3話 ナンパされちゃいました
「うっ……おむつを替えるのは難易度が高いわね……」
「あいっ……♪」
「あらあら♪ アリスちゃん、スッキリしましたか?」
しかし、子育てと言うのは中々に奥が深いものですね。赤ちゃんは感情が情緒不安定なので、アリスちゃんがいつ泣いてしまうのかこちらは常に内心ヒヤヒヤものです。
「ぐずっ……おぎゃああああぁぁぁ!!」
「あわわ……!? アリスちゃん!? 今抱っこするからね〜よしよし♡ 良い子でちゅね〜♪ いないなぁ〜い、ばぁ♡」
オムツを替えた矢先にまた泣かれちゃいました。一度子育てについて、詳しい主婦さんにご指導を承りたいものですね。
「主……」
「ん? どうしたのフェンちゃん?」
「【深淵の魔女】と呼ばれたあの主が……今ではすっかり母親かぁ……何だか感慨深いものだね」
「血の繋がりは無いけどね……でも、そうね。何だかんだこの子の母親になってあげるのも悪く無いかもしれないわね。本当は引退した後、一人で余生をのんびり過ごそうと思ってたけど、人生何が起こるか本当に分からないものね」
ミレーナは、アリスを見ながらだらしなく顔を破顔させている。最早そこには、かつて恐れられていた大賢者、【深淵の魔女】の姿は微塵の欠片も無かった。
「さて、街へ買い物に行くわよ」
とは言ったものの……アリスちゃんを連れて行って大丈夫かな? でも、アリスちゃんを置いて行く訳には行かないし……でも、連れ行くと荷物が持て無くなってしまう。
「あ、そうだ。フェンちゃん」
「ん? なぁにぃ?」
「人化して、一緒に街まで買い物に行きましょ♪」
「おっけ! 主と買い物だぁ♪ 僕嬉しいよ!」
フェンちゃん、ごめん。フェンちゃんには荷物持ち要員として手伝って頂こう。伝説のS級の魔物を荷物持ちに使うのは、恐らく大陸中を探しても私だけかもしれません。
「変身〜えいっ!」
フェンちゃんの性別は♀です。人化すると狼の耳が生えた銀髪の美少女へと大変身します。メイド服を着たモフモフなケモ耳美少女の誕生です!
「主ぃ〜サラマンダーはどうするの?」
「サラちゃんは今回お留守番ね。この場所には結界を張ってあるから、人や魔物が近付く事は早々無いと思うけど念の為よ」
ミレーナは身支度の準備を進める。フェンリルのフェンちゃんにアリスを任せて、ミレーナは買う物を色々と紙に書き洗い出して整理している。
「あ、主ぃ! お嬢様が!」
「ばぶっ! にゃっ!」
「あ、暴れたら駄目だよ! お嬢様!?」
アリスちゃんったら♡ どうやら、私に抱かれる方が良いみたいですね。もう♡ 本当にしょうがない子でちゅね〜♡
「よしよし〜アリスちゃんはママの事が好きでちゅか?」
「あいっ!」
「はぅ……♡ フェンちゃん! 見てよ! アリスちゃんが笑ってるよ!」
「うふふ……お嬢様も主も可愛いです♪ では支度して3人で参りましょう」
私はフェンちゃんとアリスちゃんを連れて街へと買い物に行きました。
―――辺境の街・貿易都市ロクサス―――
中世ヨーロッパのような街並みに煉瓦造りの煌びやかな建物が沢山並んでいるオシャレな街である。道も整備され、石畳の道がびっしりと敷かれており、街と街の間には小さな人口的な川が幾つも流れており、水運が活発で水の都としても有名な街である。
「アリスちゃんのお洋服やミルクに赤ちゃん用のおやつを買ったら、アリスちゃんのベッドを新しく新調しましょう」
「了解〜それにしても、辺境の街だと言うのに結構賑やかだね〜」
「そうだね、王都程では無いけど、道沿いに沢山の屋台が出ていて活気に満ち溢れているね」
しばらく川沿いを進んでいると屋台の店主の方達から、しばし話しかけられる事が多いです。
「お! 嬢ちゃん達、別嬪さんやなぁ! 良かったらウチのオークの肉買ってておくれよ!」
鉢巻を巻いた歴戦の商売人と言った風貌のおじ様ですね。ジュージューと焼かれているオークの串焼きは、匂いも香ばしくて食欲をそそります♪
「あ! 主! このオークの串焼き食べたい!」
「うふふ……いいよ。では買いましょうか♪」
「わ〜い♡ 主ありがとう!」
フェンちゃんも尻尾をフリフリとさせて愛らしいです♪
やはりメイド服は至高! フェンちゃんの愛らしさを何倍にも引き立てていますね♡
「あ〜ヴぅっ!」
「アリスちゃんは、まだお肉は早いでちゅからね〜もう少し大きくなったら、ママが極上のお肉食べさせてあげるから♡」
あ、そうだ。このおじ様にベビー用品を取り扱ってるお店が無いか聞いて見ましょう。私はこの街に来てからまだ日が浅いので、何処にどんな店があるのかまだ良く分かっていません。森に一戸建ての家を建てたのもつい最近の話しです。
「おじ様、一つ聞いても良いかしら?」
