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30 かけごえ(ダメージ判定有り)

 ならず者たちを引き渡した後は少しの時間質問されて解放された。犯人たちの仲間だと冤罪をかけられないか心配したが杞憂だった。話を訊かれてた最中に撫子さんの父親らしき人も来て別の衛兵と話していた。とはいえ殆ど関係の無い俺たちに詳細な説明があるはずもなくスラム街のどこかに囚われてる可能性があると聞こえてきたが、Gランクだからか助けを求められることも無かったのでその場を後にした。


「それじゃあもう一儲けに行きますか」

「いや、その言い方はどうなの?」


 確かに言い方が悪いけどまた拳で語ることになるだろうから地球に帰るために仕方ないって自分に言い聞かせて心を奮い立たせているんだよ。本来俺は平和主義者なのよ? 


「それで場所はどこなんだ? 対面した時にシールドを付けたから言い出したんだろうし」

「あー、それなんだが途中で壊れたっぽいから正確な位置は把握できてないんだよね」

「じゃあどうやって探すんだ? シールドの位置情報が無ければ探しようが無いだろ。スラム街は広いぞ」

「いやそもそも街の中に居ないっぽいんだよね。最後の反応が明らかに外だったし」

「それじゃあ余計に探しようがないんじゃないか?」

「進行方向は予想が着いてる。それに我が友のストレージを合わせればおそらく見つけられると思う。ただその前にやる事があるけどな」


 大樹のストレージでの探知にはいくつかの制限がある。一つ目は生物に関してだ。


 ストレージ自体には動物以上の生物は生きていたら収納はできない事が検証でわかった(植物なら摘まずとも収納できるというよく解らない基準があるが)。そのため展開したストレージの範囲内に生物がいると『収納できない物がある』と感覚で理解できるらしい。しかしその生物が人なのか動物なのか、それとも他の何かは判別できないらしい。ただ大雑把になら大きさはわかるらしいが。


 二つ目は探知ではっきり分かるのはストレージに収納したことのある物だけだということだ。なので収納したことのないものが展開したストレージの範囲内に在っても知ることは叶わない。ただストレージの展開範囲が出鱈目に広いので取り敢えず収納してそれが何か知ってから戻すという荒業は可能だが、どんなリスクがあるか予想できないので余程切羽が詰まった状況にならない限りは使うなと大樹には言い含めている。


 ちなみに一角兎を仕留めて収納したことがあるがストレージで探知はできないみたいだ(大きさから予想はできる)。


 さてこれから大樹にやってもらうのは一度でいいからストレージに馬車を収納することだ。何故そんなことが必要なのかといえば撫子さんをさらった奴らが所持している可能性が高いからだ。


 大樹が衛兵に説明してたのを聞いたが連れ去られたときの撫子さんは意識がなく抵抗していなかったということだが、そんな女性を門の外に運ぶなら足が必要だ。検閲なんかは買収でもして通ったのだろうが、ただ大きな袋に入れただけだと悪目立ちするので避けるはずだ。それにシールドを付けてたときに感じた移動速度が歩きよりも早かった気がする。なので足として馬車を使ったと推測した。


 ただ馬車といっても荷物を運ぶための荷馬車や椅子や日除けが付いてるもの、あとは完全に雨風が防げる屋形の物もある。しかし収納するのはどれか一種類で良いと考えている。


 仮に大樹に馬車についての詳細な知識が有り、ストレージに収納してるなら頭に浮かぶリストにはその知識が反映されるだろう。しかし今の大樹には馬車に関する細かい知識がなく収納していても頭のリストには馬車としかでないだろう(シルエット的なイメージくらいは分かるかもしれないが)。


