13話 フェンリルの休日④【フェン視点】
―――ロクサスの街・3番ストリートの路地裏――
猫人族の姉妹、黒髪ツインテールのエレナと幼い妹のルシアは、フェンちゃんから貰った串焼きやパスタ等の豪勢なご飯を前に、もう自分の欲を抑える事は出来なかった。2人はもぐもぐと幸せそうな表情でごはんを美味しそうに食べていた。
「こらこら、2人ともゆっくりと食べないと駄目だよ?」
「ぐずっ......こんなに豪華なご飯食べたの何年振りだろ......ルシア、良く噛んで食べるのよ?」
「うん♪ おねえちゃん、おいちい!」
僕が上げたご飯、2人共凄い勢いで食べてるね。余程お腹が空いて居たのかなぁ? ご飯食べながら涙を流す人初めて見たよ。
「ごほんっ。フェンお姉ちゃん......ありがと」
「どう致しまして、所でエレナちゃんとルシアちゃんは今何歳なの?」
「私は2ヶ月前に8歳になった......なりました。そして、妹のルシアは2日後に3歳のお誕生日を迎えますね」
「エレナちゃん、僕に敬語を無理して使わなくていいよぉ〜そっかぁ。妹のルシアちゃんは明日誕生日かぁ......」
何だかこの子達を見てるだけで、胸が締め付けられらる様な気持ちになってしまう。見た目の服装からして、この子達の境遇が理解出来てしまうんだ。飢餓と貧困......この街もメインストリートは一見華やかに見えるけど、一歩路地に入ればこう言う非力でか弱い子達も沢山居るんだ。人間社会も弱肉強食かぁ......
「ルシアちゃんは、お誕生日何か欲しい物あるのかなぁ?」
「ふぇ? ほちいもの......ルシアね、ママのびょーきなおちてほちいの!」
「ん? お母さん具合悪いの?」
そして、僕は恐る恐る姉のエレナちゃんから事情を伺った。本当なら僕からして見れば関係の無い話しではあるけれど、不思議とこの2人を見た時から放って置くことが出来なかった。
するとエレナちゃん達は、恐る恐る自分達の境遇について語ってくれました。
――――――
「そっか。お母さんが原因不明の病に......」
どうやらエレナちゃん達の父親が不慮の事故で亡くなってから、元から身体の弱いお母さんが一人で娘達の面倒を見ていたそうで、色々と無理をしたせいか今ではベッドの上での生活を余儀無くされているそうだ。
「うん、本当はお薬や栄養のあるご飯を手に入れてママに食べさせたいのだけど、私達だけではお金が.....働く事も年齢的に無理だし」
「そっかぁ......」
う〜ん。正直な話、こればかりは僕にもどうしようも無いかな。戦闘や殲滅するとかなら得意だけど、飢餓や貧困に対してはこの街全体の問題だしね。流石に僕の主でも解決するのは難しいと思うなぁ。
「あれ? ルシアちゃん、ご飯もう食べないの?」
「うん! あとは、ママにあげるの! フェンおねえちゃん、ありがと!」
「............」
はぁ......全く、やれやれ。僕も年老いたものだなぁ。涙脆くなって来てるんだもん。500年前の僕が、今の僕を見たらきっと仰天するだろうな。僕は決して良い魔物では無い......だけど、この子達と出会ってしまってから何とかしてあげたいと言う気持ちもある。
「ルシアちゃん、おいで」
「ふぇ?」
僕は思わずルシアちゃんを再び抱きしめてしまった。僕達からすれば......人間は愚かで脆弱な欲に塗れた1人では生きて行けない種族。だけど、人間は僕達には無いものも沢山持っている。その中の1つ......それは豊かな感情だ。僕やサラマンダーも主やアリスお嬢様と出会ってから、日々色々な事を学んでいる。
「フェンおねえちゃん〜尻尾もふもふさんなの♡」
「ふふ......僕の毛並みは高級布団よりもふかふかで気持ち良いんだぞぉ〜♪」
しばらく僕の耳や尻尾を触らせて遊ばせていると次第にルシアちゃんは疲れたのか、目をウトウトとさせてからスヤスヤと僕の腕の中で寝てしまいました。警戒心が無さ過ぎて逆に心配なレベルだね。
「フェンお姉ちゃん、ごめんなさい。何もお礼が出来なくて......」
「気にしないで、たまたまご飯調子乗って買い過ぎちゃったんだよ〜食べてくれてありがとね♪」
ルシアちゃん軽いなぁ......アリスお嬢様よりも軽いかもしれない。エレナちゃんもそうだけど、2人共かなりの栄養不足だね。僕の神眼は相手のスキルや状態異常まで見る事が可能なんだ。
「まま......すぅ......すぅ」
「僕はルシアちゃんのママでは無いんだけどなぁ〜あはは♪」
ママかぁ......まぁ〜悪くは無い響きかな。しかし、僕も昔と比べてかなり丸くなっちゃったな。神獣と恐れられたこの僕が、今ではメイド服着ながら人間社会に溶け込んでいるんだもん。主との出会い、そしてアリスお嬢様との出会いや子育てと言う大変さが僕の心に変化を齎してくれた。
「エレナちゃん、お母さんやお父さんは何処に居るの?」
「お母さんは......重い病でベッドに寝たきりなの。お父さんはルシアが生まれた時に不慮の事故で無くなっちゃったの......ぐすん」
「ごめん。辛い事思い出させちゃったよね。エレナちゃんもこっちにおいでよ」
するとエレナちゃんは一瞬目を大きくさせてから、恥ずかしそうにフェンちゃんの身体へと寄り添った。
「ルシアがこんなに心を許す何て......フェンお姉ちゃんは優しい人何だね」
「ん? そうかなぁ? 僕はそんなに優しく無いと思うけど......?」
そうえばエリクサーがまだ家に残ってた筈......主がアリスお嬢様の尊さに発狂して発作を起こしそうになる度に飲んでたので、かなり本数は減ってしまったけれど、エリクサーは1つ飲むだけでどんな病も癒す効果もある伝説のポーションだ。
「フェンお姉ちゃんは【慈愛の女神】様の事知ってる?」
「あぁ......あの駄女神......ごほん。癒しと安寧を司る女神様だね」
「うん! ハイラル・メナス様のエリクサー! どんな病や気の病気も癒す至高の薬! それがあればお母さんの病も治るの!」
おおぉ......エレナちゃんの圧が凄い。【慈愛の女神】ハイラル・メナス。大国の宗教国家セイルダムの神様として君臨している胸がやたらとデカイ女。そして、主と並ぶ三賢者の一人で回復魔法や状態異常を治す魔法に特化してる引きこもり女神だ。
「私、毎日メナス教会でお願いしてるの。ハイラル・メナス様がいつかお母さんの病を治してくれるって!」
「そうなんだぁ......ハイラル・メナス様ねぇ」
エレナちゃんごめん。あいつはただの引き篭もりのニートだよ。主のお友達ではあるけど、メナスは僕のもふもふとした毛並みが大層気に入って、隙あらば直ぐに抱き着いては来るし、僕の背中をベッド代わりにして爆睡したり、とても【慈愛の女神】と言うより......駄女神だよあれは。
「エレナちゃん、ルシアちゃんは良い子だからねぇ〜きっと、ハイラル・メナス様にお願いが届くと思うよ♪」
「本当!? 私も良い子になれる様に頑張るね!」
ふふ......やはり、エレナちゃんも年相応と言った感じだね。良し、主に相談してルシアちゃんの誕生日は豪勢な物に仕上げようじゃないか♪ 主もこの子達の境遇を聞いたら協力してくれると思う!




