花の都ルクサーヌ
20000ポイント行ってました!ありがとうございます!
色々あって更新ペース乱れてますけど、せめて2日に1回くらいはどうにかしたいです
オーバードゴブリンの肉体が霧散するのを見届けてから、私は地面にへたり込んだ。
「つかれた……」
命令付与のおかげである程度は指示しなくても戦えるとはいえ、同時に四体の使い魔を使役するのは考えることが多くてかなりつらい。
一度にたくさん出せばレベルアップが遅くなるし、いくらキャパシティが多くてもまともに使えるのはこのくらいが限界なんじゃないかな……。
そうなるとキャパシティ値が高いという従魔姫の特性は今のところあまり効果がない。
コストが高すぎて普通のテイマーが一匹しか出せないようなレベルの使い魔を同時に複数体使役できるようになるって考えると強いけど、そのレベルの使い魔を入手するのはだいぶ先になるだろうし。
大器晩成型ってやつ……だったらいいなぁ。
「おつかれ~……ってHP結構削れてるよ!?」
「え、そんなに……?」
確かに回復の優先順位をつけるときに癖で自分を一番下にしてたけど……なんて考えながら自分のHPを見てみると残り1割ほどしかなかった。
アルルたちのHPには常に気を配っていたけど、自分のHPは完全に意識の外だったみたい。自分が倒れたらおしまいなんだからもっと気を付けないと……。
リーナの《応急処置》とアリスの《ミルキーヒール》でHPを全快にしてもらって、それからひとまずドロップアイテムを拾うことにした。
……と、そこでふと気づいてコメントが表示されるウィンドウを開く。
戦闘中に視界に映るのが気になってちょっと途中で端のほうに移動させたんだけど、範囲外に移動させちゃったみたいでウィンドウが閉じていたみたい。
そもそもコメントを見る余裕はなかったので、開いてようが閉じてようがあまり変わらなかったとは思うけど。
「あの、ごめんなさい……やっぱり戦闘中にコメントを見るのは難しくて」
『別に戦闘中まで気にしなくてもいいと思う』
『普通に戦いながら見るのは難しいでしょ』
『ボス戦中とか反応されなくてもこっちで勝手に盛り上がるから』
コメントは大体そういう反応で、私としてはありがたいけど、やっぱりコメントを見れたほうが要所要所で攻略法がわかったりして結構便利ではあったり……でも視聴者側からすると初見で足掻いてるところが見たいってニーズもあるわけで。
基本的にこういうのには正解とかなくて、選んだものがその人の配信スタイルみたいなものになっていく感じかな。
配信者って大変なんだなぁ……事前に大変だとわかってた部分は結構表面的なもので、少し慣れてくると実際にやらなかったら気づかなかったような部分の大変さがわかってくる。
「よし、じゃあもうここには用ないし次の街行こっか!」
「うん。次はルクサーヌだっけ。ここからどのくらいで着くのかな」
『街道歩いたらすぐよ』
『谷ルートだとそんなにかからないはず』
「それならサクには乗らなくてもいいかな……?」
そこまで遠くないのなら徒歩でも十分だし、街道なら普通にほかのプレイヤーも通るだろうから目立つことは避けたい。
というわけで、連戦で疲れてるみんなを休眠状態にしつつ、ボス部屋から繋がっている道を進む。道には結構な傾斜が付いていて、少し歩くと地上に出ることが出来た。
振り向くと、少し離れた位置に毒蝶森林がある。ちゃんと地下から通り抜け出来たみたい。
うわ……なんか木々の間に凄くでかい芋虫みたいなモンスターが一瞬見えたんだけど……虫系モンスターは見た目的にちょっと厳しいので毒蝶森林を通らなくて済んだのはよかったな。できれば今後一生縁のない場所でいてほしい……。
それはともかく、谷の出口から少し進むと整備された街道に出た。きちんと舗装されているし、街灯みたいなものもある。ここにはモンスターが寄ってこないようになっているみたい。
コメントによると、なんか魔よけの石……? みたいなものが使われているみたい。厄災の霧に侵された魔物が嫌う性質を持っているみたいで、街の防壁とかにも使われているらしい。
そういう世界観に関係する情報ってどういうところで得るんだろう?
そんな感じでリーナと話したりコメントに反応したりしつつ街道を歩いていると、だんだんと周囲に花が目立つようになってきた。
最初は道沿いにちらほらと咲いているくらいの感じだったのが、まとまって自生していたり、花壇のようなものが作られていたり。私たちが次の街に近づくにつれて、草原を覆う花の数が増えていっている。
やがて辺りが一面の花畑のようになったとき、私たちの目の前に町の名前が表示される。
[花の都 ルクサーヌ]
「あ、もうここからルクサーヌなんだ」
これまでの街にあった防壁はここにはなく、代わりに一面の花畑が存在している。
ただ普通の街の内部にあるものはちゃんと存在しているようで、そのまま歩くと様々な建物が密集して立ち並ぶエリアに出た。やっぱり花は多いけど。
「いろいろ見て回りたいけど、今日はもう遅いし明日かな?」
「うん、配信も今日はここまでで。えっと……また明日もやるので、よかったら見てください」
『おつ~』
『明日も見ます』
『楽しかった!』
こうして私は配信を終了して、それからすぐにリーナと一緒にログアウトしたのだった。




