作戦実行
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翌日、眠い目を擦りながら、迎えが来るまで準備をした。
「お父さん、お母さん、エリス、カルム…短い間で、更に3年も眠ってしまったけど、今まで有り難う。私、この家に生まれてきて良かったよ」
精一杯の笑顔で、皆に笑いかけた。
―駄目だ…
笑っているのに、目からは涙が溢れた。
「ティナ!」
お父さんも、お母さんも、エリスも、カルムも、飛び付いて来た。
「名前が変わったって、住む場所が変わったって、お前は可愛い俺の子だ!」
「無理してまた倒れたりしないようにね。貴女が元気でいる事を祈っているわ」
「商都に来ることがあったら教えてね。貴族街に出られる許可を貰ってるの。必ずよ!」
「ティナ有り難う。俺の命の恩人。絶対またフリアに来いよ!」
「有り難う…皆愛してる」
「当たり前だ」「私もよ」「ええ私も」「知ってるよ!」
皆泣いているが、笑った。
それから暫くして、領主様の荷馬車がやってきた。
―おおぅ。想像はしてたけど、馬はペガサスだ。2頭立てだね。
病の振りをして、荷馬車に乗り込む。
領主様の執事が、話しているのが聞こえる。
「では、娘は預かる。また追って連絡する」
「…宜しくお願いします」
お父さんの、声が聞こえた。
フワッと浮く感じがして、荷馬車が動き出した。
…さようなら。私の家族。さようなら私の家…
涙が止まらなかった。
領主の館に着くと、直ぐに着替えをさせられた。脱いだ服は、家に返してくれるだろう。私は貴族が着るような上等な服を着せられた。
着替えが終わると、応接間に通された。
「やぁ!システィーナ。その服可愛いだろう?前に誂えた物が無駄にならなくて良かったよ」
領主様はニコニコして言う。
…何年も前に養子の話は流れたのに、何で今ピッタリの服があるんだろう。
顔が引き攣ったが、考えないようにした。
「連絡があるまで、お茶でも飲んで暫く休んでいなさい」
領主様が部屋を出るのと入れ替わりで、お茶とお菓子が出された。
―ここのお茶とお菓子美味しいんだよね
私がモキュモキュとお菓子を食べながらお茶を飲んでいると、誰かが入ってきた。
「よくもまぁこの様な状況で、落ち着いて要られるな。大物なんだか、大馬鹿なんだか」
…私、ディスられたかしら?
「フェリオルフ様、お茶を飲みながら待てと言われたからそうしているんです。失礼な事を仰らないで頂けますか?」
じとっとフェリオルフ様を見た。
「お、おお。申し訳ない。幼くてもお主も女性だな」
…騎士団長が、少女にビビってどうすんだ。
ふんっと、私はお菓子を食べる手を再開した。
「…何だか、やさぐれてないか?」
「…家族と引き離されて、これからお貴族様の教育が始まって、自由が無くなると分かっているのですから、やさぐれもしますよ。それに!フェリオルフ様、これからは私の方が序列が上がりますからね。失礼な事を言ったら怒りますよ!」
…ふんっだ
「…もう怒ってるじゃないか。悪かった。無神経な事を言ったよ」
フェリオルフ様が、小さくなってしまったので、溜飲が下がった。これ以上いじめるのはやめてあげよう。
「失礼します」
執事さんが、白くて高そうな装飾の衣裳箱を運んできた。
「此方に」
蓋を開けると、フカフカの布団が入っていた。
「出来るだけ寝心地が良いようにしております」
「さぁ、ここに寝て」
フェリオルフ様に促され、衣裳箱に横たわった。
―おお、寝心地最高!