 なので大樹が『馬車』と認識するものなら違いがあっても探知にヒットするだろうと予想した。まぁ念のため使われたと思う荷馬車を収納してもらうつもりたが。


 馬車を取り扱ってる店を見つけると中古なのか店の外の隅に一台の馬車が見えた。幌やそれを取り付けるための骨組みが無いと馬車ではなくただの荷車と認識してしまうかもしれないので最低限骨組みが有れば良いと思ってたが丁度良いのがあった。人気も無く荷台にも生物の反応がないとのことだったので手早く収納してまた元の位置に戻してもらう。そして二人で街から出た。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 撫子さんを拐った奴らのアジトはあっさりと見つかった。覚理さとりの推測通りアジトの近くに馬車が止めてあったのでストレージによる探知ですぐに発見できた。


 場所は洞窟どうくつ(というよりは洞穴ほらあな?)で入り口に二人の見張り役が居た。ああいう所に居ると誘拐犯というよりは盗賊っぽいなぁ、と思いながらストレージを使って大まかに内部の構造を調べる。中は途中で道が三つに分かれていて左右と奥に続く道があった。左側と奥の行き止まりに複数の生き物の反応が有り盗賊(仮)と人質で分かれているというのが覚理の予想だ。


「人質の方も複数だから監視役がいるのか?」

「もしくは道行く女性でも拐ったんだろ。盗賊あるあるだ」


 盗賊の対応は覚理がすると言い出し、そのためにやって欲しいことがあるといくつか指示を出された。そして俺は右側にあるだろう物資の確保と撫子さんと他に居ればその女性の保護だ。


 それぞれの役割を決めたのであと考える事は一つ。


「あの二人の見張りはどうやって無力化しようか」

「俺に考えがある。『我に秘策有り』ってやつだ。我が友には今から俺がやることを真似して欲しい」


 何をやらされるのかと思えばそれは某狩りゲーの三拍子の『アクション』で、グーにした左手を最初の二拍子で胸の高さでリズムを刻んで溜めて、三拍子目で掛け声と共に上に向かって突き上げるといったものだった。


 ろくでもない事を考えていそうだったがそんなんで無力化できるというなら従うことにする。そして覚理は俺と二人の見張りを視界に入る場所に移動した。そのため俺は見張りに背を向ける位置取りになった。


「それじゃあ始めてくれ。あ、左手は思いっきり上げてくれな」


 合図が出たのでアクションを開始する。


「ん・ん・はっ」(ガンッ)


 突き上げた左手にぶつかったのは何だろう? とそちらに視線をやると立方体のシールドが縦に()()並んでいた。小刻みに揺れているので固定シールドではない。『何を基点に?』と飛び出していった覚理に目を向けると、さらにその先にいた()()の見張り役が内股で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 …悪魔かよ。


 左手が汚れた気がしたのでストレージから水を出して手を洗ってから覚理に合流する。色々と言ってやりたい事はあったが作戦行動中なので見張り二人の身ぐるみを剥いで拘束し無力化する。そして駆け足で奥に進み覚理が盗賊たちと対峙したら頼まれてたことと余計なことをした後にストレージから岩を出して唯一の出入り口を塞ぐ。人の出入りはできないが隙間はあるから窒息はしないだろう。


 ストレージからランプを取り出して火を付ける。着火のみ魔力式で少し高かったんだよなぁと思い出しながら道を戻り十字路の右の道に進む。覚理の予想ではこっちに物資が有るらしくストレージによる探知でも何か引っ掛かった。そして実際に右側の突き当たりには色々と置かれていた。ただ一つ一つ見ていくのも面倒なのでストレージに収納して来た道を戻り今度は撫子さんが居るであろう左の道に進む。見張り役が居ないか警戒しながら進んだがそれは杞憂に終わった。


 左の道の行き当たりには撫子さんの他に三人の女性が居た。取り敢えず撫子さんに近づく。


「助けに来た」


 正体がバレないように声色を低くしながら言う。そして彼女を拘束する手枷てかせ猿轡さるぐつわを外していった。


 彼女たちを連れて洞窟から出ると馬車で待機してもらって洞窟に戻って奥に進んでいき、唯一の出入り口を塞いでた岩を収納する。


 中ではパンツ一丁の覚理が同じくパンツ一丁の盗賊(仮)を素手で文字通りぶっ飛ばしていた。


 覚理は今、ファンタジー拳法の一種である硬気功もどきを使っている。これは一度『スキル:魔力操作』で体外に出した魔力を再び体内に取り込むことで肉体を強化する技術で、ギルマスの剛体の劣化版だ。効果としては半端な打撃攻撃は効かないといったものだ。そのため発勁もどきよりも殺傷能力が低く安全に敵を無力化できる。ただ刃物を防げるかは試してない。そのため服も収納して武器を隠し持ってないのが見てわかるようにしたわけだ。


