ジャッカロープ
アリスって入力するとスマホの予測変換がアルルに変えようとしてくる……そしてその逆もある。
どうしようもなさそうなので投稿前に名前をめちゃくちゃ確認することにします。
結構勢いのある変化に驚きつつ、早速ステータスを見てみる。
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固有名:アリス
種族名:ジャッカロープ(♀)
レベル:19
HP:52
MP:72
STR:15%
VIT:10%
DEX:15%
AGI:30%
INT:35%
MND:20%
スキル
《ミルキーヒール》
《ヒーリングレイン》
《パナシーア》
《形態変化》
【野駆け】
信頼度:78
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「あ、思ったよりも結構変わってる……」
数値の合計は変わってないけど、STRが一気に下がった代わりにINTとMNDが上がってる感じかな。
何気にHPとMPも変化してる。
それと、ステータスだけではなくスキルの方も変化しているので細かく見てみる。
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《ミルキーヒール》
単体を対象とした回復魔法
消費MP10
《ヒーリングレイン》
一定範囲に徐々にHPが回復していくフィールドを展開する。
消費MP25
《パナシーア》
弱体効果を一つ解除する魔法。
消費MP15
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回復役!
何度も連続して変化させられないとはいえ、うちのパーティの回復手段はリーナの応急処置しかなかったので、これはすごく助かる。
正直、これ以降のどこかで回復持ちのモンスターがいたら捕まえようと思ってたぐらいだし。
なるほど……これはちょっと幅が広がる感じで良いかも。
『モンスターとして出てくる時もこんな感じなん?』
『まあ大体こんな感じ』
『攻撃役と回復役に分かれてる感じ』
『形態変化は使い魔固有なんじゃないかな』
『そういえば他の子の進化条件ってどんな感じなんだろう』
「えっと、他の子は……」
ウィンドウを操作して他の三匹の進化条件を確認してみる。
えっと……カイルとサクの進化条件はどちらもアリスと同じようにレベルが関係しているみたい。
カイルは21で進化で、サクは25で進化。まだ時間がかかりそう。
……という風に、【進化の儀法】を習得した状態だとステータス画面から進化条件を見ることができるようになる。
で、アルルも進化条件が表示されるところまでは行くんだけど……
――――
ドラコ・アルゲントゥム・プリムス
精神的な繋がりが成長を促す
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「なんか抽象的……」
『どういうこと?』
『進化するとかでもなく成長を促すなのか』
『謎だらけだな』
『一応最初の使い魔は信頼度が進化に影響する。ただアルルは普通の手段で手に入れてなさそうだから違うかも』
「あ、アルルはもう信頼度100なんですよね……だから多分、他の条件がある感じです」
いずれわかるって感じなのかな……と考えているうちにリーナの方のクエストが終わったらしい。
とりあえず今いる場所を連絡しておいて、私はリーナが来るのを待つことにした。
――――――
「お待たせ〜! ごめんっ、なんか思ってたよりも長引いちゃった」
「ううん、気にしないで。ちょうどアリスの進化もしたかったし、タイミング的にはぴったりだったから」
もふもふ感の増したアリスを持ち上げながらそう言う。
「ちなみに、どういうクエストだったの……?」
「んー、説明しにくいんだけど、なんか異世界の戦場の記憶と戦うみたいな感じだった! 最終的に範囲バフの効果量が上がるパッシブスキル貰えたし、やってよかったって感じだね」
「異世界……そ、そういう感じだったんだ。私の方はギルドマスターと会話しただけだったなぁ」
思ったよりもすごいことをやってたみたい。
……と、ここでギルドマスターに言われたことを思い出した。
「そういえば、私の方はヴェスティアを目指せって言われたんだけど……」
「あ、それ私も言われた! 偶然なのかな?」
「そうなの?」
『ヴェスティアは一番でかい都市だしな』
『普通職でも基本ヴェスティア目指すし特殊職でもそこは変わらないって感じ?』
「なるほどね! ……あ、というか合流したし配信は切っちゃうね」
分割配信が終了して、コメントが一つに統合された。
「じゃあ次の目的地はヴェスティアかな! ワールドマップだと……ちょっと遠いからすぐには着かなそうだけど。でも途中に街もあるし多分大丈夫!」
ここからヴェスティアまで行こうとすると、途中に入らないといけないエリアがいくつかある。
ルート的に最低でも二つ……いや、三つは入らないとだめそう。
どのエリアを攻略するかはコメントの反応とかを見つつ、なるべく簡単なところを選べたら良いな。
「じゃあ、次の目標はヴェスティアで。サク、お願いしても良い?」
「ガウッ」
サクの身体がひと回り大きくなって、私たちはその背中に腰掛ける。
サクは確かめるように数歩歩いて、それから次のエリアへと走り出したのだった。




