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ざまぁをしたら、ざまぁ返しされる事がわかっているのでどうにかして回避したい!地下牢に行きたくない王子の話。シリーズ

婚約破棄をやらかした王子様の新しい婚約者は私だそうです。私、実家の後継者争いに名乗りをあげたはずなんですが?

「ざまぁをしたら、ざまぁ返しされる事がわかっているのでどうにかして回避したい!地下牢に行きたくない王子の話」

こちらを読んでから、お読みいただくとより楽しめると思います。


もちろん、このお話だけ読んでも楽しめるように書いたつもりです。


このお話は続編で、婚約破棄をやらかしたガルフォード殿下の婚約者になってしまうリブラント嬢のお話です。



感想で、リブラントの視点も見てみたいといただいたので書いてみました。


ご希望に添えたかどうか…

頑張って書きました。


辻褄合わせをしたつもりですが…

違ってたら見逃してください。


そして、


「婚約破棄騒動で婚約者がいなくなってしまったご令嬢。誰かすぐにでも結婚してくれませんか?」


ってお話も投稿してあります。こちらはダミアンの元婚約者のお話です。


もう一つ、


「ある侍従が婚約破棄をやらかした主人に対して思う事。」

というお話も書いています。


あわせて読んでいただけると嬉しいです。



辺境伯って田舎者だと思っている貴族が多い。


「領地が王都から離れていると大変ですわね!」

とか

「今の流行が領地まで届くのに時間がかかるのではなくて?わたくしには耐えられませんわ」

とか。


田舎者だね、と遠回しに言ってるのがわかるわ。


そう。

みんな辺境伯って王都から遠い田舎者だと思っている。侮るなかれ。


海に面した領地は数あれど、我がウオルコード領は、運河から続くブリーク湾までが領地。


湾を出てたら、大きな海洋に続く。


ブリーク湾には運河を通ってくる交易船と、海洋から大きな湾に入ってくる沢山の船が航行しており、大半の船が物資補給場所としてこのブリーク湾を選んでいる。

それは我がウオルコード家が海軍を持ち、湾内を航行して海賊が来ないようにしているからだ。


だから、港は常に沢山の船で賑わい、補給物資である日用品や食料品は、沢山売れる。


それだけ船が来るので、交易も盛んで、各商会の倉庫が港に並び、買付部門の商人が常駐している。

倉庫街は囲いを作り、盗難防止のため人の出入りの監視を行なっている。


たから、警備はバッチリ。


ウオルコード家の領地は辺境伯というだけあって、王都から離れている上に、他国と国境を接した領地のため、独自の騎士団と軍隊を置いている。


ブリーク湾の交易に目をつけた馬鹿な国が、たまに戦争を仕掛けてくる。

そんなおバカな国のために陛下が国防軍や魔道士を常駐させていて、国境の警備は完璧だからすぐに制圧してしまうんだけど、10年に一度くらいやってくる。


そのうちこっちから攻めてやろうかな、なんてお父様は笑ってたけど、あの国は別にいらなないからなーなんて言ってた。



国防軍がいて安全、交易で物資は売れる、輸出入は盛ん、倉庫街があって税収も潤沢。



辺境伯ってサイコーよ!


できるなら私が跡を継ぎたいのに!


私、リブラント・ウオルコードは後継になりたくて名乗りを上げたけど、我が家は実力主義。


従兄弟を含めた全ての中から、一族会議で指名される。

…兄達は皆、私よりも優秀。



私は、私のできることから始める事にしたの。

だから、王都の学園に入学する時に、商会を立ち上げた。私の名前からリブラ商会。

学園の長期休暇の時は領地に戻って買付をして、王都に行く時に荷物を運ぶの。


どうせ、在学中は何度も往復するんだからついでだもの。



私は、小さい頃から港に行って見たことない品物を眺めるのが好きだった。品物を眺めては、船員に質問をするので、10ヶ国語くらいは話せる。

貴族の格好をしていると不審がられるので、補給物資のお店の店員として船に近づく。

このお店は、叔父が経営していて、趣味と実益を兼ねて手伝っていた。

叔父だってもちろん貴族よ?

