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1話 赤子拾っちゃいました

 



「ふぅ……長かった……もう、私の役目はいよいよ終わりね」

「何をおっしゃいますか……師匠はまだまだお若いではありませんか」

「見た目は若いかもしれないけど、今年で120歳よ? もう、世間ではおばあちゃんですよ? そろそろ余生を楽しませて頂戴」



 ハイエルフは寿命が普通のエルフよりも長いので、身体が老い始めるのはまだまだ先である。私は今まで、冒険者としては最上級のSランク冒険者まで上り詰めて、ドラゴンを討伐したり国同士の争いを止めた後、ハルマール王国の名門セントミナス高等魔術学院の理事長を務めたりもした。


 他にも色々あったけど、理事長も昨日任期を終え退任。私の信頼出来る弟子に後は全て任せたのだ。今の私は晴れて自由の身!




 ―――――――――――――――

 彼女の名前は、ミレーナ・フォーゲンベルク。種族はハイエルフだ。【深淵の魔女】と呼ばれている大陸に3人しか居ない大賢者の1人である。大陸にその名を知らぬ者は居ないとされる程の有名人だ。

 ―――――――――――――――




 彼女の容姿は金髪碧眼に美しい腰まである長い髪、ぱっちりとした目と右目の下に小さなホクロがあり大人の色香をふんわりと醸し出している。


 例えるなら、妖艶な魔女だ。スタイルも良く、胸も爆乳と言った程の破壊力。高価な白い魔道士が着るようなローブを身に纏っている。ミレーナは傾国の美女とも謳われており、彼女に結婚を申し込んだ男性の数は数え切れない程だ。



「ミレーナ師匠……」



 ミレーナの傍に控えていた銀髪のボブカットの女性の名はアイリスと言う。ミレーナの弟子の一人で、現在ハルマール王国の騎士団長を務めている【白銀の剣聖】と言う異名で有名な女性だ。



「アイリスも頑張りなさい。貴方は私が認めた立派な弟子です。胸を張って前へと突き進みなさい。今日を持って、貴方は私の元から卒業です♪」

「ミ"レ"ーナ"し"し"ょう"……」

「うふふ……ほら、泣かないの。せっかくの美人さんが台無しですよ?」

「ぐすんっ……」

「またそのうち遊びに来るからね♪ 次会う時をまた楽しみにしているわ♪」




 今からもう私は理事長では無い。思えばこの机とも長い付き合いでした。長い間、本当にありがとね……さて、長居は良くないわね。後は若い者に託して早くこの場から立ち去ろう。




 ミレーナは何処か寂しそうな表情を浮かべながら理事長室を後にした。







 ◆ハルマール王国・辺境の街◆




 ハルマール王国、辺境の地にある大自然に囲まれたロクサスの街。街の周りには魔物の侵入を防ぐ為に大きな外壁が聳え立っている。海から近い位置にもあり、街の中は綺麗な水が至る所に流れており正に水の都と呼ぶのに相応しい綺麗な街並み。


 街の中は川沿いに沢山の屋台や店等が出店しており人々は活気に満ち溢れていた。そして、このフォレスビアの街は隣国とも近い事もあり商人達が競い合う激戦区でもある。




「かなり遠くまで来たわね〜余生は田舎でのんびりとスローライフね♡」



 余生と言っても私の人生まだまだ先は長い。でも、もうこの先働きたくは無い。冒険者や理事長をしてる時に貯めたお金が幸い山のようにある。そろそろ使わなければといつも思っていたけど、理事長の業務が忙し過ぎて使う暇が全く無かったのだ。



「ん〜身体が軽い。全ての責任やプレッシャーからの開放感は凄まじいわね♪ 今日から何しようかしら♡」



 ひゃっほい〜! これからは好きに生きてやるんだから! 色々なしがらみに縛られて居たせいで、普通にお買い物する事も出来ないし、私の大好きな酒場に行くのも【深淵の魔女】と言うイメージを壊してしまうからとか言う理由で止められていたし。



「よし、まだお昼だけど1杯だけ……呑んじゃおうかな♪」



 まずは魔法で変装して、酒場でエールをグイッとキメましょう! もう私は今日から普通の一般人です! 今までキャラ作りでかっこいい喋り方を意識してたけど、それをもうする必要もありません♪



「エール♪ エール♪ ん? これは……赤ちゃんの泣き声?」



 街の路地裏の方から、微かに赤ちゃんの泣き声が聞こえて来ます。私は聴覚が優れて居るので、普通の人が気付かない音でも気付く事が出来ます。



「嫌な予感がする」



 私は赤ちゃんの泣き声がする方へと急ぎ足で向かいました。街の薄暗い路地を突き進むと……



「まぁ!? 何でゴミ箱の中に赤ちゃんが!?」

「おぎゃぁぁあああああああああ!!」



 まさか、捨てられたと言うのでしょうか? 恐らく女の子の赤ん坊かな? 可哀想に……でも、ごめんなさいね。貴方を養う程、私は優しく無いの。恨むなら貴方を捨てた親を恨む事ですね。



「孤児や捨てられた子なんて、この世の中沢山居る。そして、親では無い私がこの子を救う義理は無いの」



 私はゴミ箱の蓋をそっと閉じようとしましたけど、赤ん坊が私の腕を掴んでこちらをじっーと見つめるのです。



「そ、そんな目で見つめても......駄目よ!」

「あーう!」

「私はそんなに優しい女では......」

「まんま♡」

「............」



 こうして、私の貧相な罪悪感が勝利してしまい、この子をとりあえず持ち帰る事にしました。まあ、一時的に預かるだけですけどね! 落ち着いたら何処かの孤児院にこの子を託す事にしよう!



「おぎゃぁぁあああああああああ!!」

「よしよし〜本当にしょうが無いわね。一時的に預かるだけですからね?」



 ミレーナはやれやれと言った表情をしながらも赤子を優しく抱っこをする。



「あら、案外軽いのね......」

「ぐすんっ……あう……?」

「おお! 抱っこしたらこの子泣き止んだぞ!?」



 私は長く生きて来ましたけど、恥ずかしい事に結婚を一度もした事が無く、子育て経験は0です。しかも、120年間処女を守り続けて来ました。あ、この話しをすると墓穴を掘りそうなのでやめておきましょうか。赤ん坊には何を食べさせたら良いのでしょうか? 家に帰ったら、本が沢山あるので色々と調べて見ましょう。



「あーい♡」

「はぁ......やれやれですね」

「まんま! ばぶ!」

「いてて!? 髪の毛引っ張らないでよ〜」

「あーい♡」



 ぐすんっ......何でこんな事になったのでしょうか。



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