表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

金太郎

むかし、むかし、雷神がいました。


雷神は天帝の指示通り、雨を降らしたり、雷を落としたりしていました。さて、今日の仕事も終わったと帰ろうとしました。そのとき、雷神は雲に乗っていたのですが、ふと、下界をみると、川で女たちが洗濯をしているのがみえました。そのうちの一人が空を見上げました。雨模様が気になったようです。雷神の視界にその女が入ってきたとき、雷神は雷にうたれたような衝撃をうけました。それからというもの、雷神はその女のことばかり考えるようになりました。


女は木こりのむすめでしたが、あるお屋敷に奉公にきていたのでした。女は明るく働き者で、よく笑っていました。雷神はますます、女が好きになりました。




女は屋敷の若様と恋仲になりました。雷神はがっかりしましたが、女が幸せならと見守っていました。しかし、若様の両親は身分違いだとその恋を許しませんでした。女は親元に返されてしまいました。


木こりの父親のもとに帰った女は何日も何日も沈んでいました。女のその様子をみた雷神はせつなくなり、ある日、とうとう、下界に降りました。若様の姿になり、女の家にいくとこう言いました。


「私は家を捨てる。木こりにでも何にでもなる」


木こりは元々、二人の仲は反対でした。若様よりは釣り合った身分のものと一緒になる方が幸せだと考えていました。沈んだ女をみるのはつらかったのですが、いずれ、忘れるだろうと思っていました。だから、木こりは厳しく雷神に接し、木こりの仕事を教えました。ですが、雷神は頑張りました。これならと木こりは二人の仲を許してくれました。二人は幸せな夫婦になりました。女の幸せな姿をみて、安心したのか、木こりは、ふとした病がもとで亡くなりました。二人は木こりをねんごろに弔いました。




何年かが過ぎました。ある年、雨が一滴も降らず、草木は枯れ果て、作物が育ちませんでした。人々は困り果ててしまいました。


雷神の元へ友達の竜神と風神がやってきました。


「お前がいなくなってから、俺たちがなんとかやってきたが、もう限界だ。帰ってきてくれ」


雷神は迷いました。女との暮らしを失いたくない。ですが、人々の困窮も見捨てられない。


「あなた」


いつの間にか女がそばにきていました。


「どうか、この方達と一緒に行ってください。私はうすうす、あなたのことを疑っていました。お屋敷の若様は他の方を娶られているのに、、、では、私の夫は誰なのかと。でも、あなたを失うのが怖くて言い出せませんでした」


「お前はそれでいいのか」


「あなたがいなくなっても、私にはこの子がいます」


女は雷神の子を身ごもっていました。


「最後に、ひとつだけ、あなたの本当の姿を見せてください」


雷神は雷神の姿になりました。後ろ髪ひかれる思いで雷神は去っていきました。




雷神の子は金太郎と名付けられすくすく育ちました。熊にも負けない怪力の持ち主になりました。


源頼光が金太郎の噂をきいてやってきました。


「都では酒吞童子という悪い鬼が暴れて、人々を悩ませている。どうか、力を貸してほしい」


金太郎は母を一人残してゆくのが心配でした。その後ろを押したのは金太郎の母でした。


「あなたのお父様も人々のために、私のもとを去りました。そんなお父様を私は誇りに思っています」




金太郎は源頼光のもとで酒吞童子を倒すなど活躍をして、人々のためにつくしました。




暮らしに余裕のできた金太郎は母を引き取りました。気立てのよい嫁や孫に囲まれ、金太郎の母は幸せな老後をおくり、やがて、息をひきとりました。




「やっと、会えた」


雷神が迎えに来ました。


「私はもう若くありません。髪も白くなり、しわもふえました」


「それはお前のいきた証ではないか。その姿もきれいだ」


金太郎の母は雷神に導かれ、天にのぼってゆきました。




金太郎の子どものひとりが言いました。


「父様・・星が・・」


夜空に星が2つ寄り添うように並んでいます。


「母上はやっと父上に会えたのですね」


金太郎はつぶやきました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