「準場は出来たか?」
領主様が戻ってきた。
「よし、閉めよ」
領主様の、合図で蓋が閉められた。小さい穴が空いているようで、案外真っ暗では無かった。
私はまた、荷馬車へ積まれる。
暫くすると、声が聞こえた。
「ご苦労」
「はっ!領主様はどちらまで往かれますか?」
「首都の邸宅だ。自宅からの荷物を積んでおる」
「はっ!承知しました。お通りください」
―やっぱり荷物の確認はないね。
吸い込まれる感覚の後、また声が聞こえる。
「フリア辺境伯様、此方へ」
「ご苦労」
「お通りください」
「うむ」
―高位貴族や王族がフリーパスって、問題ある気がするけどなぁ
そんな事を考えていると、声が掛かった。
「システィーナ、到着だ」
フェリオルフ様の声がして、蓋が開けられた。お馴染みの離宮に着いた様だ。
「システィーナ、私はここ迄だ。また何でも相談しておくれ」
領主様が、何時もの胡散臭い笑顔で言う。
「有り難うございます。ご協力感謝致します」
…笑顔は胡散臭いけど、いい人なんだよね。
「ははは、よいよい。では、最後まで上手くいくよう祈っているよ」
領主様は離宮から去っていった。
「ティナ様」
メル様がワゴンと共にやって来た。
「メル様、お久しぶりです」
「ああ、もうシスティーナ様とお呼びしなくてはいけませんね。それから、もう王族に成られるのですから、呼び捨てでお願いします」
メル様が笑顔でお茶を入れながら言う。
…ずっとメル様って呼んでたから、急に呼び方を変えるのは、難しいな。でも変えないとだめだよね。
「…メル。お茶を有り難う」
「どう致しまして。システィーナ様」
メル様の笑顔が眩しい。
「ティナ、着いたのかい?」
アルベティウス様が入ってくる。フェリオルフ様がさっとバッテンポーズになる。
「フェリオ、君はもう僕の専属護衛じゃないんだから、もっと気楽にしておくれよ」
アルベティウス様がやれやれと云った感じだ。
「いえ、アルベティウス殿下は私が死ぬまで主でございます」
「…全く堅いなぁ。もう、いいや」
フェリオルフ様の説得は諦めた様で、此方に近づいて来た。
「ティナ、手を出して」
アルベティウス様から、白い石を渡される。
「これは、君の名納めの石だ。正確には君の設定上の生い立ちが刻まれていて、後は君が魔力を流せば完成する名納めの石だよ」
…どうやって作ったかは、敢えて聞かないでおく。
「この日に間に合うように何年も掛けて作り上げた傑作だからね。大丈夫だよ」
…そう簡単に、作られたら国際問題に発展するわね。
私は、石を握り込み、魔力を流した。
シュンッと魔力が吸い込まれる感覚がすると、もう魔力が通らなくなった。
「貸してご覧」
アルベティウス様が、石をしげしげと眺めている。
「うん。大丈夫だね。これで国籍変更できるよ」
アルベティウス様はニッコリ笑った。
「…お尋ねしたかったんですが、私、ベレナルフから来た事になっているんですよね?ベレナルフ側の出国情報や、アトワーフの入国情報は如何なってるのでしょう?」
疑問に思っていたことを聞いてみる。
「…この僕が、そんな抜かりが有ると思うの?」
ニヤっと笑っている。
…ああ、この顔は前世と変わってないな
「アルベティウス様に抜かりはありませんね」
「そうそう」
アルベティウス様は満足そうに頷いている。
「今日から君は僕の従姉妹だね」
「アルベティウス様と…そうですね」
「ダメ」
「え?何がです?」
「従姉妹何だから」
「はい?」
「呼び方!」
「アルベティウス兄様?」
「もうちょい」
「アル兄様」
「それそれ!」
アルベティウスは満足気だ。
そんな話をしていると、セレスティナ先生がやって来た。
「お待たせしましたわ。さあ、神殿へ行きましょうか」
「セレスティナ先生、あの…」
フリアの家族の様子が気になった。私の葬儀をやったのだから。
「先生ではなくてよ。ティーナ」
セレスティナ先生は、困った子を見る目だ。
「…お母様」
「良くできました。フリアの話は名納めが終わってからゆっくりと話して差し上げますわ」
「分かりました」
納めの石を一旦セレスティナ先生に預けた。私はセレスティナ先生と、カイン様と一緒にフェリオルフ様を護衛にして大礼拝堂へ向かった。
今回も深夜の更新申し訳ありません。
※ワクチン接種の為2、3日更新をお休みします。




