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2話 アリス・フォーゲンベルク

 



 ―――魔境アルベスタ大森林・ミレーナ宅にて―――




 とりあえずお家へ到着! 帰り道に商店で、この子のオムツとミルクに哺乳瓶を買って急ぎ足で帰宅しました。まずはミルクを呑ませてから、身体を綺麗にしてあげましょうかね。



「ふむふむ、この本によれば50℃くらいのお湯でミルクを湯せんして、温めたら直ぐに飲ませるのね」

「あぅ……おぎゃああああああぁぁぁ!!」

「ま、待って!? 今ご飯の準備してるから! ね?」



 桶に水を入れたら、後は温め……あぁ! 火の魔石買うの忘れてた!? 私のバカ! こんな時に限って切らしてしまう何て……よし、こうなったら!



「これで出力を下げて……【地獄の劫火(インフェルノ)】!」



 あぁ、出力高すぎた!? この魔法では駄目ね。哺乳瓶1つ駄目にしてしまったわ。残りは一つ……ならば、最上級魔法の【火竜の咆哮(レーヴァテイン)】を使う? いや、こっちの方が火力が高いわね。あ! そうだ! 丁度良いのが居るじゃない!



召喚(サモン)・トゥエルブ! 灼熱の地獄から顕現せよ! 炎帝竜サラマンダー!」



 この魔物は、わたしが使役している魔物の内の一体。冒険者ギルド協会の危険指定ランクS級に分類されている火のオオトカゲのサラマンダーだ。サラマンダーがもし人間の街にでも現れたならば、大国が国家総動員令を発令する程の魔物だ。



「サラちゃん! 緊急事態発生なの! 力を貸して!」

(あるじ)がそれ程取り乱す強敵が現れたのか!? 敵は古龍か!? それとも、大魔王サタニエルの軍勢が攻めて来たのか!?」

「そんなのはどうでも良い事よ! それよりもこれよ! このミルクをサラちゃんの身体で温めて!」

「え、ミルク……? お? 何だこれは……?」

「時は一刻を争うの! このミルクを50℃くらいの温度で温めて欲しいの! 急いで!」



 ミレーナは召喚されたサラマンダーの背中の上に水の入った桶を設置する。サラマンダーは、疑問を抱きながらも自分の背中の上に乗っているお湯に浸かった哺乳瓶を温め始めた。



「流石サラちゃんよ! 温度調節も完璧ね♪」

「…………」

「よし! これくらいなら大丈夫でしょう!」



 早速赤ちゃんの口元に哺乳瓶を咥えさせて……



「ごくっ……ごくっ……」

「お、飲んだわ!? 美味しいかな?」



 赤ちゃんはごくごくとミルクを飲んでいます。とりあえず、何とか無事温める事には成功したようです。サラちゃんナイス!



「主よ、して敵は……」

「あ、そうだ。サラちゃん、お風呂場に張ってある水を温めておいてくれる? 今度は37℃くらいでお願いするね♪」

「りょ、了解した……なら、身体を縮小させるとしよう」



 こうして見ると赤ん坊も可愛いわね……小さなおててで一緒懸命に哺乳瓶を持っちゃって……うふふ♡



「ミルクの分量はこれで良かったのかな? 赤ちゃんは、生後何ヶ月かによって、ミルクの分量が変わって来ると書いてあったけど……この子は恐らく生後3ヶ月くらいかしら?」



 まだまだ分からない事が沢山ありますね。まずは、名前を決めてあげないと行けないわね……どんな名前が良いかしら? 女の子だから、可愛い名前が良いわよね!



「げぷっ……あだっ!」

「あらあら、美味しかったかな? 貴方のお名前は何が良いかしらね〜あ、その前に身体を綺麗にしましょうね〜♪」



 そして、数分後。サラマンダーのサラちゃんがお風呂場から戻って来ました。相変わらず仕事が早いですね。



「よし、お風呂へレッツゴー!」



 ついでに私も一緒にお風呂に入ってしまいましょう。



「主よ、俺は庭で待機してるぜ。一応、周囲の警戒はしておくよ」

「サラちゃん、いつもありがとね♪ 後でご褒美に焔の鉱石あげるから!」



 私は赤ちゃんを抱いて早速お風呂場へと移動しました。






 ―――お風呂場―――






「あいっ……!」

「あらあら、元気ですね〜気持ち良いですか?」



 赤ちゃんは泡が気になる様子です。泡を手に付けて、つんつんと触っていますね。



「はうっ……!? もう……しょうがない子ですね。母乳は出ませんが、どうぞ」

「ちゅぱっ……ちゅうちゅ……」



 私の乳房を咥えてちゅぱちゅぱと吸っています。女性の敏感な部位なので少し声が出ちゃいそうです。でも、何だかとても穏やかな気持ちになります。もしかしたら、これが母性と言う奴でしょうか? 今まで独身を貫いて来ましたけど、私も結婚して子供が生まれていたら......この様な気持ちになっていたのかな?