でも、ここは辺境。身分関係なく働くわ。



『こんにちはー。何か必要なものありませんかー?』

『景気はどう?』

『海賊は出なかったー?』

『何か新しいものありますかー?』

『これ何?』

『どうやって使うの?』

『これいくら?』

『もうちょっとまけてよ』

『まいどありー』 


これだけなら、15ヶ国語くらいは話せる。

相手が話している日常会話がだいたい全部わかるのは7カ国。半分くらいなら3カ国。カタコトなのが5カ国。


色々な言葉を話せるけど、それは貴族の外国語ではなく、庶民の言葉だから…。


学園で習う隣国のオパードラ語と、アルダリア帝国の言葉アルダリア語しか貴族の言葉としては勉強していない。


オパードラ国は陸続きで、海を使っての交易はしていないから、学園に入ってから初めて勉強した。


アルダリア語は庶民の言葉なら簡単な日常会話ができるが、貴族の言葉は初めて聞くので、頑張って覚えている。

でも外国語の時間は、読み書きも大切。

読み書きは苦手。

だって、会話はできても読めるかと言われたら、それは別問題。


だから、学園の外国語の授業は苦戦した。


これも、庶民の手紙や買付希望書、スラングなら多少読めるのに…。


船員のおじさん達が、国にいる奥様に宛てて書く手紙を

『嬢ちゃん、教えて欲しいんだがよ、うちのカミさん、手紙になんて書いたら喜ぶかな?』

っていいながら、うちの商会の店先で手紙を書くのを見ている。だから、庶民の手紙は読める。


でも学園で習うことは、同じ単語でもかなり使い方が違うから混乱するわ…。



今日は、テストが近いから苦手な外国語の調べ物を学園の図書館でしていた。


奥の席ではいつもの通り、ガルフォード第一王子、クララ・ポールセン男爵令嬢と、お取巻きの頭の緩い四人組「ユル4」と共に勉強もせずに、卒業旅行の計画を立てている。


あー。またあの「女豹と5人の金持」がイチャイチャしてる。面倒だなぁ。

あの周りの本を取りに行こうとしたら、「覗いている」とか言われて「不敬だ」とかってカツアゲされそうになるしなぁ。


アイツら金持ちのはずなのに…



…あのバカ王子とユル4…つまりは「5人の金持」、家庭教師を雇って入学前に一通りの勉強を詰め込んだらしいから、成績は悪くない。

ただ素行が悪いだけで…。


このバカ王子様にもユル4にも婚約者がいる。

どの婚約者も美人で、性格も良くて、大変尊敬できるご令嬢だ。

出来の悪い子ほどかわいいって言うから、このバカ王子達の婚約者もあたたかく、生温く見守っているんだろうか…。

私は見守れないけどなぁ。

ほんと、私に婚約者がいなくてよかった!


他の女にうつつを抜かす上に、みんなでおんなじ女の子を取り囲んで、『蝶よ花よ』と。

取り囲まれている方も、気があるように見せて、一定の距離から近づかない。

あの態度は、故郷にたくさんいる船員向けの夜のオネエサンの態度だ。

巻き上げるだけ巻き上げられるよ?




あっ、頭の中が庶民モード。

こんな日はどんなに勉強しても入らないので帰ることにした。


中庭を通って正門に向かおうとすると、中庭の東屋の側にノートが落ちているのが見えた。


テストが近いのに…落とした人は困っているだろうな、と思って拾うと


『俺語録』

と綺麗な字で書いてある。

…見てはいけないと知りながらものぞいてしまった。


中身は5ヶ国語のようだ。


あっ!語学勉強用のノート?

と思いながらページを捲る。


『アルダリア語』とタイトルの下に


『これを買う』

『最高級のワインをくれ』

『俺を誰だと思っている』 

『俺のいうことが聞けないのか』

『お前はクビだ』

『不敬だぞ!』

『そんなに言うなら金で解決しろ。いくらよこすんだ?』

『まさかできないとは言わないよな?』

『お前は一晩いくらだ』

『お前の顔は見たくない!』

『お前の言いたいことはそれだけか?』

『支払いは俺ではなくこいつだ』




…スラングだ。

しかも、最低のタイプの…。


他のページを捲る。


ファインロゼ公国語のスラング

マッケイン語のスラング

グワノス語のスラング

多分、オパードラ語のスラング


…全部スラング!



これってもしかして…?

