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転生先は大空でした  作者: 高木 藍
第三章 平民の居ない場所と平民しか居ない場所

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天蓋ベッドと美人

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 「ごめんください。カインです」

  

 カイン様が迎えに来てくれた。

 

 「はーい。今出ます」


 カイン様が、普段通りの話し方や動きをすると、どこから見ても平民ではないので、砕けた話し方をお願いしている。


 扉を開けて外に出る。


 「それでは参りましょう。お母上、お嬢様をお預かり致します」

 お母さんにバッテンポーズで頭を下げている。


 「…いってきます」

  

 お母さんは青い顔をして、「娘を宜しくお願いします」と、ペコペコ頭を下げている。


 「…カイン様、態とやってますね?」

 私は、じろっと睨め上げた。


 「…おや、バレていましたか」

 

 …お母さんを揶揄ってどうする気だ


 「青くなったり白くなったりするのを楽しんでいたわけではありません。いい加減、慣れて頂かなくては」


 カイン様はヤレヤレと言った表情だ。


 …絶対楽しんでるな。


 「それなら、カイン様もその口調どうにかしてくださいね!」

 「…おや、これは1本取られてしまいました。美しいティナ殿にその様な顔をさせてはいけませんね。以後気を付けます」

 「…そう云うとこですよ!」


 カイン様は、涼しい顔で微笑んでいる。


 …全くもう。暖簾に腕押しで、この人には何も響かない感じがするわ


 神殿に着くと、私は合同の読み書きには参加せず、そのまま、セレスティナ先生とマンツーマンで教えてもらう。ランツは読み書きに来ない私を訝しんでいたが、先生から書類仕事を教わっていると告げると、何故か納得して、聞いてこなくなった。  


 「おはようございます。大空を護る総ての母シュラーリア様。今日の良き日を迎えられましたことを感謝致します」


 バッテンポーズでいつもの挨拶をする。


 「さて、今日は、貴女の内在魔力の様子を見せてもらわ」

 「内在魔力ですか?以前魔術具で測りましたよね?」

 「アレは、量や濃度を見るもので、質は分からないのよ。それに、3年経っているのだから、変化が有るかもしれないでしょう?」


 ―なるほど。ど平民から何で高魔力の娘が生まれたのか、調べる為だろうな。


 「分かりました。どうしたらいいですか?」

 「これに、紋章を当ててちょうだい」


 先生が出してきたのは、ゲートや店子が持っているピカッとやるヤツの様だが、ちょっと太い気がする。 


 言われるまま紋章を当てたが、何も起こらない。


 「紋章を意識して、魔力を流して、反対の手でこれを握って」

 先生は細い金属の棒を手渡した。

 「紋章から出た魔力が、その棒に戻って体を通して紋章から出るイメージでね」


 …紋章から魔力が出て…棒に入って体を巡って…また紋章に…


 …な、何か体が熱くなってきた…


 「!こ、これは!!」

 先生の慌てた声が聞こえる。


 「ティナ!もういいわ!魔力循環を中止しなさい!」


 …え?何で?止めたいのに止まらない!


 「ティナ!!」


 私の手から、全てを飲み込むような眩しい光が溢れた瞬間、私の意識は消失した。






 気が付くと、見たことの無い天井が見えた。目だけで辺りを見回すと、天蓋付きのベッドで寝ているようだ。


 …体が動かない!


 手に力を入れるが、ピクピクと動くだけで全く力が入らない。全身がまるで氷像になった様に冷たく感じた。

 焦って体のあちこちに力を入れるが、どこも動かない。


 ―どうなってるの?!


 パニックになっていると、ニュッと顔が出てきた。


 「あ、起きたかな?」

 私の顔を覗き込んだ人は、見た事もない美人だった。声から想像するに、男性で有ることは間違いないのだが、美人と言いたくなる中性的に美しい顔だった。


 私がビックリして固まっていると、その美人が言った。


 「魔力がもう少し回復しないと動けないから、寝てるといいよ。ちょっと辛いかな?待ってね」


 美人は私の紋章の有る手を取った。手から温かい何かが、体を巡った。


 …あ、少し動く。


 「…あ、有り難うございます」

 話せるようになったみたいだ。


 「魔力を少し分けたよ。あまり注ぎ過ぎると、魔力が戻るのに余計時間が掛かるからね」


 手を握ったまま、美人は優しく微笑んだ。


 その美人は、プラチナブロンドの髪と瞳で、サラッサラの絹の様な直毛だ。現実離れしていて、まるでCGの様だ。しかし、手の暖かさが現実だと教えてくれた。現実(リアル)を感じた瞬間、ボンと顔が赤くなった。


 「自己紹介が遅れたね。僕はアルベティウスと言って、セレスティナ様の弟子なんだ。君はティナだね?」


 …アルベティウス?どっかで聞いた気がするけど。


 「あ、あの…」

 私は話をしようとした。


 「ダメだよ。まだ寝てて。話しは起きてから。ね?」

 

 美人のウインクは破壊力がある。ウインクのせいか、体力が尽きたのか、私は再び意識を手放した。



 次に目が覚めた時は、さっきと違って体も動くし、スッキリとしていた。


 私は半身起き上がると、辺りを見回した。


 …ここは何処だろう?


 ベッド脇に水が置いてある。飲もうと思ったが、ベッドが大き過ぎて手が届かない。仕方なく四つん這いに、なって、ハイハイして水の側まで行こうとした。

 その時、


 「やぁ!回復したね」


 さっきの美人の声だ。自分の恥ずかしいポーズを思い出して、慌てて起き上がる。   


 「お水かい?入れてあげるから、お布団にお戻り」

 

 「は、ひゃいっ」


 …羞恥で噛んでしまった。恥ずかしい…


 私は、布団に戻り赤面して俯いた。


 「はい。お水」

 「ど、どうも」


 恥ずかしくて顔は見られないが、お水をぐいっと飲み干した。  


 「回復してよかったよ」


 俯いて分かったが、絹のネグリジェみたいな高級寝間着に着替えている。


 …誰が着替えさせたの?まさか?


 要らぬ想像をしてまた赤面する。


 「ティナ。気が付いた?」


 セレスティナ先生の声がして、バッと顔を上げる。


 「セレスティナ先生!」

 「良かったわ。気が付いて」

  

 先生は、心底ホッとした表情だった。 


 「一体これはどう云う状況なんでしょう?」

 「貴女は、体にある全ての魔力を放出してしまった為に、気を失い、体が動かなくなってしまったの。魔力持ちは少しでも魔力が残っていないと死んでしまうの。そうなる前に、他人が魔力を注げば回復出来るのだけれど、魔力が同程度なければ、魔力を注げないのよ。私では無理でしたの。そこで、高魔力保持者である、弟子のベティに頼む為にここに運んだのよ」


 …ベティ?だからどっかで聞いたな…


 「どうして私は魔力を放出したのですか?魔力暴走とは違うのですか?」

 …魔力暴走なら付近一帯吹き飛んでる筈だけど。


 「…ごめんなさいね。これは私の責任でしてよ」

 はぁと溜息をついて事の顛末を話してくれた。



  

 

いつもよりちょっと短いです。

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