「何だい? おじさんで良ければ何でも聞いてくれ!」
「この辺にベビー用品を取り扱ってるお店があれば是非教えて頂きたいのですが……」
「ベビー用品かぁ。ふむ、ならばあそこはどうだろう。ここの道を真っ直ぐ行くと冒険者ギルドがあって、その冒険者ギルドの隣りの隣りにベビー用品店を扱うお店があるよ! 名前は確か、【バブみ本舗】だったかな」
「本当ですか!? おじ様ありがとうございます♪」
そうと決まればレッツゴーです! しかし、私の正体が【深淵の魔女】だと言う事が案外バレないものですね。やはり、変装魔法が効いてるのかな? これなら大手を振って街を歩けますね♪
「そうだ、お嬢さん名前は何て言うんだい?」
「え、あぁ。私はミレーナと申します」
「ほぉ! これはまた、あの【深淵の魔女】様と同じ名前とは……ミレーナちゃん、今後も良かったらご贔屓に♪ おじさんのとっておきのアレ、サービスしちゃうよ!」
「世の中、同姓同名の方なんていくらでも居ますよ〜はい♪ その時はまた是非」
とっておきのアレとは……一体何の事かは分かりませんが、またの機会があれば寄らせて頂きましょうか。フェンちゃんも美味しそうに食べてるし。
「ばぶっ! うばっ!」
「はいはい♪ そろそろお店に向かいましょうね〜アリスちゃんの為に、ママ何でも買ってあげるからね♪」
アリスちゃんがグズる前に早く買い物を終わらせてお家へ帰りましょう。
「人多いなぁ〜」
「フェンちゃん、はぐれないように私の傍に居て」
「うん! 主と腕組みするもん!」
「あらあら♡ まさに両手に花ね♪」
こうして歩くと馬車が通ったり、買い物客で通りは賑わいを見せています。この街なら、私を知る者も少ないだろうし店も沢山あるので、住むには丁度良いかもしれません。
「……」
「はむっ♪ う〜ん♡ 美味しい」
私も一つ串焼きを買っとけば良かった。フェンちゃんの食べてる姿を見るとお腹が空いて来ちゃいました。
「ねえ、フェンちゃん。私も一口だけ食べさせてよ!」
「は〜い♪ では主、あ〜んしてください」
「あ〜ん」
フェンちゃんに串焼き肉を一口食べさせて貰えました♪
「もぐもぐ……肉厚も良くスパイスが効いてて美味しいわね♪」
「人間が作る食べ物は凄いですよね〜肉に一手間加えるだけでこんなにも美味しくなるのだから」
「そうね。人間は非力だけど、ゼロから新しい物を作ると言う点に関しては、本当に目を見張るものがあるわね」
と偉そうに言いましたけど、私も人間と特に変わりありません。昔は野菜や木の実ばかり食べて居ましたけど、いつしかお肉やら様々な食べ物を食べる様になっていました。食わず嫌いは良くないと言う事をとうの昔に私は学びましたのでね♪
しばらく道を歩いていると、前方から柄の悪そうなお兄さん達が近寄って来ました。
「ん? あの、すみません。そこ退いて貰えませんか?」
「イヒヒ……兄貴! このエルフの女は上玉ですぜ! こっちの獣人族もけしからんですなぁ!」
「俺達と少しだけお茶しない? その後、一緒に気持ち良い事しようぜぇ!」
懐かしいな。私も昔、駆け出しの冒険者の頃は良く男にナンパされたものです。何十年ぶりのナンパかぁ。私もまだまだ魅力的な女と言う事なのね♪
「主、お嬢様。少し失礼しますぅ〜♪ お兄様方、僕と遊んでくれませんか?」
「お? メイド服の姉ちゃん、俺らと遊んでくれるのかい? しかも、ボクっ娘かい! これは萌えるねぇ!」
「獣人族の女はまだ遊んだ事が無いから、楽しみですねぇ、兄貴!」
素行の悪そうな2人の冒険者が下卑た笑い声を上げた。片方は出っ歯で痩せ型の男。もう片方は図体の大きい、スキンヘッドのイカつい男です。昔の私なら、殲滅魔法で半殺しにしている所ですが、私ももう大人です。アリスちゃんの目の前でそんな物騒な事は流石に出来ません。
「さあ、お二人方こちらへどうぞ♡」
あ、フェンちゃん……あれは完全にキレてるな。目が笑ってないもん。フェンちゃん、路地裏で始末するつもりかな?
「フェンちゃん、優しくするんだよ?」
「了解ですぅ〜あるじぃ♡」
フェンちゃんは笑みを浮かべたまま、路地裏へと男達と入って行きました。
「ぎゃあああああああああ!!」
「や、やめろォ!!」
そして、男達の悲鳴がなり止むとフェンちゃんが路地裏から出て来ました。男達の姿は何処にもありません。
「フェンちゃん、もしかして殺っちゃった?」
「いいえ、どうやらあの2人は、床にめり込むのが趣味なそうですよ!」
「そ、そうなんだ……」
まあ、あの二人の自業自得ね。これに懲りて無闇やたらとナンパはしないようになるでしょう。
こんばんみー! 二宮です!
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