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18 二回目の依頼

「なぁ我が友よ。小さい頃お前の家でテレビを観てたときに流れたCMに出て来た兎を見た杏が可愛い可愛いって言ってたが、昔も今も杏の方が可愛いと思うんだ」

「友よ。さてはお前、現実逃避してるな? 今この状況から!」


 俺たちは今只管(ひたすら)走っていた。理由はモンスターに追われているからだ。


 追って来てるのは10センチくらいの角を額に生やした兎で名前はその見た目通り一角兎いっかくうさぎだ。


 異世界の定番とも言えるモンスターから必死に逃げているのは殺さない覚悟をしているから───ではない。細かい線引きはまだしてないがその対象は人間になる。なので兎は対象外だ。


 サイズは小学校の生き物係が世話をするのと同じくらいでバカデカイわけではないし、足の速さも離し切れないものの目にも止まらないといったような理不尽なものではない。強さは新人冒険者であっても正面から戦えば楽勝だと先輩たちが言ってた気がする。じゃあなんで逃げてるのかって? 某中将のこんな名言がある。


 【戦いは数だよアニキ!】と。


 そう俺たちは今、数えるのが面倒なくらいの一角兎に追われていた。振り向く必要がないくらい音の気配でそこに居るのがわかるほどの数。ご注文は1羽だけだったのにどうしてこんな事になっちゃったかなぁ。






 異世界に転移した一日目の夜はギルドで一夜を明かすことになった。精神的な疲れが大きかったように思う。


 一度ギルドの建物から出て路地に入りシールドで作った桶にアイテムボックスから水を出して顔を洗い中に戻ってみればギルマスの怒号が飛んでいた。ギルド内で一夜を明かすのは本来は駄目らしい。俺たちが冒険者になったお祝いだって言ってたからギルドのスタッフは黙認してくれたのかもしれない。


 太陽的な恒星の位置から日が昇ってからまだそんなに時間は経ってないように思えるが街は人が行き交っていた。日が昇ると同時に活動を始め日が落ちたら仕事を終える、そんな生活習慣なのだろう。ギルドでは気にならなかったがこの世界の文明レベルでの灯りは蝋燭が普通なのかもな。


 先輩冒険者たちの行動はまちまちだった。


 ギルドから出ていく者、依頼書の貼ってある掲示板の前でこれから受ける依頼を吟味している者と様々だ。


 俺たちは今日も常設依頼を熟すことにした。理由としてはまだスキルで試したいことがあるから自由なやつが都合が良いのだ。金銭的にも英雄さんのお陰で少し余裕ができたしな。


 購買で売ってた軽食を二人分買ってから依頼書に記されていた生息地を覚えて武器屋の場所を受付嬢に聞いてその建物を探す。解体用のナイフを購入するためだ。


 その用事が済むと門へ向かう。ただし昨日街に入るために通った門とは別の門に向かっている。


 受付嬢のマーガレットさんに待つのがだるかったと愚痴ったところ、俺たちが使った門はどうやら商業区にある門で多くの商人が利用する所だったらしい。ギルドの建物がある付近は宿泊施設や街の住人の居住が多い地区になるのでその近くの門は商業区ほど待ち時間はないと聞きそちらから出入りすることにした。


 門番に一角兎の生息地と記されていた森の位置を聞いてそこに向かった。


「それで友よ。さっきから森を彷徨うろついているがこれは何目的なんだ?」

「モンスターを探してるんだよ。まずは異世界モンスターの定番である『スライム』をな。スキルで試したいことがあって、もしかしたら仲間にできるかもなーって」


 昨日のバカ騒ぎのときに先輩が話していたので存在してるはすだ。


「仲間にすんの? でもスライムってモンスターの中じゃ最弱なんじゃないのか?」

「作品によるかな。ネット小説だけじゃなくてゲームやカードゲームでは強いモンスターだったりするしな」

「スライムが強いって想像できんな」

「そうか? よく考えてみろ。不定形の生物で身体がほぼ液体で構成されてるんだぞ。それが頭に落ちてきて鼻や口に入ったらどうなる?」


 うげぇ、とその様子を想像した大樹の顔が歪む。


「ネット小説でも強かったり便利だったりするから一度は仲間にできないか試したいんだよね」

「でもテイムのスキルや魔法って持ってないよな? どうやって仲間にすんの?」

「それは見つけてから話すよ」


 見つけないと実験のしようがないからな。

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