表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

舌切雀

むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがいました。




二人の間には子供がいませんでした。そのさみしさか、おじいさんは一匹の雀をたいそう可愛がっていました。そんなおじいさんをみるとおばあさんは子供を産めなかった自分が責められているようで悲しくなってしまうのでした。雀に何の罪もないとわかっていても、おばあさんは雀につらく当たるのでした。




おじいさんが家にいない、ある日、事件は起こりました。おばあさんはおじいさんにこざっぱりとした糊のきいた着物を着せようと糊を作っていたのですが、あろうことか、その糊を雀が食べてしまったのです。ご飯粒で糊を作っていたのです。この頃の米は大変、貴重なものでした。




腹をたてたおばあさんは雀の舌をはさみでちょん切ってしまいました。そのまま、雀は逃げてしまいましたが、家に帰ってきたおじいさんはことの顛末をきいて呆れました。


「なんと、むごいことを・・」




おじいさんは雀を探しに出かけました。




「おじいさん、私はここです」




雀に招かれて、おじいさんは、雀の宿で大変な歓待を受けました。普段は食べたことのないごちそう、雀のにぎやかな踊り。楽しんでいたおじいさんですが、ふと、自分の着ている着物をみました。糊のきいた着物です。いつも、貧しいながらも心を込めて作ってくれている食事、せまいながらも片付いた家。




そんなことを考えているとおじいさんはおばあさへの愛おしさがこみあげてくるのでした。




確かに舌を切るというのはやりすぎだ。だが、おばあさんはそのことを隠そうとしなかった。そういう女なのだ。しみじみ、おじいさんは思いました。




おじいさんが帰るというと雀がいいました。


「大きいつづらと小さいつづら、どちらか、おみやげに持って帰ってください」


「いや、わしは、なにもいらん。どうかおばあさんのやったことを許してやってほしい」


「わかりました。私もおばあさんのことを考えていませんでした。長年、お世話になったお礼にどうか、おばあさんにこのかんざしと着物を持って帰ってください」


「ありがとう」




おばあさんは雀にしたことを後悔していました。


「おじいさんは、もう帰ってこないかもしれない」


そう思っていたところにおじいさんは帰ってきました。


「ばあさんや、この着物とかんざしがを雀がくれた。お前によく似合う」


おじいさんはおばあさんの髪にかんざしをさそうとしました。


「そんな派手なもの、年寄の私には似合いません」


おばあさんはそっぽをむいてしまいました。




「そんなことはない。お前は今も昔もきれいだ」


おばあさんはそっぽをむいたままでしたが、うれしそうなのがわかりました。




そうだ。この女は若い頃からこういう女だった。




「これからも二人、仲良く暮らしていこうではないか」




おじいさんはおばあさんにかんざしをさしてやりました。




その後、おじいさんとおばあさんはいたわりあいながら、余生を楽しく幸せにくらしました。


おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