多分、あのバカ王子のものだ。

こんな言葉、外交の場で使ったら、国賓として品位が落ちるでしょ!

しかも、他国の王城のメイドでも買う気? 

どんだけ煩悩で生きてるのよ?


…バカ王子、改め、煩悩様。


煩悩様の持ち物を捨てようかと思ったが、捨てたのが私だとバレると面倒なので、とりあえずカバンに仕舞った。



次の日、私はクラスメイトとお茶をしようと学園内にできたばかりのパーラーにいた。


校内の2階にあるパーラーは、高位貴族専用で、内装がシック。 

私たちが座ったボックス席は、座り心地がよく、パーテーションで仕切られているので、他の生徒の視線を気にせずに話せる。


楽しくおしゃべりをしていると入り口が騒がしくなってきた。


どうも、煩悩様はユル4と女豹を連れパーラーにやってきたようだ。

なんだか揉めている。


どうしたんだろうか?

そう思っていると、パーテーションの向こうから煩悩様が覗いて 

「ここは私たちが使う。お前たちは、違う席に移動してくれ」


なんて横暴な!


煩悩様に逆らうと、カツアゲをされる。

相手が女子生徒だと、女豹への貢物を要求される。

バカらしいので無言で席を空け渡した。


パーテーションの外に出る時に、グワノス語のスラングを少し大きめな声で言った。


『最高級のワインをくれ!』

もちろん低い声で。


パーラーの店員さんはグワノス語がわかったようだ!

しかもスラングなのに!!

煩悩様とユル4と女豹の分のグラスワインを持ってきた。


私は店員さんを見て、そしてユル4の最後尾にいた騎士団長の息子ブレイブ様を見て、

『支払いは俺でなくてこいつだ』

と言って外に出た。



放課後、いつものように図書館に行くと、女豹と5人の金持がいた。

皆、今日のパーラーでの出来事を話している。


「はじめに座っていた女子生徒が出て行く時、聞いたことない言葉を喋っていたよな」

と煩悩様。


「あれは多分、グワノス語ですね。内容はわかりませんでした」

と宰相の息子のマリウス様。


「あの後、なぜかワインが人数分出てきて、お会計が6万タジーだったよ!

しかも何故だか、会計伝票を持ってきた店員は俺の前に置くんだ」

ブレイブ様。


「6万タジーは高すぎる!ディナー代金よりも一杯のワインの方が高いだなんて!」

とグリーグ公爵家のバリィ様。


「全く、あのカフェはもう利用しないでおきましょう。結局、殿下がお支払いしてくださいましたが…」

と教皇の息子のダミアン様。


いやいやいや。

煩悩様が落とした『俺語録』の中に書いてあったグワノス語のスラングだよ。

煩悩様は自分で書いたのに聞いたことない言葉なんて言っているし。

まさか覚える前に落としたの??


でも『俺語録』は使える。

私は早速煩悩様のアイデアを頂く事にした。


私が作ったのは『天使語録』

1日に1ページずつ読む、女の子向けの絵本。

『笑顔を絶やさないでおこう!それだけであなたは誰よりも可愛い』とか、毎日天使が褒めてくれる絵本。

これを私が立ち上げた商会である「リブラ商会」で作って販売したら大流行り。

内容はありきたりなんだけど『語録』っていうのが良かったみたい!


しばらくしてから、「『俺語録』がない!」って大騒ぎしている煩悩様を見かけたけど、返すタイミングを逃してしまったので私がまだもっている。

ごめんなさい、煩悩様。



ああ…私は煩悩様に足を向けて寝れないわ。

大儲けさせてもらったから。



またある日の事。

私は自分のお店であるリブラ商会でお客様に紛れて商品を眺めていたら、『女豹と5人の金持』がやってきた。

私のお店、リブラ商会は、女の子のためのお店なので、若い女の子で賑わっている。


女豹は貴族の女の子でも普段使いするにはちょっと高価な宝石のペンダントトップを見ている。


「可愛い!このサファイア!でも…こっちのピンクサファイアも捨てがたいし、ダイヤモンドもいいなぁ」


次々と目移りして行く女豹様。

女豹様は本日はお客様ですから!

女豹様、何か買ってください!