「でも、私もまだまだ子供は産める身体。結婚をしようと思えば出来る年齢です。後100歳はこの若さのまま……」

「あう……あだ!」

「ん〜? 私の胸はお気に召しましたか?」

「あい! マ……マ……!」

「なっ……!?」



 え、今この子、私の事をママって言ったよね!? 何でしょうか、この雷が迸ったような衝撃は……雷公龍と戦った際に電撃のブレスを喰らった事がありましたけど、ここまでの衝撃は無かったです……何と恐ろしい子なのでしょう……この【深淵の魔女】と呼ばれた私に、ママと言う一言でここまで痺れさせるとは……間違い無くこの子は逸材! 将来大物になりそうな予感がします!



「ばぶっ……ままっ……!」

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ……!!」

「なっ!? どうした主よ!? 敵襲か!?」

「いや、サラちゃん何でも無いわ……本当に何でも無いから!」

「そ、そうか。なら良いのだが……」



 この胸の高鳴る鼓動……この私が、ここまで翻弄させるれるとは。やはり、この子は逸材だわ。こんな可愛い子をゴミ箱に捨てる何て……何だかこの子の親に怒りが湧いてくるわね。



「キャッキャ……!」

「しょうがない子ですね〜ママのおっぱいどうぞ♡」



 こうして、私は母性という名の愛に目覚めたのでした。






 ―――ミレーナの寝室―――





 さてと、お風呂から帰還しました。とりあえず候補に色々な名前を紙に書いてみよう。あ、その間この子のベッドはどうしようかしら……



「よし、召喚(サモン)・ナイン、凍河の雪原から来たれ! 氷神狼(フェンリル)!」



 私が召喚したのは、体長おおよそ3mはあるであろう伝説級の魔物フェンリルだ。危険指定ランクはSよりも上に位置する、最上級の神級と呼ばれる特別な魔物です。


 体毛が凄く柔らかくてもふもふしているので、私も理事長時代の時にはお昼寝する時に良く召喚したものです♪ 今はベッドが無いので、フェンちゃんに身体を少し小さくして貰ってこの子のベッドになって貰いましょう。



「わ〜い。主だぁ♪ 今日もお昼寝するの?」

「いいえ、今日は訳あってこの子のベッドになって欲しいの。頼めるかな?」

「はい! 主の命令なら喜んで!」



 私は赤子をフェンちゃんの上に乗せました。フェンちゃんの毛並みは、艶があり物凄くモフモフとしています。私も寝具には拘りがあるのですが、未だにフェンちゃんを超える寝具とは出会えておりません。



「よし、とりあえず思い付いた女の子の名前を書いてみよう」



 フラン、シャロン、モニカ、シンシア、アイリーン、フレイヤ、エミリア、メイ、マーガレット、エレノア、アリス、リン、マリアンヌ、ヒルダ、クラリス……



 私が机に向き合って数時間が経過した頃……いつの間にか赤ちゃんはフェンちゃんの上で、スヤスヤとお昼寝をしておりました。フェンちゃんも優しげな表情で赤ちゃんの面倒を見ています。赤ちゃんは右手でフェンちゃんのモフモフ尻尾を握ってどうやらご満悦の様子です。



「フェンちゃんもサラちゃんもありがとね♪」

「主の為なら、僕は何でもするよ〜」

「主を守るのが俺の仕事だ。気にするな」



 フェンちゃんやサラちゃんは私の頼もしい相棒です♪ よし、この子の名前を決めました。この子はきっと、お姫様の様に天真爛漫に成長して行くと信じて、名前はアリスに致しましょう♪



「皆んな、この子の名前を決めたわ。名は、アリス。この子の名前は、アリス・フォーゲンベルクよ!」

「良い名前だと思うよ!」

「しかし、主に家族が出来るとはな……昔を知る俺達からしたら、驚きだぜ」



 昔は色々とヤンチャをしたけども、私だって年齢を重ねれば大人になるのよ♪ もう争い事や貴族達との関わりを全て断ち切りたい。この森で平和にひっそりと暮らすのよ!



「あ、街にまた買い出しに行かないと行けないわね……」



 街に出る時は、念の為に変装魔法を自分に掛けてから出掛けるようにしよう。一応辺境とは言え、私の事を知っている人が居るかもしれない。私はもう、表舞台に出るつもりはありません。世捨て人のように余生を穏やかに送るつもりです。




少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。


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