 覚理の服も収納したのは見張り役の股間へ攻撃させられたことへの意趣返しだ。しかしそれが中々の地獄絵図を生んでしまってる。


 最後の一人をぶっ飛ばした所で声をかける。


「女性の保護は終わったぞ」

「こっちも丁度終わった所だ。てか俺の服まで持って行くなよ。何が悲しくておっさんたちと上半身裸でやり合わにゃならねぇんだよ。腐得にすらなってねーよ」


 覚理に服を返してから転がってる犯人たちをロープで拘束していく。そして繋げたあとに浮かせて洞窟から出ると覚理が荷馬車の上にシールドで作った箱に犯人たちを入れていく。犯人たちは全員で9人いてそのままだと馬車の車輪に大きな負荷がかかりそうだったので、放り込んだ高さの部分は街に着くまでは無重力は継続だ。犯人の詰め込み作業を撫子さんが何とも言えない顔をしていたがスルーした。


 馬車の操作なんて俺も覚理もできないので馬を誘導しながら歩くかという話しになりかけたが「できるから私がやるわ」と撫子さんが馭者ぎょしゃに名乗り出たのでお願いすることにした。なので荷台に行こうとしたが念のため道案内をしてと撫子さんに引き留められて馭者席に座ることになった。覚理は箱形のシールドに蓋をしてその上に座っていた。


 道中はトラブルはなく街が見えてきた。日が落ちきる前に戻れたのは幸いだ。


「なんとか戻って来れたな」

「助けていただいてありがとうございました。なので以前胸を触ったことは水に流してあげますわ」


 …バレてた。でもお姫様じゃなかったし、以降トラブルになることを気にしなくて良くなったから悪くないか?


「それはそれとして俺の分の礼は期待してます~」


 上から覚理が会話に割って入ってくる。ちゃっかりしてるなと思ったら隣から舌打ちが聞こえてきた。…もしかしてお礼をケチろうとしてのかこの人。


 こんな世界だし商人の娘ということもあって抜け目のない性格になったのだろう。でもよくよく考えてみれば命を助けたようなものだから、それと相殺ってことは『命の値段=乳の値段』という等式が成り立つわけで。…乳の値段が高いなおい。


 でも量と価値が比例するのは資本主義としては正しい気もするな。だから俺は許そう。巨乳だしな!






 街に着くと犯人たちを衛兵に引き渡し本日二度目の事情聴取をされた。タイミング的に犯人の一味で仲間割れをしたのでは、と疑われたが覚理からその予想は聞いていてどうやって見つけたか聞かれても『俺たちにはそれができるってだけだ』と答えとけと言われてたのでそう返しといた。事情聴取というより取り調べだな。


 それでも撫子さんの親父さんがめっちゃ感謝してたからか特に冤罪を着せられることもなく解放された。チンピラ二人は誘拐には無関係だと主張してるそうでそれについても訊かれたが『知らない』とだけ答えておいた。数日前のトラブルに関しても訊かれ認めたが誘拐犯たちとの接点については本当に知らないからな。


 解放後に冒険者ギルドで盗賊(仮)の所有物についてマーガレットさんに訊ねたら俺たちが貰って良いとのことだった。貨幣以外はギルドが買い取ることもできるとのことだったのでお願いした。


 こうしてこの一件は一応解決した。称号に『配管工のひげ親父』とか表れてたら嬉しいんだけどやっぱ無いか。

 以前後書きでお知らせしたように毎日投稿は一旦終わりにします。体調が良くなればまた書き始めるつもりですが再開日は未定です。

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