緊張の初配信、そして命名
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「えっと……これかな?」
配信サイトE-Vaultとの連携報酬で貰えるマジックアイテム『境界水晶』をボックスから受け取って、アイテムとして召喚してみる。
すると、目の前に人の顔と同じくらいの大きさの水晶がふよふよと浮いた状態で現れた。
「なんか……でかくない? 他の人の迷惑になったりしないかな……?」
「見た目は変えられるみたいだよ? なんかいい感じのとかあるんじゃないかな」
設定を見てみる。このスキン変更っていうのがそれなのかな。
開いてみると、思ったよりもいろいろとあった。なんかのゲームとか配信者とのコラボらしいものは数百円くらいで買う感じだけど、オリジナルっぽいのは自由に選択できるみたい。
うーん……とりあえずこの妖精みたいなものにしておこう。淡い水色に輝く球体に妖精の翅が生えているようなかわいらしい見た目で、手のひらサイズ程度の大きさなのも良い感じ。
「チャンネルの名前はどうしようかな……」
「エネちゃんねる! とかでいいんじゃない?」
「ええっ、せめてリーナちゃんの名前とか……」
「んー、放送のタイトルに私の名前入れるとかならいいと思うけど、基本的にはエネちゃんのチャンネルだし」
まあ、確かに私のアカウントと連携されているので大人しく「エネちゃんねる」にしておくしかないか……。うん、頑張ろう。
配信タイトルはとりあえず「エネ&リーナの初心者セイクロ生配信」にした(リーナ&エネにしようとしてたけど却下された)。
「じゃあ早速配信しよう!」
「えっ、一旦限定公開にして音声とか配信のテストしてからの方が良いんじゃ……」
「平気平気! 初配信だしその辺は大目に見てくれるって。そもそも知名度0からなんだしどうせ最初は人も全然来ないから! 始めてすぐなら多くても10人とかじゃない?」
「そ、そうなのかな……?」
まあでもそうか……こんな簡単に配信できるんだし配信者の数ってもう飽和状態なんだろうな。そんな状況で私の配信を見に来る人なんて全然いないだろうし……。
意を決して、私は配信ボタンを押す。数秒の間が空いて、いろいろなウィンドウが開いた。
配信画面にどう映っているのかを確認するものと、コメントをリアルタイムで表示するもの。あとはカメラの細かい操作を行うためのウィンドウだったりいろいろある。
カメラは一旦前方に配置しておく。
「えっと、これで大丈夫かな……」
『初見です』
いきなりコメントが流れてきた。普段の私だったらここで慌ててしまうところだけど、今回は一応心の準備が出来ているのでどうにか出来そう。
というわけで少し深呼吸をして、初見さんに挨拶を――
『初見~』
『初心者と聞いて』
『最近セイクロ人気だね』
「あわわ……」
思ったよりもコメントが多い……!
視聴者数は……10人くらい。人数的にはリーナの言うとおりだけど、いざコメントが流れてくるとどれにどう反応したらいいかすごく迷っちゃうな……。
「とりあえず自己紹介しちゃおっか!」
「う、うんっ」
リーナが助け舟を出してくれたのでどうにかそれにしがみつく。
「じゃあまず私から! 名前はリーナで職業は大軍師! バッファーとしてどんどんサポートしていっちゃうよ~!」
『パチパチ』
『軍服女子かわいい』
『銃とか使うのかと思ってた』
『ストラテジストなんてあったっけ……?』
「じゃ、じゃあ次は私……。えっと、エネですよろしくお願いします……! 職業は従魔姫……一応テイマーみたいです?」
『ゴスロリ良いねえ』
『テイマーなのか……』
『このゲームやってないからよくわからないけどそういうのもあるんだなあ』
『テイマーってことは使い魔みたいなのもいる?』
『ディザスタークイーン???』
「つ、使い魔……あ、そういえばなんかキャラメイクの時に……」
確か、最初に一体使い魔をもらえるんだったっけ。テイマーなのにその辺一度も確認してなかったな。
実際に戦闘になって使い方わからなかったら悲惨なので今のうちに確認しておこう。
えっと……とりあえず使い魔メニューから呼び出したいモンスターを選択することで呼べるらしいので、実際にその通りにやってみる。
開いたリストには一つだけ名前が書いてあったので、それを選択して召還を選ぶ。
すると、胸と鎖骨の中心くらいの位置に紋章が煌めいて、そこから光の球が飛び出してきた。
光の球は徐々に形を変化させていき……そして一瞬光を放ち、キラキラとしたエフェクトを散らす。
そうして現れたのは、銀色に輝く鱗と翼を持つ、小さなドラゴンだった。
「キュイッ!」
ドラゴンは少しザラザラとした高い声でそう鳴いて、くるりと宙を一回転した。
「か、かわいい……!」
『おおー』
『ミニドラゴン?』
『かわいい』
『え、テイマー系の初期使い魔にそんなのいなくね……?』
「わあっ、これがエネちゃんの使い魔?」
そういえば、適職診断の一番最後に出てきた竜も銀色だった。その時の竜は私と同じくらいの大きさで、この子は普通に肩にのせられるくらいの大きさしかないので印象は全然違うけど。
とりあえずこの子のステータスを見てみる。
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固有名:命名待ち
種族名:ドラコ・アルゲントゥム・プリムス
レベル:1
HP:100
MP:50
STR:30%
VIT:10%
DEX:10%
AGI:25%
INT:25%
MND:25%
スキル
《銀炎》《閃爪》《銀翼の守護》
【翼休め】【共鳴】【銀の威光】
信頼度:???
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うーん……情報量が多いので一つずつ見ていこうかな。
とりあえず固有名とか種族名は見ればわかるので割愛。
ステータスはパーセントで表示されているけど、これは混乱を避けるために表記から別のものにしているらしい。どうやらプレイヤーのステータスの計算とは別物のようなので、同じSTR100でも攻撃力が違う! みたいなことが起きないようにってことなのかな。
これはこれで混乱しそうな気がするけど、そういうものならそういうものなんだろうってことでもう少しよく調べてみる。
具体的にはレベルや種族値、信頼度などで基礎値が決定され、ステータスは基礎値をベースにパーセントで表示したものになっているみたい。つまりこの子の場合、基礎値が1000ならSTRは300、VITは100ってことかな。
見る限りでは、ステータスを合計した数値が基礎値を超えることもあるらしい。というかこの子がもう全部足したら125%になってる。
スキルはそれぞれ細かく見れるみたいだけど長くなりそうなのでこれも後回し。信頼度も読んで字のごとくって感じだよね。見れないのは気になるけど……。
「とりあえず、使い魔には名前を付ける必要があるみたい」
『名前か~』
『命名の儀だ』
「うーん……じゃあ、アルルにします……!」
由来は種族名のアルゲントゥムから。結構かわいい名前だけど、似合ってると思う。
「よろしくね、アルル……!」
「キュイッ」
アルルは嬉しそうに鳴いて、また宙を一回転したのだった。
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