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13 冒険者の証明書

 あの後ゴリアスに試験の終了を告げられてギルドマスターの部屋に通された。


 ギルマスのゴリアスと受付嬢のマーガレットがそれぞれ自己紹介をし俺たちも自己紹介を返してから本題に入った。蛇足だが省略して『ゴリマス』と心の中で呼称しようかと思ったがやめた。スキンヘッドの筋肉ダルマがフリルの衣装で歌って踊るという世にも恐ろしい場面を想像してしまったからだ。


「試験の結果だがもちろん二人とも合格だ。色々と思う所はあるがそれも依頼をこなし経験を積めば解消されるだろう。最近の新人の中では十分に実力の有る方だ。試験も久しぶりだから少々やり過ぎてしまったよ」


 がははっ、と笑うギルマスにマーガレットさんは目を細めて苦言を呈する。


「笑い事じゃありません。それにやり過ぎるのは久しぶりだからでは無いでしょう。毎回やり過ぎるから噂になって試験を受ける新人がいないんです!」


 受付嬢はギルマスに苦労させられているようだ。あと評価が高いのは普通に嬉しい。


「というわけでお前たちのランクはEからの始めることとする」

「E? G級じゃないの?」

「ん? なんだ説明してなかったのか?」


 ギルマスがナズナさんに向きながら確認を取る。マーガレットさんは頭に???を浮かべていた。


「はい。試験を受けたいと申されたので、てっきりご存知なのかと…」


 おや? 何か認識にくい違いがあったようだ。まぁ俺たちの知識はフィクションのものだからこういうこともあるか。今後はズレが無いようにしないとな。


「では今更ですが試験について説明させていただきます。まず冒険者への登録は登録料を支払えば何方どなたにもできます。冒険者は常に人手不足で魔物の脅威は無くならないですから」


 冒険者になるのに試験は必要無かったパターンの方だったか。じゃあなんで試験があるんだ?


「冒険者ギルドは常に人手不足と言いましたが、それ故に即戦力を必要としています。なので腕に自身のある人は登録時に試験を受けれるようになってます。そこで実力が認められたら本来Gランクで始める所を跳ばしてFランクやEランクから始めることができます。あと登録料も免除されます。登録料は登録時の手続きと発行される証明書の代金になりますが駆け出しの新人さんには負担は少ないほうが良いですからね」


 なるほど。そのための試験か。あと登録料の免除は素直に有難い。特に俺たちには。


「ま、そういうことだ。お前たちは俺が認めたからEランクから始めることになる」


 そういうことだったのか。


「だからEランクでのスタートなんですね」

「ギルドと新人の両方に利の有る良い考えだろう?」

「そうですね。でも俺たちは通常のランクからで大丈夫ですよ」


 俺の発言にギルマスが怪訝な顔になり、マーガレットさんはまたも頭に???を浮かべている。


「あ、えーと? つまりEランクではなくGランクから始めたいってことか?」

「ランクが高ければそれだけ報酬の高い依頼を受けることができて実入りも良いですよ。それでも良いんですか?」

「【わたしは一向にかまわんッッ】」


 隣で大樹が叫ぶように力強く肯定した。む? かさず名言をぶっ込むのはさすがだ。しかし我が友よ。その言葉はファンタジー拳法を使う俺の方が相応しくないか? まあいい。


「そういうわけですから俺らはGからが良いです。あ、でも登録料の免除はお願いします」


 ならず者から勝ち取った(断言)お金しかないからな。出費は少しでも抑えたい。


「…わかった。お前たちがそう望むならそのようにしよう」

「こうして新人ながらG級ハンターに抜擢された俺たちの伝説が始まるのだった」

「ハンターじゃなくて冒険者だぞ」


 そんなツッコミは要らないですギルマス。


 真面目な話、俺が勝てたのはギルマスが人間だから、いや人型だったのが大きいと思っている。


 地球には熊などの危険な動物はいても魔物なんて存在しなかったし、俺たちの住んでる地域には大型動物は目撃情報すらなかった。だから中二病の特訓は対人戦に特化していた。


 だが冒険者の戦う相手は魔物だ。小動物すら殺したことのない俺たちには荷が重すぎる。ランクだけ高くしてもらって一番ランクの低い依頼を受ければ良いとも考えたが、ルールやマナーでそれができない懸念があった。


 なのでステップアップは一番下からの方が生存率を高くすると判断した。一日でも早く帰りたいけど基本的には命が優先だ。


 こうして俺たちは冒険者になった。






 こんな状況でも俺たちがたまに巫山戯ふざけるのは心が折れないようにだ。少し現実逃避も入ってる。


 真面目に考えて全て受け入れたら俺はたぶん元の世界に戻ることを諦めてしまうと思ってる。おそらく大樹も同じだろう。


 エルフが存在しなかったら? エルフが存在しても旅は続けられるのか? 会えても敵対的だったら? 受け入れられても帰還の方法を知らなかったら? そもそも旅に出られるくらいお金を貯められるのか? それにはどれだけの日にちがかかるのか、と不安ばかりが湧いてくる。


 だからこそ戻りたい気持ちを持ち続けるために好きな漫画やアニメを思い出しながらバカをやる。


 なので真剣だけど肩肘張らずに時に巫山戯ながら心に余裕を持って名言を口にしながら諦めずに前に進むのだ。

 これで一章のプロローグが終わったくらいです。


 良ければ評価お願いします。

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