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鶴の恩返し

むかし、むかし。


おじいさんとおばあさんがいました。




ある日、おじいさんは罠にかかった鶴を助けてやりました。鶴は嬉しそうに飛んでいきました。


おじいさんがそこから去って、しばらくたって、猟師がやってきました。冬のこととて、獲物が何もとれませんでした。家にはお腹をすかせた妻と子が待っています。せめて、なにか罠にかかっていればと思いましたが、何もかかっていません。猟師はがっかりして家に帰りました。妻も子も猟師を責めたりはしませんでしたが、あきらかに失望していました。猟師の一家は薄い粥で糊口を凌ぐしかありませんでした。




一方、鶴を助けたおじいさんはおばあさんにそのことを離しました。おばあさんは言いました。


「それはよいことをなさいましたね」



その夜のことです。戸を叩くものがいます。


おじいさんが出てみると、美しい少女が立っていました。


「旅のものですが、吹雪いてきて、難渋しています。どうか一夜の宿をお願いします」


気の毒に思ったおじいさんとおばあさんは少女を家に入れて、囲炉裏に当たらせてやりました。


話を聞けば、両親に死に別れたので、親戚の家を尋ねる途中だといいます。吹雪は何日、たってもやまず、その間、少女はおじいさんとおばあさんの世話を甲斐甲斐しく世話をやいてくれました。


おじいさんとおばあさんには子供がいませんでしたので、親戚の家に行くよりも自分たちの子供にならないかと持ちかけてみたところ、少女も頷いてくれました。




吹雪が止んだ頃、少女は家にあった、機を認めました。布を織るので、糸を買ってほしいというのでした。おじいさんは町にいって、糸を買ってきました。


「私が布を織っている間、けっして、中を覗かないでくださいね」


そう言って、機のある部屋に入っていきました。あくる朝、少女はそれはそれは美しい布を織り上げました。その布は町で大層、高値で売れました。少女は、また、糸を買ってほしいといいました。おじいさんが糸を買ってくると、また、けっして覗かないでくださいと言って、部屋に入っていきました。そして、また、見事な布を織り上げたのです。そんなことが何回かありました。しかし、少女は日に日に窶れていったのです。おじいさんとおばあさんは心配になり、とうとう、少女が布を織っている姿を覗いてしまいました。そこには少女ではなく、一匹の鶴が糸に自分の羽を織り込んで一生懸命、布を織っていたのです。そのため、鶴の羽は無惨にも抜けてしまっていました。




おじいさんとおばあさんに気がついた鶴はいいました。


「私は、先日、助けていただいた鶴なのです。ずっとここの娘でいたかったけど、正体を知られてしまったからにはここにはいられません」


鶴は飛んでゆきました。




おじいさんとおばあさんに残ったのはせっかくできた娘を失った喪失感と最後に鶴が織り上げた布だけでした。




鶴はといえば、力尽きて死んでしまいました。


おわり


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