表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

1 非日常が日常になった日


「我が友よ。お前は神を信じるか?」


 俺『白羽覚理しらはねさとり』は隣に佇む我が友『鳳大樹おおとりだいき』に頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。


「友よ、もしその質問が24時間早ければ新興宗教にでもはまったと考えて一ヶ月はネタにして爆笑してるところだな。ちなみに回答だが1時間前までは信じてはいなかったが今は超越した者の存在を信じそうになってるよ」

「そうか。俺も今のお前とほぼ同じだよ」


 混乱する頭を落ち着けるために記憶を整理しよう。記憶力には自信が有るしな。






 今日は朝からいつも通りの時間が流れた。

 起きてランニングをして朝食を取る。それから学校に登校して1限目の授業を受けた。そして4限目は体育だったから授業が終わると教室には戻らず購買で昼飯を買っていつもの場所にやって来ていた。


 校庭の隅にあるベンチ。晴れた日は決まってここで昼食を取っているのだ。


 昼食を済ませると俺たちはすぐに日課を始めた。目を閉じ自身の中の気を探る。そして両手を腰の右側に持って行き構えると両手の掌の間に気が溜まったのを確信すると前に突き出し俺は叫んだ。


「◯◯◯◯覇ァァァァァァァァァァ!!」


 何も起きなかった。うん、今日も不発だな。まだまだ修練が足りてないらしい。そんな気はしてた。ホントだよ?


 だが一度失敗した程度で諦める俺ではない。今日は出そうな気がするので続ける。


「さとりー、そっちに愚弟は居る~?」


 幾度目かの必殺技を試みようと考えてると名前を呼ばれた。


 聞き違えるはずも無いその声の主は我が友である大樹にとっては双子の姉にして俺にとっては幼なじみにして想いを寄せる相手である『鳳杏おおとりあん』だ。


 声がした方を見ると教室の窓から身を乗り出している。俺たちの居る場所は教室からは角度的に見えにくいからだろうけど危ないな。


「杏か。今日も可愛いな、大好きだ愛してるぜ!」

「それ今朝も聞いた」


 またフラれてしまったな、残念。


「大樹なら一緒だけど、どうしたー」

「母さんに頼まれた買い出しのリストをスマホに送ったから帰りに買うように言っといて~」

「それなら俺と一緒に行こうぜ! 荷物持ちでもなんでもやるぞー」

「おあいにくさま。今日の放課後は未奈美との予定があるから無理よ」


 杏はそう言って中に戻ってしまった。


 我が友に目を向けると目を閉じ座禅していた。あの体勢のときは空を飛ぼうとしてる時だ。集中してるようだが聞こえていただろう。


 それから他の聖典マンガの技も試すも不発に終わり休み時間も予鈴を含めて10分になったところで教室に戻るとこにした。


「今日も収穫は無かったなぁ」

「お互いまだまだ功夫クンフーが足りてないな。放課後にやるリアル武術の方はたまに成長を感じられるんだけどなぁ」

「まぁそんなに焦らず一歩ずつ進んでいくしかないか」

「そういや5限は何の授業だっけ?」

「たしか現国だったろ。でも朝のホームルームで言ってた避難訓練になりそう」

「前のときは5限にやったんだっけ? なら次の時間にありそう────」


 ダッシュした! 弾かれたようにダッシュした!! 頭に猛が付くほどのダッシュをした!!! 理由? 足元が光るという異変を察したから!


 普段から異変を感じたらすぐにその場を離れるという修練が活きた。


 向かうは最短で敷地の外! 敵からの攻撃、埋まっていた不発弾の起爆にその他諸々なんであれとにかく走る!


 不発弾なら間に合うわけないなどの正論は必要ないのだ! やれる事をやる! 結果は後から付いて来る! 生きてるって素晴らしい!


 数秒後僅かな余裕が出てきたので高速で思考を回転させながら頭と上半身は最小限に後ろを振り向く。


 大樹は付いて来てる。当たり前。日頃の成果。一緒にやってた。元居た所。光の環? 魔法陣? 多分。サークルの外。効果の範囲の外。このまま学校の外に──────


「はぁぁぁあああああ!???」


 思わず叫んでから前に向き直り、気持ちは更に足を動かす。


 俺の声に釣られたのだろう、大樹も一瞬後ろを向いてすぐに前に向き直るのを視界の端に捕らえると向こうも走る速度が上がった気がする。


「魔法陣が追って来るとか反則だろおおおおおお!」


 理不尽だ。不条理だ。滅茶苦茶だ。


 その手の小説はいくつも読んだが動かないものばかりだった。追尾性能なんて想定外だ。


 足元に光が追いついてしまう。そしてある事に気づいた瞬間、視界が光に埋め尽くされた。俺は自分の不幸な運命を呪いながら心の中で中指を立てたのだった。

…ヒロインは?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白かったです! [一言] これからも追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 22:33 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