二人して少し気まずい空気が流れていた。
「あのさ、今日もよろしく」
なんだその挨拶はと心で自分にツッコむ。
「よろしく。
てか毎日会ってるけどね」
夏希も空気を変えようと明るく言ってくれた。
「俺、水族館行くの、中学いらいだよ」
「私も」
まだ少しぎこちないが、空気は悪くない。
そんなこんなで俺たちは水族館へ入場した。
「あっ、エイだ」
俺は隣の夏希にエイがいると話しかけた。
今いるコーナーはイワシやアジなどの魚類とエイが一緒の水槽で泳いでいる。
「エイって意外と動きが早いんだな」
「そうだね。あんなに色んな魚がいるのに食べちゃったり食べられちゃったりしないのかな?」
「確かに今までそんなこと気にしたことなかったな」
「どうなってるんだろうね」
俺も気になりスマホで調べた。
「スマホで調べたら、食べられてしまうことが多いらしい。なんで大量に泳いでいるものは常に補充されているかららしい」
「そうなんだ。なんかちょっと可哀想だね」
「確かに。まぁ食物連鎖ってやつなのかな」
「何それ。先生みたいだね」
「そうか?」
「そうだよ。理科の先生」
次はサメのエリアへ行く。
サメが俺たちの目の前に近づく。
「やっぱり、サメは迫力があるなぁ。こんな中で泳げる気何てしないよ」
「凄いね。サメってこんなに怖いだね。ぬいぐるみだとあんなに可愛いく思えちゃうのに」
「確かにな」
夏希の発言に思わず笑ってしまった。
次はタコやヒトデなどのおとなしい種類がいる水槽へ。
「ヒトデって裏側ああなってたのか。夏希は知ってたか?」
「ううん。知らなかった。ちょっとグロいね」
次はクラゲ類がいる水槽へ。
「へぇー。クラゲってこんなに種類があるんだ」
夏希が興味ありそうに言った。
「クラゲ好きなのか?」
「うん。好きかも。ほらクラゲってさ、なんか見てると落ち着かない?ずーっとプカプカって浮いててさ、そんで多分何も考えてない。クラゲって脳がないんだって。何も考えずに、海中を漂ってるの。羨ましいなって思う時があるんだよねぇ」
「クラゲについて詳しいじゃん」
「調べてたら覚えた」
本人が言った通り、夏希はクラゲを羨ましそうに眺めていた。
次は、イルカショーを見に行った。
「イルカと鯨って大きさの違いしかないんだって」
「そうなのか?」
初めて知った豆知識だな。
「さっきのクラゲもそうだけど、夏希って海の生物に詳しいのか?」
「詳しいっていうか、気になったことを調べただけだけどね。でも調べた甲斐があったね。秋斗がいつも驚いてくれるから」
夏希が微笑んだ。
いつもの夏希だと思った。
お土産屋では夏希がサメのぬいぐるみを見ていた。
「ほら、やっぱりぬいぐるみだとめっちゃ可愛いよね?」
「なんでなんだろうな」
俺たちは笑い合った。
俺たちはサメのぬいぐるみを買った。
最初こそぎこちなかったが、最終的には楽しいと思えた1日だった。
◇◇◇
7月30日。
今日は映画を見に行く。
「今日はどんな映画を見ようか?夏希は何か見たいものがあるのか?」
「あるよ」
夏希が言う。
「どんな映画?」
「これっ!!」
夏希が自身のスマホを手渡してきた。
そこに表示されていた内容を俺は見る。
もうすぐ地球が滅亡して終わってしまう。
残りはあと1週間。
そんな世界の中での高校生の主人公とヒロインを描いた物語か。
「これ、原作は小説で。私その小説が凄く好きで。実写映画化したのどうしても見たくて」
夏希が照れながら言う。
「いいじゃん。面白そうだね」
というかこの設定なんか既視感がある気がするな。
俺たちは飲み物とポップコーンを購入して劇場に入った。
「やっぱり、映画館で映画見る時ってポップコーンが食べたくなるよね」
隣の夏希は早速ポップコーンをつまんでいた。
味は塩味とキャラメル味のミックスだ。
これなら両方楽しめるという夏希が言った。
俺もつまんでみる。
「確かにこれはいい。しょっぱいのと甘いのを交互に食べたりできるから飽きない」
「でしょー」
夏希が得意げに笑っていた。
「この映画さ、どうしても秋斗と見たかったんだよね……」
夏希がそう呟くと館内は暗くなり、映画が始まった。
序盤、隣の席同士の主人公とヒロインは些細なきっかけで話すようになり、仲良くなる様子が描かれた。
しかし地球が滅亡する、それは噂ではなく、どの国でも、地球が滅亡すると報道されるようになり、各国で正式に月の最終日には地球は滅亡すると証言された。原因は隕石が降り注ぐためだ。
主人公たちは残された時間を綺麗な思い出にしようと計画をたて、共に過ごしていく。
海や花火や遊園地、色んな所へ行き遊んだ。
そして迎えた最終日。
最後まで二人は一緒にいた。
共に手を取り合ったまま世界が消滅した。
これは見方によっては悲しい話でもあるし、純愛を描いた話でもある。
俺はある意味ではハッピーエンドだと思った。
隣の席を見ると、夏希は泣いていた。
映画が終わり、館内に明かりが戻った。
皆んなが出ていく中に紛れて、俺たちも映画館を後にした。
「どこかお店にでも入ろうか?」
「うん」
俺たちはビルの中の喫茶店に入った。
「秋斗はさっきの映画どうだった?」
「本当に地球が滅亡するとは思わなかったな」
「そうだよね。見方によっては悲しい結末だよね。主人公やヒロイン以外の人たちも皆んな消えちゃったんだもんね」
「そうだよね」
「でも、主人公やヒロインの子から見れば幸せだったのかもね」
夏希が柔らかく微笑んでいた。
思わず、どうしてと聞いてしまった。
「だって、二人は最後まで一緒に過ごせたから。世界は消えちゃったけど、二人の思いは一緒のままだったんじゃないかなって。それってハッピーエンドだと思わない?」
夏希が自分と同じことを考えいたことに驚いた。
「同じことを思ってた」
「えっ!?」
「本当に驚いた。俺もハッピーエンドと思ってたから」
「そうなんだ。なんか凄いね。というか、秋斗も気づいてるんじゃないの?私がなんでこの映画を秋斗と見たかったのか」
夏希がこちらを試すように挑発的に笑った。
「これは、自惚れかもしれないからそこは最初に言っておく。俺たちの話すきっかけとか、告白のシーンとか、計画の流れとか偶然なのか、と思うほど似てた。そういうことだろ?」
「正解」
夏希は悪戯に微笑んだ。
「私は、あの時から運命かもと思ったんだよね。
私って意外とロマンティストだったんだって気づいたよ」
「ほんとビックリだよ。でも良かったよ。こうやって今、夏希と付き合っているんだからさ」
「そうだね。私も秋斗と付き合えて良かった」
また二人して頬を赤らめた。
「明日も楽しみだね」
夏希が蠱惑的に微笑んだ。
「いよいよ明日か」
俺は思わずそう呟いた。
俺たちの運命はどうなるのか。
このまま日常が続くのか。
それとも映画みたいに終わるのか。
わからない。
明日にならないとわからない。




