衝撃のホームルーム
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セレスティナ母様が、担任ってどういう事??
私は、呆気にとられた。
セレスティナ母様は、私に向かってウインクしている。
…内緒にして驚かせてやろーって、感じだろうが笑えない。母親が担任とかどんな拷問だよ。
私ははぁっと溜息を吐いた。
「セレスティナ先生には、主に魔術実技を担当して頂きます」
なるほど。私の制御にルルーシェ先生達では無理だと判断して、フリアから呼び戻した訳だ。
その後、今後の授業について、移動教室の場所や必要なものの話などがあった。
「各授業を受ける前に、皆さんの学力が如何程かテストをします」
セレスティナ母様が、紙の束に手を翳すと、プリントが自動的に配られる。
―懐かしい!初めてセレスティナ母様に出会った時を思い出すわ
セレスティナ母様を見ると、母様も思い出したようで、私を見て笑った。
「はじめ!」
ルルーシェ先生の合図でプリントを裏返す。
…ふむ。『魔力を動かす時に意識しなければならない事は?』…って、私が5歳で習ったことですけどぉ??
他の問題を見ても、とっくに当たり前として理解している事ばかりだった。
…意識が無かった時を引いても、何年間私は貴族院の勉強していたのよ…。魔力を使った事が無いから、貴族や王族が幼い頃から教えられる事を短期間で叩き込むとか言われた記憶があるんだけど。
私は、ジトっとした目でセレスティナ母様を見る。セレスティナ母様は、『てへっ』みたいな顔をして誤魔化そうとしているけど、後で覚えててくださいねっ!ぷん。
5歳の時に手習いで初めてやったテストの様に、あっと言う間に出来てしまった。私が顔を上げると同時に、プリントが飛んでいき、新たなプリントが飛んできた。
このプリントも、既に知っている事ばかりだった。私はその後三枚プリントを終わらせた所で、終了となった。
辺りを見回すと、皆微妙な顔付だ。
「リーネとランは如何でした?」
「難しくは無かったですが、時間ギリギリでした」
と、リーネ。
「そうですね。入学試験に比べたら簡単でした」
と、ラン。
…え?貴族院入学試験あるの??
「…貴族院に入学試験が、あるのは知らなかったですわ」
「入学試験は、子爵以下の下位貴族のみ受けなくてはなりません。一定の学力が無ければ入学できません」
…そうなのぉ??全然知らなかった。顔には出さない。
「貴族院を出ていないと、職を得るのも大変なので、その為に何年も前から勉強を始めます。上位子爵位なら、家庭教師を雇えますが、男爵や準男爵だと図書館などで、自力で勉強する者も少なくありません」
「大変ですのね…」
―貴族といえど、下級貴族は大変なんだね。人を拐ってでも利益を得ようとする意味も分かったよ。分かったけど、推奨はしない。理解もしない。
「それにしても、システィーナ様は凄いですね!何枚も書いておられました」
「ええ!びっくりしましたわ。あの様に短時間で解いてしまわれて」
リーネとランが凄いを連発する。
―よせやい。照れるだろ
「有り難う存じます。お母様とアルベティウス様のお陰ですわ」
うふふと笑う。
…私が頑張ったからだと、思っているが口では謙遜しておく。私すげぇ。
「先程のテストの結果と、魔力量を総合的に見て、明日以降の授業の教室が変わります。明日、ホールで貼り出されますので、確認してください。ホームルームは此処で行いますので、間違えないように」
ルルーシェ先生がプリントを、纏めながら言った。
…リーネやランと教室が変わる可能性があるのか。魔力量からいくと、エスメラルダ嬢と同じになる可能性が高いな。…勘弁してくれ
「では、ホームルームは終わります。次の授業はこの教室で行いますので」
チャイムが鳴って、ルルーシェ先生とセレスティナ母様が退室する。去り際に、セレスティナ母様が、私にウインクした。
私は再び頭を抱えた。
「セレスティナ様の指導をお受けできるなんて、光栄だわ」
何処かから声が聞こえた。耳をダンボにして聞いてみる。
「ええ、セレスティナ様は、ずっと平民街で平民を教えていらしたそうよ」
「平民が教わるなんて、何て贅沢な」
「セレスティナ様が貴族院に戻られるのは、第一王子が卒業なさって以来ではなくて?」
「父が話しておりましたの。セレスティナ様は幼い頃からとても可憐で、婚儀を結ばれてベレナルフに嫁がれるまでは、あの濃紺の髪色から『アトワーフの月夜姫』と呼ばれていたそうよ」
…『アトワーフの月夜姫』??
思わず、ぶふっと令嬢らしからぬ笑いが漏れてしまった。
「システィーナ様?大丈夫でございますか?」
「少し咽てしまっただけよ。有り難う。ラン」
…本当は吹き出しただけだけど。
「私達も、セレスティナ様からご教授頂ける事を、大変光栄に思っています」
「システィーナ様は、お母様なのでお分かりにならないかと存じますが、セレスティナ様やアルベティウス様は私達には、本来なら手の届かない、むしろ神に近い存在なのです」
リーネとランから、熱弁されている。
「こうやって、システィーナ様のお隣に侍る事は、まるで夢の中の様なのです」
「本当に感謝しております」
…私なんか、本当は平民なのに、何だか申し訳なくなってしまう。幼い頃から当たり前に高位王族と接してしまったから、私にはよく分からなくなっている様だ。そう言えば、領主様に呼ばれた時、お父さんもお母さんも、ガッチガッチに緊張していたよね。
本来は、文字通り雲の上の存在であるだろう自分の周りの人達について、考えを改める必要があるな。と思いを深めた。




