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転生先は大空でした  作者: 高木 藍
第一章 日本ではない世界と自分ではない自分
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市場へお買い物

 今日は、闇の日。あちこちで市が立つ日だ。お父さんが、休みでないことが多いので、お母さんの荷物持ちに、私達子供も駆り出される。市が立つと窃盗や詐欺、喧嘩が増えるので、お父さんは大忙しだ。


 「さぁ、市にいくわよ。袋持ってね」

 お母さんが、エリスに大きい袋を渡す。

 「ちゃんと着いてくるのよ」エリスが私を振り返る。「僕が連れて行くから大丈夫だよ」カルムが、私の手を引いて飛び上がる。お母さんとエリスの後に続いた。


 初めて市に行ったときは、どんな品物があるんだろうとか、屋台とかあるのかなと、物凄く期待した。

 巨大な本棚のような、建物のボックス一つ一つに商品が並び、それぞれ横に人が座っている。色んな町の農家や畜産家、製品工場の人が集まっている。どこの場所に陣取るかは予め決まっているらしい。

 この巨大本棚には、首都の礼拝堂を見たときのように、圧倒され驚いて胸が高鳴った。しかし、喜びに胸がいっぱいになったのは、到着して1分程度だ。まさに出オチである。

 この世界に来て最大といってもいい位残念だったのが、平民に商売の概念が無いことだ。商売とは、貴族相手にすることで、市の品物は全て値段が決められている為、競争がないのだ。競争がないので、オリジナリティもなく、野菜や果物の種類も少ない。服や布でさえも無地の生成りしかない。ただ、品質に関しては、作っている人にバラつきがあるので、お母さんはお気に入りの人から買うため、市を梯子する。

 何も商品が無く、人が座ってるだけのボックスは、木工工場や鍛冶工場、大工などオーダーメイドで作る大掛かりな物を売っている。そこにいる人と話をして、後日受け取りや、家で作業してもらうのだ。


 買い物は全てこの市で賄うため、町に商店はない。そのため、一週間の買い物を済ませなければならない。買い物にあたって、一番驚いたのは、キャッシュレスであることだ。転移ゲートの所で紋章を光らせたあの、金属のポール。あれの小さい版のようなものを、それぞれの店子が持っている。商品の計算をして、小さい紙に金額を書き込み、お客に確認させた後、金属に紙を差し込む。そして、お客が手の甲を当てると、紋章が光って支払完了。お金がな足りなければ、紋章は光らないそうだ。


 …銀行とかあるんだろうか?お母さん専業主婦だけど、お父さんからどうやってお金もらってるんだろう?ATMがあるのかな?


 お母さんは、手慣れたもので、スイスイ飛んで必要なものを次々買っている。

 「お母さん!モモチャイ買って!」カルムが叫んでいる。


 …先週も買ったよね。カルムはモモチャイ好きだなぁ。ま、美味しいけどね。私の誕生果だし。1歳で食べないと死ぬ果物を誕生果と言う。誕生石より、よっぽど重要…


 「はいはい。向こうのお店で買いましょう。次はあっちよ」お母さんは、カルムを軽くいなして、再びスイスイ飛んでいく。


 …ついていくので精一杯だ。お母さん待ってぇ~


 何時もおっとりしているお母さんだが、市では素早く鋭い目で商品を選別する。エリスもカルムも荷物を持っているので、私は1人で飛ばなくてはいけない。


 私が必死にお母さんを見失わないよう飛んでいると。喧騒が聞こえた。


 「各巡視兵長!巡視兵を集めよ!」「はっ!」

 


 そちらに目をやると、青色の見たことのない服を着て、お父さんより、豪奢な羽鎧を付けた人が命令していた。

 …お父さんだ!お父さんカッコイイよね!青い人よりお父さんのが、断然カッコイイ。うん。


 お父さんが、踵を返して飛んでいくのが見えた。 

 

 …前世の私の旦那さんは研究者で、今世のお父さんみたいにワイルドな感じじゃなかったし、息子もどっちかって言うと、インテリタイプだ。お父さんのワイルドな感じが新鮮でいい。…って、あ!お母さん達どこ?


 余所見をして考え事をしていたせいで、お母さん達を見失ってしまった。


 …どうしよう。


 元々、市の為ごった返していたのに、巡視兵が慌ただしく行き来しているため、騒然としている。体の小さい私は、視界が遮られ前が見えない。

 人の間を縫うようにして進みながら、お母さん達を探す。


 …あ!エリスだ!


 エリスを見つけ、急いで飛び出した。


 どんっ!


 何かに勢いよくぶつかって、弾き飛ばされた。

 

 「危ない!」


 男の人の声がした。その拍子に腕を掴まれ、ぐいっと引き戻された。


 どうやら、誰かに助けてもらったようだ。私はほっと息を整えて、腕を掴んでくれた人にお礼を言った。


 「ありがとうございました」


 そう言って、顔を上げた。腕を掴んだ人は、さっきお父さんに何か命令をしていた青い人だ。その顔は、驚きに目を丸くしていた。


 「…虹色だと?」 

 「何?あの色」

 「貴族様でもあの様な色の翼は見たことがない」

 あちこちから、驚きと恐怖を含んだ声がする。


 …!カバーが外れてる!


