棄てられた神殿へ
更新ペースが戻ってきた……かも?
テイマー系の話をほとんど読んだことがないので手探りで進めてます。
ルクサーヌを出発して数分。私たちは次のダンジョンである『棄てられた神殿』へと来ていた。
棄てられた神殿という名前から想像する限り、今回のダンジョンは廃墟になった神殿を探索するもの……だと思っていたけど、いざ目的地についてみると想像とは全く違っていた。
そこにあったのは石造りの建物。朽ちてなお白さを保つその表面には美麗な模様が彫られていて、その辺りに関してはまさに想像していた通りだった、けど……
「結構こぢんまりしてる……?」
「物置小屋って感じだね」
リーナの言う通り、神殿は本当に物置小屋程度の大きさしかなかった。
身長を設定できる限界まで高くしていたら普通に引っ掛かりそうなくらいの大きさの扉があって、横幅は三メートルくらい。
奥行きはもう少しあるみたいだけど、小さいことには変わりなかった。
「うーん、まあとりあえず入ってみよっか!」
リーナが扉の前に立つと、重そうな石の扉がズズズ……と音を立てながら自動で開いた。
後に続いて中には入ってみるけど、内部には地下への階段があるだけで他には何もない。階段の先は暗く、奥は一切見えなくなっている。
「エネちゃん、確かランタン買ってたんだよね?」
「うん、道具屋に行ったときに」
インベントリからランタンを取り出す。
コメントのおかげで『灯りになるものを持って行った方がいい』と事前に知っていたので、ルクサーヌで買っておいたのだ。
アルルにちょっとだけ炎を吹いてもらってランタンに火をともし、階段の奥のほうに向けてかざしてみる。階段はかなり長いみたいで、まだ先は見えない。
「地下に潜るタイプのダンジョンなんだ……」
フタバさんが屋内系のダンジョンって言ってたのを聞いたときは結構原型を残してるタイプの神殿なのかなってくらいに思ってたけど、実際はむしろ地下迷宮みたいな感じで、確かにこれだとフタバさんはあまり上手く動けなそう。
灯りになるものを持って行った方がいいというのも、そういうギミックがあるからだと思ってた。
地下に進む以外に道はないので、私たちはランタンを前方に向けながら階段を下り始めた。
場合によってはサクとかにランタンを持たせるという選択肢もあったけど、このランタンは短めの棒の先に提げられているタイプなのでそれは難しそうだし、今回は私が先頭になってる。
すぐ後ろにはリーナがぴったりくっついてるし、使い魔たちも先に何かいないか目を光らせてる状態だから安心感がすごい。
そんな陣形で階段を下りていくと、やがて少し大きな部屋に出た。階段は結構長くて、ここに着くまでに五階ぶんくらい下りたような気がする。
階段がかなり暗い設定になっていたのか、それとも暗い状況に目が慣れたのか、さっきよりも先まで見通せるようになっていた。もちろん灯りがあることが大前提だとは思うけど。
「どんなモンスターがいるかな……?」
このダンジョンの環境を見て少し嫌な予感がしつつ先のほうの部屋を窺ってみると、そこには複数のモンスターがいた。
えっと、端からゴースト、ゾンビ、スケルトン……あれ? もしかしてまたテイムできるモンスターがいないパターン……?
前回もゴブリンだらけで一匹もテイムできなかったけど、この感じだと今回もテイム出来なさそう。
ルクサーヌを経由する最短ルート、テイマー泣かせすぎる……。
一応中にはコウモリもいたけど、これは普通にこのダンジョンに住み着いてるただのコウモリだった。
使い魔にするためには大前提としてテイムで厄災の霧を払う必要があるので、普通の動物は仲間にはできない。
せっかくテイム用の餌を買っておいたのに、これだと活用できそうにないなー……。
まあ、新しい使い魔はヴェスティア以降に捕まえようということで。
気を取り直してダンジョンを攻略していこう! ……の前に、ここまでずっと感じてきた違和感を口にする。
「あの、えっと……リーナ、なんかすごく近くない……?」
「え。あっ、ごめん!」
リーナは普段からかなり距離感が近いほうだけど、このダンジョンに入ってからはほとんど密着するぐらいの位置にいる。
当然くっつかれるのが嫌なわけではないけど、さっきから口数も少ないし私が先陣切って進んでるのもあってなんか調子が狂うというか……。
……あ。そういえば、リーナって結構怖がりなんだっけ。前にもこんなことがあったなーって思い返してみると、一緒に遊園地に行った時に入ったお化け屋敷で動けなくなってたのを思い出した。
まあ確かにこのダンジョンも捉え方によっては結構怖い……かも?
「エ、エネちゃんは大丈夫なの?」
「うん……怖くはないかな」
ゴーストは結構デフォルメされて可愛くなってるし、ゾンビも年齢制限的な問題があるのかグロさは無い。
スケルトンに関してはまさに想像するままのスケルトンだったけど、正直私の中では骨が動くのは犬が二足歩行するのと同じような感覚だったり。
正直私もそこまでホラー耐性があるとは思ってないけど、このくらいなら全然平気だった。
とは言えそれはあくまでも自分の感覚で、怖がりな人にとってはこれでも結構厳しいんだと思う。
こればっかりは本当に得意不得意みたいなものなので負い目を感じてほしくはないし……そう考えて、私はリーナに左手を差し出した。
「えっと、さっき守ってもらったし……今度は私が守る番かなって」
さっき守ってもらったお返しみたいな感じにするのが一番いいような気がして、私はそんな風に口に出した。
まあ実際戦闘になったときに守るのは私じゃないけど、でも結局ランタン持ちなので常に先頭にいなきゃいけないしそこは目をつぶってもらって。
リーナは少しためらうように目を泳がせたあと、『良いの?』と聞くような視線を向けてきた。すぐに頷いて返すと、恐る恐るみたいな感じで手を重ねてくる。
その手をちゃんと握ってから、私たちはダンジョン内部を進み始めたのだった。
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