そう願っていると、女豹様は全員の顔を見て言った。


「皆様からの、お・と・も・だ・ち・の証をください」

可愛いポーズを取る女豹様に5人はメロメロ。


サファイア、ピンクサファイア、ダイヤモンド、エメラルド、真珠。

一人が一個ずつお買い上げ。


全てをペンダントにつけると下品だけど、女豹様は5つの宝石を1つのブレスレットに全部つけて帰って行った。


5つの宝石がキラキラ揺れて可愛いブレスレット!

あのアイディアすごい!


それを見た私は、庶民向けに純度の低い宝石や、貴族向けに普通の宝石、それから、ゴールド、シルバーなど色々な素材や形、デザインを用意して、自分でブレスレットをカスタマイズできるようにした。

10代後半から20代の女性向け。

庶民でも頑張れば買えるような値段設定にして子供向けではない価格設定にした。

庶民なら10代後半だと、もう働いているからね。

そしたら、連日、大行列!

ちょっと高級路線でのカスタマイズ商品がなかったので流行ったみたい。



そうやって日々過ごしていると、あっという間に卒業の時期がやってきた。




卒業が一週間後に迫っていが私は考え事をするために、一人でカフェにいた。


そんな時、偶然、煩悩様と女豹とユル4がイチャイチャしているところに遭遇した。


私の角度から、6人がバッチリ見える。


「ねぇ。ガルフォード様ぁ。お父様は、婚約者ではない異性との旅行は行ってはダメだって言いました。」

女豹は煩悩様の手を握って、首を傾げた。


「でも、お父様は結婚を約束した者がご令嬢を旅行に誘うんだって言ってました。って事は、ガルフォード様の遠回しのプロポーズだったんですかぁ?」

と女豹は目を潤ませている。


「そう。私はクララとずっと居たいと思っている。」

と煩悩様。

目線は女豹の巨乳に釘付け。


「でも、ガルフォード様には確か婚約者が…。お父様はいくら王族といえども可愛い娘を側室にしたくないって言いますの。正室でないと嫁がせないって。

嫁がせない相手との旅行も許可できないって言いますの。だって、

旅行先で何かあったら、赤ちゃんが授かるかもしれませんもの…」

顔を赤らめる女豹。


「婚約していたら、寝室は同じでもいいですけどぉ…」

女豹は煩悩様をチラッと見た。


「結婚しようクララ。私はクララしか正室には考えられない。もちろん、初夜は卒業旅行中に…すませてしまおう。」

と煩悩様。

あーあ。巨乳しか見ていない。


「でも、ガルフォード様の婚約者は、あの意地悪なローズ様…。」

と涙目の女豹。


「私が卒業式で、皆に周知する!」

と煩悩様。

ユル4も、煩悩様の意見について賛同している。

本当に頭の中、ゆるいのかしら?

しかも、ユル4は「貴女は私の婚約者よりも素敵だ」なんて口々に愛の告白をしている。

みんなで1人の女の子を共有するつもりなのかしら?


私はその場を見なかった事にして通り過ぎた。




そして卒業式、婚約破棄騒動は起きた!

面倒だから、ビュッフェに行こうとしたら、

関わり合いになりたくなかったのに、あろう事か、婚約破棄騒動の今まさに真っ只中の煩悩様から指名された。


「ローズ嬢の言い分はわかった。

ところで、もしも、排除したいご令嬢がいるときは君ならどうする?リブラント嬢?」


何故わたしに話を振るの?

今は婚約破棄を言い渡したローズ様に話を聞いていたはずなのに!

しかも、なんで私の名前と顔が一致しているの?

煩悩様とクラスは違うし、接点もないはず!



「殿下、私なら、そんなくだらない嫌がらせなど致しませんわ。

もしも私がローズ様の立場なら、ポールセン嬢と仲良くして、お妃教育を一緒に受けさせますわ」


と、私は答えた。

あの女豹はプロの夜のお仕事のオネエサン。

男をあしらうのは上手いけど、頭は良くないよね。


「なぜ排除したいのに仲良くするのだ?」


そんな、女豹がバカである証明を聞きたい?