 飛ばされた拍子に、どこかに引っ掛けたのか、結んだ紐が外れ、片方の翼が露わになっていた。カバーは翼に引っかかり垂れ下がっていた。


 …どうしよう。見られた


 私が顔色を無くして茫然としていると、「ティナ!」お母さんの声が聞こえた。


 お母さんは、後ろから私の翼を隠すように抱きしめた。


 「どうもありがとうございました」


 お母さんは、助けてくれた人にお礼を言うと、すぐさま飛び上がる。


 「ま、待て!」

 「娘が心配ですので、申し訳ありません」


 一度振り返ってそう言うと、お母さんは、その場を去った。エリスとカルムも後に続いた。


 私はお母さんに抱きしめられながら、自分の不甲斐なさを悔やむ。

 「どうしよう。翼見られたよ。私がちゃんとついて行かなかったから」涙が零れる。

 「大丈夫よ。心配しないで。貴女が無事で良かったわ」

 お母さんは、前を向いたまま言った。

 「ごめんなさい」私がぎゅっと力を入れると、お母さんも、ぎゅっと抱き締めてくれた。

 

 外に出て、家族以外の人と接するようになってから、

自分が異質であると感じていた。翼の色が他に知られれば、異分子として危険が有ることも分かっていた。前世の経験で、異質なものへの恐怖から差別を生み、イジメや誘拐などの犯罪が起こり得ることも理解していた。しかし、愛情いっぱいで接してくれる家族に守られていたので、警戒心が緩んでいたのだ。


 …怖い


 この世界に転生して、初めて恐怖を感じた。自分を見下ろす、異質なものを拒絶する人々の目が頭から離れない。そして、お母さんの手作りカバーが、あんなにも安心を与えてくれていたことを痛感する。


 家に着くと、お母さんは私をベッドに座らせ、「もう大丈夫」と頭を撫でてくれた。

 

 エリスとカルムが、荷物の整理を終えると、代わる代わる気遣わしげに私の様子を見にきた。

「ティナごめんね。ちゃんとついててあげられなくて。怖かったでしょ?痛いところない?」

「オレが側に居なかったから…ごめんよ。大丈夫か?」


 …ううん。エリスもカルムも謝らないで。わたしが悪いんだから。


 そう言いたかったのに、出てくるのはポロポロと涙だけだった。


 「エリス、カルム。お父さんを呼んできてちょうだい。帰りには少し早いけど、理由を話せば来てくれるわ」


 エリスとカルムはお母さんにそう言われ、「ちょっと待っててね」と私の頭を撫でて飛び出した。


 「あら、血が付いてる。ここ、怪我してるわ。ちょっと待っててね」


 ぶつかった時に切ったのか、右耳の下がチクリと痛んだ。触れると、指に血が付いていた。

 お母さんは、救急箱を持ってくると、私の傷を消毒して、テープを貼った。


 「傷テープを貼ったから、もう大丈夫よ」


 優しく頭を撫でながら、微笑みかけてくれる。


 「お母さん…私どこかに連れて行かれる?」


 不安でいっぱいだった。


 「何を言っているの。私の大切な宝物をどこかにやるわけが無いでしょう?何も心配いらないわ」


 お母さんは、そう言って、抱き締めてくれた。


 暖かな胸に抱かれて居ると、ざわざわ不安でうるさかった心が落ち着いてきた気がした。


 「大丈夫かっ!」


 ガンっと、扉が開いたと同時に、お父さんが飛び込んできた。


 「ティナ!ああっ!怪我したのか?大丈夫かっ!」


 …お父さん焦りすぎだよ。


 「クスッ」思わず笑ってしまった。


 「ティナが笑ったよ。ちょっと元気になったみたい」エリスが嬉しそうに言った。

 「よかったわ。顔色戻ったみたい」お母さんも微笑む。

 「本当だ。ティナもう大丈夫だよ」カルムが頭を撫でてくれた。


 「しかし、ティナが吹っ飛んで翼が出て泣いた。では埒があかん。何があったんだ?」

 お父さんが、私の頭に手を置いて、覗き込んできた。


 …お姉さんお兄さん説明が雑だよ…


 私はポツポツと話し始めた。


 「お母さん達に付いて飛んでいたら、青い服を来た人が、命令している声が聞こえて、お父さんを見つけたの。嬉しくなってお父さんを見ていたら、お母さん達とはぐれてしまって…」


 「ああ…第二騎士団長のフェリオルフ様か。貴族街の犯罪者が、この町に逃げ込んだと知らせが来て、騎士団と共に捜索するように言われたんだ。それで?」

 

 「はぐれた事に気が付いて慌ててお母さん達を探したら、エリスを見つけたの。急いで追い付こうとしたら、誰かとぶつかって、飛ばされたんだけど、その青い服の人が腕を掴んで助けてくれたの。その時カバーが外れてるのに気が付いて…」

  

 「…翼が周りの人に見られたのか。フェリオルフ団長にも当然見られたんだろうな」


 「うん…」


 俯いて答えた。


 お父さんは、腕を組んで何やら考えている。そして、頷くと、私を撫でながら言った。


 「今日は人が特に多くてごった返していたからな、怖かっただろう?大丈夫だ。お父さんに任せておけ。これからは、余所見をしないで、離れないように気を付ける

んだぞ」


 「わかった。お父さんありがとう。」


 お父さんを見上げて頷いた。


 「ちょっと、詰め所に戻る。何か話が聞けるかもしれん」


 お父さんはそう言うと、家を飛び出した。



 

 

 



 

少し間が開きました。すいません。

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