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指名依頼

前回までのあらすじ


 異世界に勇者として召喚された鳳大樹はカミナリ親父に追われ、集団お見合いしていた兎に追われ、筋肉マッソーに追われていた。

 昨日は炊き出しの手伝いのはずが、ならず者の襲撃や桃プリンセスの救出など予定外のことがあって早めに寝床にはいったから今日は早くに目が覚めた。精神的な疲れが残っていて大樹も同じようだったのでいつものヤムゴ草採りだけで依頼は終わりにした。


 街に帰ってきてギルドにヤムゴ草の納品に行くと領都の警備部から俺たち宛てに賞金が送られてきた。何でも誘拐犯たちは盗賊でリーダーは賞金首だったらしい。あとその仲間は奴隷落ちとなり鉱山送りになったとか。そしてその中にはならず者二人も入っていたらしい。何でも撫子さんが以前絡まれた事から仲間だと判断されたとか。ちなみに衛兵さんがならず者の引き渡しであんなことを言っていた理由だが、冒険者は彼らに軽い差別みたいな態度を取られることが多いらしい。なのでああいう時に冒険者は手間が掛かろうとギルドを通す事が多いらしくそれを警戒してたみたいだ。そういうのは世界が違っても有るものなんだねぇ。いや、どこまで行っても人間だから当たり前か。


 盗賊たちの所持品は数点を除きギルドが買い取りその代金も受け取った。保留となった物については持ち主が判るかもということで先方が希望するなら俺たちで交渉できると教えられた。交渉を断りギルドに売ることもできるがその場合は他の物と同じく競売に掛けられるし先方もそれを知ってるためギルドに売るよりも高値で買い取って貰えるのが普通みたいだ。


 最後に盗賊たちに依頼した人物も判ったのでマーガレットさんから教えてもらった。


 その人物はとある商人で裏の筋から入手した禁制品(使ったらハイになるヤバいクスリ)を領内に持ち込んだという情報を領主が入手したため撫子さんの所の商会と協力して証拠を集めてたらしい。撫子さんが襲われたのは人質にして集めた証拠を隠滅しようとしたのだろうと騎士団は判断したみたいだ。


 憶測ばっかな気もするが捜査してる騎士団の関係者でもなければこんなものか。


 ちなみに件の商人は逃げ切れないと思ったのか事切れた状態で見つかったといっていた。なんとも後味の悪い結末だ。






 予定外の収入があったのでいい加減服装を調達しようということになって服の他に革鎧やポーズのための片手剣を中古で靴だけは新品で購入した。中古の靴だと前の持ち主が水虫かもしれないからな。


 あとはすることが無く宿屋に戻るか迷ったが今日はギルドで夕飯の気分になったのでもう一度訪れるとマーガレットさんから、ギルドマスターが呼んでいるのでパーティリーダーを部屋に案内しますと言われた。そういえば決めてなかったと思いながら大樹に押し付けようとしたら向こうも押し付けてきてジャンケンで決めることになりそれに負けたため俺がギルマスの部屋に来た。


 座るように促される。そういえば前の時には気づかなかったけどここの椅子ってソファーなんだよね。座り心地はあまり良くないけど。


 そこでドアがノックされマーガレットさんが戻って来た。


「マスター、疾風の翼のベント様をお連れしました」

「そうか。入ってくれ」


 マーガレットさんが連れてきたのは白を基調とし意匠の凝ったプレートアーマーに身を包み大盾を背負った男だった。疾風の翼はおそらくパーティ名でそこのリーダーなのだろう。


 彼はこっちを一瞥した後に机を挟んだ向かいのソファーに座った。俺には興味が無さそうだ。…変に有るよりは良いけど。


「お前たちを呼んだのは指名依頼が入ったからだ」

「領主から依頼が来たのか?」

「いや、依頼元は教会だ」


 ベントの疑問にゴリアスが答える。領主からと推測したのは態々(わざわざ)ゴリアスが直接話すことにしたからかな。教会からの依頼も同じ扱いってやっぱり教会の影響力は強いってことか。


「マスター、ちょっと良いですか? 指名依頼ってDランクからだって聞いたんですけど。俺たちはGですよ?」

「それは普通は依頼する人がいないってだけだ。別に禁止しとるわけじゃない」


 えぇ、そんなのありかぁ。規則を理由に断ることはできなさそうだ。


「依頼の内容は護衛で期間は10日間だ。報酬は各パーティに金貨2枚だ」


 期間が設けられている依頼の注意点は実質的な報酬は拘束期間で割ったものになるということだ。そこにさらにパーティへの報酬だった場合はパーティメンバーの人数で割ったものになる。金貨一枚は銀貨で換算すると100枚になるので俺たちの場合だと一人辺り一日で銀貨10枚の報酬ということだ。そこに一日の経費を引いた額が実質的な収入になる。


 ちなみに銀貨一枚で大銅貨一〇枚または(小)銅貨200枚になる。今泊まってる宿屋は朝晩のご飯付きで一泊につき大銅貨七枚だ。…もっと安い宿に変えるべきかも。


「護衛対象をどこまで運ぶんだ?」

「あー、さっきは依頼内容は護衛と言ったが厳密には違う。これは聖人の儀に参加する三人と各地を行脚するのが本来の依頼になる」


 ベントは何やら納得してたが俺には何を言ってるのかよくわからない。


「だがGランクのパーティも同行するのはよくわからないが…?」

「サトリたちについては先方の強い希望だ」

「だとしてもGランクと同じに扱われるのは気分が悪いな」

「別に同じものとして扱ってるわけじゃない。疾風の翼はDランク冒険者の中からギルドが一番信頼するパーティとして選出したからな」


 聞く感じだと俺たちの他にもう一組のパーティの選出をギルドに一任したってことかな? でもそれって教会としては一人前でそれなりに戦えればどのパーティでも良かったのでは?