私は冷めた目で煩悩様を見る。


「ローズ様はいつも学年2位の成績です。それに対してポールセン嬢は…何位ですか?少なくとも100位以内でお名前はお見かけしていません。 

そんな方が、5ヶ国語の教育や、周辺国の政治情勢、各国の高位貴族のお名前など覚えられるはずありませんから…。

自分から脱落していただくために敢えて、一緒にお妃教育を受けますわ」


あの尊敬すべきローズ様の凄さをわからない煩悩様はいずれ女豹に身包み剥がされて、気がついたら王城を乗っ取られますよ?

ほんと。なんで気づかないかな?


自分の成績を持ち出されたクララ嬢はワナワナと震えている。


「わたくしは、できる事からしておりますわ。放課後、ガルフォード様に勉強を習ったり、マナーを教えていただくためにディナーに連れて行っていただいたり」


とクララ嬢は泣くそぶりを見せながら言い訳をする


「そうだ、私たちもクララ嬢のそういう熱心なところを少しでも手伝いたいと思い手を貸している。」


騎士団長の息子で公爵家の嫡男であるブレイブは胸を張って言った。

君は女豹に貢ぐ事しかできないもんね。

かわいそうに。

港のオネエサンに相手にされないのに、それでも貢ぐ空気読めない客みたい。


「ブレイブ様ぁ」

女豹は甘い声を出した。

女豹様、ここまで来るとやりすぎじゃない?


「…では、どなたかがポールセン男爵令嬢に、婚約者のいる男性5人を側に置いてはいけませんと教えて差し上げたのかしら?

それに5人もの高位貴族の方に勉強を教えていただいて、誰の記憶にも残らない成績なんてありえませんわよね」


ローズ様の気持ちを考えたらね。

かわいそうにさっきから泣きそうじゃない!

いい加減、この茶番をやめたら?


「高位貴族の方5名にマナーや勉強を教わっているならもっと結果を残さないと、教えてくださった皆様の顔に泥を塗る事になってしまいますわ。

しかも、私がなぜこんなに親切に色々と教えて差し上げないといけないのですか?

本来ならポールセン嬢の周りにいる皆様が言うことではないのですか?」


ユル4よ!君たちの親は、国の重鎮なんだよ。

ダメな事はダメだと進言できないと。

それをなんで私が教えないといけないわけ?


「今は、ローズ嬢がクララ嬢へどんな卑劣な嫌がらせをしており、ローズ嬢が殿下の婚約者として相応しくないかと言う話をしている!

ここでクララ嬢の成績うんぬんは関係ない!」 


宰相の息子のマリウス様は、そう言った。

面倒。



「ここにいる生徒は、こんな茶番を見せられて卒業パーティーを台無しにされたと感じているであろう。

こんな方法しか思いつかなかった私を許して欲しい」


と煩悩様は言った。

ほんと茶番。わかっているなら、その壇上から降りればいいのに。


「衛兵こちらへ!」


クララ嬢をマリウス様のに譲って、煩悩様は衛兵に耳打ちする。


何をしているのかわからないけれど、煩悩様が話しかけた衛兵は一旦どこかへ行き、そしてすぐに戻ってきた。

衛兵と煩悩様はなにやら話した後、衛兵は壁際に戻った。


煩悩様はまた大きな声で話し出した。

まだ続けるつもりらしい。


「私は今まで、婚約者としてお妃教育をきちんと行ってきたローズ嬢に対して敬意を持って接していなかった。

それは、今回の婚約が白紙になれば良いと思っていたからだ。」


とうとうローズ様は泣き出した。

慰めたいけど、私はローズ様と話したことないしなぁ…。


「私が今まで見てきた世界の中で、学園生活は平和な世界だ。

言葉の裏側を探ったり、相手の行動を読んで次の一手を決めなくてもいいからだ。」


そうよね。煩悩様は女豹の胸ばかり見ていたよね。


「そんなことはない。言葉の裏や行動の裏を読んで行動していると思っているかもしれない。

学園の中での出来事は、あくまで学園の中。失敗してもやり直せる。

しかし、外交はやり直せない。

一つの失敗で、もしかしたら翌日、戦争になるかもしれない。宣戦布告されるかもしれない。」


あれ?煩悩様、もしかして、わかってる?

外交がなんたるかを理解して『俺語録』を作ったの?

ほんとに?


