キャラメイク
ヘッドギアの初期設定やゲーム配信のアカウント設定などを莉奈にやってもらって、せっかくだからこのまま莉奈の家で一回ゲームを遊んでみることにした。
莉奈が用意してくれたゲームは『セイクリッドクロニクルオンライン』というゲームで、MMORPGというジャンルのゲームらしい。
MMOはよくわからないけど、RPGは結構やるし好きなジャンルなので楽しみ。
「よし、準備できたよ! さあさあ早速遊ぼう! ベッドに横になっていいよ~」
「お、お邪魔します……」
頭にヘッドギアを装着して、ベッドに横になる。
莉奈が後からすごく密着した状態で横に寝っ転がって来た。これ絶対私じゃまになってるよね……でもどうしようもないので心の中で謝りながらヘッドギアを操作する。
「準備できたよ……!」
「じゃあ、もうフレンド登録までやってあるからキャラメイク終わったら連絡してね!」
「うん……!」
こうして私はセイクリッドクロニクルオンライン――通称セイクロの世界にログインしたのだった。
――――
「ようこそ、旅人様。目が覚めたようですね」
気が付くと、私はゲームの世界にいた。
初めてのフルダイブなので少し新鮮な感じで周囲を見回すと、自分が今神殿のような場所にいることが分かった。
目の前に浮かんでいるランタンみたいなものが声の主らしいので、少し聞いてみる。
「えっと、ここは……」
「ここは狭間の世界。貴女様がこれから活動するための肉体を形作る場所です。まずはお名前をうかがっても?」
名前……当然だけど実名はヤバい。なにかあったときに自宅まで特定されてしまうから。
とはいえ変に穿った名前も将来的にヤバい……というか変な名前にしてしまったら莉奈に愛想をつかされてしまうかもしれない。そうなったら私の人生は詰みなので、ここは無難な感じで……
「えっと、『エネ』です……」
「エネ様ですね。かしこまりました。では、早速肉体を作っていきましょうか。デフォルトのモデルを使う方法と現実の肉体をもとに作る方法の二つがございますが、どうされますか?」
名前を付けるときと完全に同じ迷い方をしたのち、リアルの身体にちょっとだけ変化を加えるくらいが無難かな……と結論づけた。
目の前に私の身体が表示される。ちゃんと服を着ている状態で安心した。なんかファンタジーな服を着ているだけで少し普段の私とは別人に見えるので、意外とそのまま使っても身バレとかは平気なのかもしれない。
とは言え念には念をということで、髪の毛は紫色にして、目の色は青色にする。うん、色を変えるだけで一気に別人っぽくなった。
他は変えてしまうと自分のコンプレックスはここですと人に言ってるような感じになってしまうのではないかって思ってしまって変える勇気を出せなかったので、これで行く。
「こ、これでお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください……はい、登録が完了いたしました。少々視界がブレますのでご注意ください」
一瞬視界が揺れて、すぐに元に戻る。
さっき作ったアバターが適用されたようで、私の髪の毛は綺麗な紫色になっていた。自分では見れないけどきっと瞳も青色になっているはず。
「これで肉体形成は終わりなのですが、ここから魂の再定義に移らせていただきます。分かりやすく言えば適職診断ですね」
「適職診断……」
まだ見ぬ就職への恐怖に背筋が震える。ゲームなので大丈夫だと思うけど……。
「そう身構えずとも、あなたの適性を見るだけですから。場所を変えさせていただきますが、よろしいですね?」
「は、はい……」
ゆっくりと視界が暗転して、私はさっきとは違う空間に転移した。




