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深い谷の底へ



 サクの背で揺られながら、私たちはヴェスティアまでのルートを考えた。

 まず「鋼鉄の谷」を攻略して、その近くの街であるルクサーヌで休憩。その後「棄てられた神殿」を攻略し、ヴェスティアに到着という感じのルートだ。

 他のルートだと迂回する必要のある場所が出てきたり、攻略するダンジョンが一つ増えたりするのでこれが一番速くヴェスティアに着くルートになってるみたい。


 鉄鋼の谷自体はそこまで時間がかかるダンジョンではないみたいなので、とりあえず今日はそこまでをクリアして終わろうと思っている。

 途中で一旦ログアウトしたりはしたけど、もうだいぶ長く配信してるし。


 そんなことを考えていると、前方に森が見えてきた。

 黒葉の森は真っ黒な森だったけど、この森は葉が全て純色に近い紫とか緑色をしていてすごく毒々しい感じ。



「あ……あれが目印なんだっけ?」


「確かそうだったはず! 毒蝶森林っていうエリアだよね」



 毒蝶森林は推奨レベル50のダンジョンで、今の私たちでは行ってもすぐに死んでしまう。

 これがあるせいでルクサーヌまでの行くために迂回したり複数エリアを経由する必要があったりするみたいだけど、一つだけ抜け道的なものが存在している。

 それが鋼鉄の谷で、この谷……というより地割れは毒蝶森林を縦断してルクサーヌ付近まで伸びている。

 毒蝶森林のモンスターは下まで降りてこないうえ、生息しているモンスターも多少強敵ではあるものの勝てないレベルではないみたい。


 というわけで、地図を見ながら鋼鉄の谷の入口まで行ってみる。

 だいぶ毒蝶森林まで近くなってきた辺りに入口はあって、そこには一人の兵士が立っていた。



「ここを通るのかい? 一応忠告はしておくが、まあ冒険者なら森を突っ切るよりは余程安全だしな。さあ、降りるなら昇降機を動かすから乗ってくれ」



 裂け目には木と鉄で組まれたやぐらのような建造物がある。

 スペースがそこまで大きくないので一旦みんなを休眠状態にしてから中に入り、レバーを操作すると扉が閉まって、昇降機は私たちを乗せてゆっくりと谷底へ降りて行った。



「お、落ちないかなこれ……」


「二人なら大丈夫じゃない? みんな一緒に乗せてたらちょっと危なかったかも」


「それは確かに……」



 話しているうちに昇降機は谷底について、自動で扉が開いた。

 昇降機から降りて上を見上げてみると、上の方は霧がかかったように霞んでいてよく見えない。



「な、なんか思ったよりも深いところまで来てるみたい」


『明かりはあるんだな』

『壁に松明があるからそれだね』

『サクには乗らないの?』


「あ、えっと、騎乗状態から元に戻るのにちょっと時間がかかるので……ダンジョンの中だと障害物も多くてそこまで速く動けませんし」



 フィールドエリアを移動するときは凄く便利だけど、ダンジョンだとあまり活かせない感じ。

 そもそもダンジョンだと敵と戦うことも多いし、サクには高火力近接アタッカーとして戦ってもらいたいし。


 さて、少し進んで曲がり角みたいになっているところまで来たところで、私たちはランタンを掲げた何かとばったり出くわした。

 それは人型で、子供ぐらいの大きさをしていて……皮膚が浅黒い緑色をしている。



[スカウターゴブリン Lv.18]



 スカウターゴブリン……斥候って感じかな。ランタンを掲げているのは一体だけだけど、その後ろに同じのが二体いるみたい。



「っ……全部で三体!」


「了解! 《戦術指南(タクティクス)攻撃策(オフェンス)》」



 リーナの攻撃バフが全員に付与されたのと同時に、先頭のゴブリンがランタンを投げ捨てて懐からナイフを取り出す。

 その傍にいた一匹も同様にナイフを構えて、少し後ろを歩いていた一匹は弓を構えた。


 思ったよりも連携が取れてる……けど、連携ならこっちも負けてない。

 命令付与のウインドウを開いてアルル以外の三匹にささっと指示を出す。

 コマンドの位置とかをしっかり覚えておいたので、その甲斐あってすぐに指示を出すことが出来た。



「アルル、《銀炎》!」


「キュイ――!」



 アルルが大きく息を吸い込んで銀色の炎を放つ。レベルアップするにしたがって《銀炎》は火球を飛ばす攻撃からブレスを吐くような攻撃に変化してきていて、今放った《銀炎》は狭い路を埋め尽くすように突き進んでいった。



「グギェ!!」

「ゴァッ!」



 炎はナイフを構えた二体に直撃し、余波が後方の一匹にダメージを与えた。

 そこに畳みかけるようにサクと攻撃モードのアリスがそれぞれ前方の二体を攻撃する。


 アリスは《皮貫き》でゴブリンを貫き、更にアルルの追い打ちが炸裂して一体を撃破。

 同時にサクは《クレセントスクラッチ》でもう一体のゴブリンを切り裂く。サクの爪の軌跡に沿って白い光が三日月のように輝いて、吹きとばされた一匹はそのまま動かなくなった。


 最後の一匹はスキル発動後のサクの硬直を狙って弓を引き絞るけど……矢を放つ寸前、カイルが上空から放った《鎌鼬》が直撃する。

 その一撃でスカウターゴブリンは弓を取り落とし、もう一発の《鎌鼬》とサクの通常攻撃を食らってそのまま消滅したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ランキングが気になるのは分かるのですが、面白かった分そこに執着されてるのが少し残念です……
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