「腹の探り合いの世界の中で、ローズ嬢は正直すぎる。

裏がないのだ。

そのような純粋な女性に王妃は務まらない。

だから、婚約を解消する。

ローズ嬢には、その純粋なところを無くさなくても添い遂げられるような素晴らしい男性をこちらで探す」


いやいやいや。

煩悩様、先週、あなたは女豹にプロポーズしてましたよね?女豹も王妃は無理かと思うよ?


「ローズ嬢は、王家に次ぐグリーグ公爵家だ。

私から冷遇されていようが、ローズ嬢の立場は変わらない。

そんなローズ嬢を庇うご令嬢はなぜいないのだ?

普段、ローズ嬢と学園の中で行動を共にしている伯爵家や公爵家のご令嬢達はなぜ誰も庇わないのだ?」


ローズ嬢の取り巻きは確かにひどい。

派閥とか家のつながりとか、色々あるのはわかるけど…。でも煩悩様、気づいていたの?

どうやって…。

私のことも知っていたし。


「誰も無言か?

それなら、可哀想だがローズ嬢には心からの友人がいなかったという事だ。

ローズ嬢よ、今から新たに友達を作るといい」


煩悩様、貴女を長い間、煩悩様と心の中で呼んでいたけど、本当はかなりキレものなのかしら。

そして、煩悩様、ローズ様の友達の事や、あの可愛らしい性格では外交で失敗すると思っていたなんて…。

もしかして、ローズ様のこと結構好きだったの?


「それは私にも言える事だ。

私を含めここにいる男子学生は、婚約者を顧みず、クララ嬢のローズ嬢に対する不敬な態度を戒めたり、クララ嬢の言い分の事実確認をしてこなかった。

私も含め、ここには将来、国の中核を担う貴族の令息しかいない。

クララ嬢に対しての態度、ローズ嬢に対しての態度を見て、皆はどう思っただろうか?

平等や公平、誠実といった精神のない人間に国政を任せたい民や家族がいるだろうか?」


女豹の態度が悪い事や、自分たちの横柄な態度に対して、他の生徒がどう思うか見てたの?

なんのために…


「一人もいない。私たちは失格なのだ。

いくら学園生活、やり直しのきく場であろうが、これは無理だ。

よって、この者たちは、今後国政には関わることはない。

この者たちの長である私も含めてだ。」


将来、国を担うべき立場の者達を試していたの???

バカを演じて???