 ギルマスのその言葉にベントはまんざらでもない様子なので言わないでおこう。俺は空気の読める日本人なのだ。ちなみにDランクは冒険者の界隈で一人前を指す。


「この指名依頼を受けるなら明日までに受付でその旨を伝えてくれ」


 ギルマスの用件はそれで終わりだった。


「俺たちは依頼を受けます」とベントが宣言して部屋を出ていった。自分は無言でギルマスの部屋を後にした。


 まだ確定ではないが既に教会に目を付けられているっぽい以上、依頼を受けても受けなくてもあまり変わらない。なら無難に依頼を熟して貰うもの貰ってこの街を離れた方が良さそうかな。






 受付の場所まで戻ると大樹はカウンターの側で意気消沈していた。マーガレットさんが苦笑いしていて理由を知ってそうだったので何があったのか訊ねた。


「えーっと実は他の冒険者の方をパーティに誘ったのですが断られたみたいで…」

「女性を誘ってフラれたわけですね」


 マーガレットさんの視線を追うとローブを着てトンガリ帽子を被ってる如何にも魔法使いって格好の女性がいた。うーんファンタジー。


「『Gランクの雑魚は消えな』って中指立てられた」


 まぁ、一般的にGランクは駆け出しの証だし俺たちがGランクなのは事実だからなぁ。そりゃ断られる。それよりもここに戻ってきてからずつと気になっているのは何かしらの道具だ。


「そんなことよりマーガレットさん、そこにある道具は何でしょう?」

「こちらは潜在的な魔力量を計測する魔導具でこれに触れると潜在魔力に比例して強く光る物です」


 おいおい大樹のやつ俺が居ない間に勝手に異世界の定番イベントを消化するんじゃないよ。


「我が友の結果はどうだったんですか?」

「可もなく不可もなく平均的なものでした」


 …こいつの勇者の称号ってホント仕事しないよな。もうニートじゃん。ネット小説に出てくる主人公(ゆうしゃ)なら昼間でも目を瞑ってしまうほどの眩い光を放つ場面だぞ。


「なるほど。つまりフラれた女性に振り向いてもらおうと潜在能力をアピールしようとして失敗したということか」


 図星を突かれ精神的ダメージを受ける大樹。マーガレットさんはフォローできずに苦笑していた。死体蹴りはマナー違反なのでこの辺にしとくか。


 この機会を逃すわけもなく当然自分も定番イベントを熟すつもりなのでマーガレットさんに許可を貰う。


 しかしこれはあれだな。勇者があの体たらくというきとは俺が巻き込まれ系主人公枠ってことか。いや~参ったなぁそういうのは望んでないんだけどなぁ。でも見せつけちゃうんだろうなぁ目立ってしまうんだろうなぁ隠し切れないんだろうなぁ。まったく参っちゃうぜ。


 俺は石に手のひらを当てる。


「【バ◯ス】」

「えーと、そちらの大樹さんと同じくらいですね」


 やっぱり俺はモブだった。そして大樹の称号勇者はただのニートだった。仕事しろ。


 どうやら俺では某大佐に撃ち殺される程度の人間でしかなかったらしい。きっとその後で大佐の脱出RTAが始まるのだろう。…ちょっと見てみたいかも。


「ところで大樹さんも言っていたバル◯というのは一体…?」

「俺たちの故郷では魔力量を計るときにはああ言うのが様式美なんです!」


 日本人の9割以上が知っているであろうかの名作映画を見たことがある人ならば石を光らせる時に絶対に言う呪文である。なので様式美と言っても過言ではない。この異世界で実際にそんな状況になったら脱出の準備万端で大樹に滅びの呪文言わせよう。


 いつ復活するかわからないので近くに座ってからギルマスの話をしてしまう。後で聞いてないと言ってきても大樹の自己責任だ。


 大体説明が終わった頃に件の魔法使いの女性の所に弓を装備した女性とロングソードを装備した女性が合流した。女性三人のパーティなのだろう。眼福である。それを眺めていたら一人の男が近づいていく。さっき知ったD級冒険者でどこぞのパーティリーダーのベントだ。


 ナンパか? 大樹みたく玉砕しろ、と思っていたら女性の一人がベントに抱きついた。


「マーガレットさん、あの四人は…?」

「彼らは四人パーティの疾風の翼ですね。サトリさんたちと同じ指名依頼を受けたパーティです」


 それを聞いた大樹が無言で立ち上がる。


「友よ。その依頼は受けるんだよな?」

「もちろんだ我が友よ。というわけで今回のような依頼のときにはどんな準備が必要なのか教えてくださいマーガレットさん!」

「いきなりやる気になりましたね…?」


 奴には真理を教えてやらなきゃならない…そう、『モテない男はモテる男をひがむもの』だという真理をな!! あれ何か涙が出てきた。

次回予告


 教会からの指名依頼でシスターたちと一緒に不浄なモンスターを浄化する10日間の旅に動向する主人公たち。


 しかし低級霊に憑つかれおぞましいことになった大樹を友として殺してでも止めようと決意する覚理。そんな彼に初めての称号が! 待て次回!!

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