すごい!そうよね。王の椅子を手にしても、周りがダメだと国は立ち行かない。

だから後継者争いの敗北を認めたのね。

煩悩様って呼んでて申し訳ありませんでした。

いまから、ちゃんと心の中でも第一王子と呼びます。



そして第一王子はクララ嬢の手を取った。

…衛兵にクララ嬢を渡す。


「クララ嬢を連れて行け!場所は聴取室だ。

罪状は、公爵令嬢であるローズ嬢に対しての不敬罪だ。そのほかに、父親と示し合わせて、人身売買に強請りなど、罪状は多数ある!絶対逃すな!」


女豹は数人の衛兵に囲まれて罪人の縄をかけられた。


「わ、私、なんのことかわからないわ!たすけて!」


私も含め、大勢の生徒は何が起きたかわからない。

皆、動けずにいた。


「まて!そんな乱暴に連れて行くな!」

まだわかっていないユル4。

それを第一王子は抑えている。


「お前達は、見た目で騙されている。

聡明なご令嬢は、婚約者のいる男子学生には近づかない。

お前達に近づいて、手を握ったりしている時点で聡明さのカケラもない」


やはり、第一王子はわかっていたんだ…


「皆の大切な卒業パーティーを台無しにしてすまなかった。

私は今から陛下に報告のため退出する。

学園長のお許しが出れば、明日、再度パーティーをやり直そう。

本当にすまなかった」


と第一王子は言うと護衛を伴ってホールを出て行った。

後に残されたユル4は何が起きたかわからない様子で、壇上にいた。

と、それぞれの侍従がやってきて、すごい速さで連れて帰られた。


ローズ様や、ユル4の婚約者であるご令嬢達もすぐに帰って行った。

だって、第一王子が、ユル4を国政に携らせないって言ったもの。

何もしてないのに更迭…。

これは結婚できないわよね。


そして、ローズ様の取り巻きだったご令嬢も帰って行った。第一王子から批判されたからね。


で、後に残ったのは無関係な貴族の生徒。

みんな、この状況が理解出来ずにポカンとしている。


でも少しずつ、みんなでつじつま合わせをした。

一応、私達貴族は派閥はあれど、これから長い付き合いになる。

問題はみんなで解決しようじゃないかとなった。


「第一王子ってバカなフリだったの?」

「いやいやアレは本物でしょ」

「素行が悪いのも、横柄なのも演技で、側近候補達を試していたの?イヤーないでしょう」

「ずっと前に、俺カツアゲされたぞ?」

「俺もされた!あれは演技じゃないよな?」

バカで横暴なエピソードしかない。

「でも、顔は素敵なのよね?」

「そうよね、顔はね」


みんなで、今日の状況を整理した。

その結果、


「第一王子による『グリーグ公爵令嬢に対しての婚約破棄』を卒業パーティーで行った前代未聞の行為は、クララ・ポールセン嬢の身柄拘束を目的としたものであり、油断したポールセン男爵令嬢は王子の思惑通り身柄拘束に成功し、取り巻き貴族4人を出世街道からの梯子外しを行って完了したという前代未聞の出未聞で歴史にのるべき出来事だ」

と全員で結論付けた。


みんな興奮しているから訳の分からない文章になっているが…。


新聞社の令息が、

「明日、新聞に載せる」

と意気込んでいた。



が。


翌日の新聞には何もならなかった。

やり直しの卒業パーティーは厳重な警備のもとで行われた。

犯罪組織からの報復を防ぐためらしい。

犯罪組織からしたら、本日のパーティーに第一王子が来ないのは知らないからか…なるほど。

報復を心配している段階ではまだ新聞には載せられないよね…。


ユル4の婚約者達も参加していた。

ユル4は全員婚約解消になったみたいなので、皆、元婚約者かな?

ローズ様の義兄バリィ様の婚約者は留学中なので昨日も居なかったけど。


あ!教皇の令息のダミアン様の元婚約者であるナディア・ヤンテイラル様はもう新しい婚約者様と来ている!

ナディア様は俳優のように美しくて背の高い男性と一緒だった。見たことのないローブにいくつもの勲章が付いている。

あのローブの紋章はオパードラ国!


「ナディア様の新しい婚約者様はナディア様の事をずっと前からお慕いしていたんですって。」

「なんでも昨日、卒業式の様子を見ようとお忍びでやってきていたとか。」

「あまりにも美しい男性だから、昨日の夜市で沢山の女性から声をかけられたらしいけど、そうやってお断りしていたとか。うちのメイドも声をかけたらしいですわ…お恥ずかしい話。」

「今朝、ヤンテイラル商会で偶然再会して、そして婚約!」

「あー羨ましい。私も素敵な婚約者が欲しいわ」

クラスメイト達と話をしていたら、そう教えてくれた。



パーティーの最中も私はずっと悩んでいた。

卒業後に王都から領地に戻ると、リブラ商会のために王都と領地を往復しなければならない。

往来のたびに護衛を雇ったりする分だけの売り上げがまだない。

かと言って、このままここに居ても商品買付ができない…撤退するには惜しいくらいに売り上げがある。

ただ、買い付けも限界に来ていた。

直接仕入れをするには、仕入れ元の商会のトップである他国の貴族との交渉が必要だが、私はスラングしか話せないし、マナーも知らない。



そろそろ結論を出さないと…

そう思っていたら、ローズ様に話しかけられた。

「リブラント様。私、昨日のリブラント様とガルフォード殿下の会話を聞いて、考え方は1つではないんだと思いましたの。

リブラント様の考え方に感銘を受けました。 

だから…私とお友達になってくださらない?」


「喜んで!私のことはリブラントとお呼びください」


とここから、色々な話をした。

私達は、似たところが全くないけど、すごく意見が合ってたった1日で仲良しになった。



そして卒業パーティーのやり直しから一週間後。



あの事件が新聞に載った。


『ポールセン男爵家は、誘拐、人身売買や窃盗、など多数の犯罪を行う国際的犯罪組織の一員で、これがきっかけとなり、組織解体ができるだろう。

ポールセン男爵家は一族で犯罪に加担している疑いがあり、その犯罪をガルフォード第一王子が単独で探っていた。

ガルフォード殿下は、ポールセン男爵令嬢と婚約すると見せかけて油断させ、そこを衛兵に踏み込ませた。油断させるためにはローズ・グリーグ公爵令嬢との婚約破棄を大人数に認めさせる必要があり、グリーグ公爵令嬢の協力もあって逮捕に至った。』


あーあ。

ユル4は何もしていなかったのバレバレだ…

しかも、ローズ様は協力者になってる!

確かに、これならローズ様の名誉は守られる。

婚約破棄をされたご令嬢ではなく、犯罪摘発に協力した勇気あるご令嬢になる。 


父はこの事件をきっかけにガルフォード殿下への評価を上げた。

「何度も城に行った時にお会いしたけど、あの何も考えていない様子が全部演技だったとしたら末恐ろしい。これで、国王の椅子に大幅に近づいたな。」

父の評価はかなり高い。

今まで人を褒めた事ない父が!


「それに、リブラント。我が娘も辺境伯としての後継者争いに名乗りを挙げてから王都に行っただけあって、成長したな。

卒業パーティーでの第一王子とのやりとりを陛下も評価していたぞ。

それに、お前の起こしたリブラ商会も王都で順調に売り上げを伸ばしているそうじゃないか」


あろう事か、父は私をガルフォード殿下に嫁がせたいと陛下に言ってきたみたい。


えー。あの煩悩様が本当の性格そのものなら耐えられない。


一週間もしないうちに、煩悩様…とのお茶会があった。

私は『俺語録』をそこでお返しした。

初めのお茶会は『俺語録』に入れるスラングで盛り上がった。

側から見たら仲良く会話しているように見えるが、小さい声で、「『お前は一晩いくらだ』とかはちょっと抜いたほうが…」とか、どんなスラングだと相手を黙らせることができるかを教えて差し上げた。

ガルフォード様は笑いながら聞いてくれた。



その後も何回かお茶会が開かれた。

私とガルフォード殿下の会話は、まるで兄と話す時のような会話になるけど、かなり楽しい。

エスコートも優しくて、一緒にいても会話は尽きなかった。


本当に別人になってしまったみたい。



そして、私が正式な婚約者になった。



その後、婚約者としての他国のマナーや、5ヶ国語の読み書きの勉強が始まった!


私ってすごく運がいい!

だって、スラング以外の貴族としての会話をタダで学べる!それに読み書きも!

5ヶ国語の家庭教師をつけようと思ったら、大変なお金がかかるのに、お妃教育だから、お金はいらないのよ!!



そんな私とローズ様は今日もお茶会をする。

「お妃教育ってそのくらいの気持ちじゃないと辛くて続けられないかもしれませんわね。

各国のマナーに、言葉に、読み書き。

私、何度泣きながら帰ったかわかりませんわ」

ローズ様は笑って私の話を聞いてくれる。 


ローズ様は一人娘で、後継者としてローズ様の従兄弟であるバリィ様が養子に入ったらしいけど、バリィ様は生家に帰って、養子を解消したそうだ。

だって、このままだとローズ様が婿養子をもらって後を継ぐから。


資産の規模から行くと、新しい婚約者様とローズ様のご実家は同じくらいに見えるけど、ローズ様のおうちのグリーグ公爵家は海外にも多数別荘地があるみたいだから、他国の資産も合わせるとローズ様のおうちの方が、資産も知名度も上。 

初めは嫁ぐ予定だったけど、婿入りしてもらう事で決まりそうらしい。


「まだ正式ではないから、内緒の話ですわ」

とローズ様。


今のローズ様の新しい婚約者は第一王子の従兄弟。

これまた美しい顔立ちの優しい御令息で、毎日ローズ様にお手紙をくれて、観劇や音楽会などに誘ってくれるらしい。


「婚約者とのお茶会って楽しいですわね。

私は小さい頃にガルフォード殿下と婚約したから…殿下とのお茶会は義務でしたの。公務の一つのつもりでしたのね。

でも、そうではないお茶会は楽しいですわ」


私達は、これからもきっと笑いながらお茶会をするんでしょう。

…いつか従兄弟の嫁同士として…




いつか、本当のその後を書こうかどうしようかなって思ってます。


ナディアのお話では、この国は平和であることは書きましたが、他のことは意図的に書かなかったので…。


いつか書けたらなって思ってます。


まだそこまで構想ができてなくてすいません。


ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました!

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