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転生先は大空でした  作者: 高木 藍
第二章 貴族ではない自分と平民でもない自分

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幕間〜騎士団長の憂鬱(2)〜

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 翌日、急いで申請した名納めの魔晶石を検める許可証を持って、礼拝堂へと赴いた。


 親衛隊時代の顔見知りの御遣い様を見つけたので、納めの壁まで連れて行く。


 許可証を見せて、

 「フリアのティナの名納めの魔晶石を探したいのです」と伝えた。


 「平民ですね。でしたら、シュラーリア様の手元辺りから下をお探しください」 

 「分かりました。見つけたらお知らせします」

 「お一人では大変でしょう。私も協力致します」


 御遣い様にお礼を言って、早速、納めの壁でティナの魔晶石を探した。が、中々見つからない。


 「…ありませんね」

 「二人では見逃しがあるのかもしれませんね。ティナの名を納めた御遣いを探してきましょう」

 「記録でもあるのですか?」

 「記録はございませんが、自分で納めた名は忘れないのです。尋ねれば直ぐ誰が納めたか分かるはずです」

 「では、少々お待ちくださいね、ああ、ティナはいくつですか?」


 私が5歳だと告げると、「承知しました」と飛び去った。


 ―待っていても仕方が無いので、探すとしよう。


 私は、シュラーリア様の手元よりやや上肘の下を辺りまで捜索を広げ、丁寧に確認していった。


 …ない。ないぞ。ダスリー本人や他の家族は見つけたのに、どうしてないんだ。それに、御遣い様も戻って来ない。


 途方に暮れていた所に、御遣い様が戻って来た。一人で。


 「申し訳ありません。納めた御遣いが見つからなくて…本日お休みの者か、異動した者かもしれませんので、もう少し時間を頂けますか?」


 御遣い様は、困惑しきりと云った表情だ。


 「仕方ありません。私は仕事に戻らなくてはなりませんので、また明日参ります。」


 残念だが、見つからないものは、どうしょうもない。


 ―一旦帰って仕切り直すか。


 私は名納めの魔晶石の捜索は諦めて、脱走犯の捜索に戻ることにした。隊は既にフリアで捜索を再開している。


 ―フリアに行こう


 フリアの詰所で、ジルドから現状を尋ねる。


 「昨日より、人が少ない分、捜索しやすくなっております。本日は建物内を中心に捜索しております」

 「…そうだな。色付きは目立つからな」


 …これで見つからねば、捜索方法が間違っていると云う事だ。


 しかし、二日目も脱走犯は影すら見つからず、目撃情報も曖昧な物ばかりで、手掛かりさえ掴めなかった。


 「先程、下部ゲートの通過詳細が分かりました。平民を除いて、ここに三日間、御遣い様と隣街カーツウェルの領主様以外で、フリアの下部ゲートを通過した者はおりません」


 「それから」と、ジルドは眉間の皺を深くして言った。


 「上部ゲートの通過詳細でも、ここ三日間、御遣い様、騎士団の方々、カーツウェルの領主様、フリアの領主様以外の平民を除いて記録は無いのです」


 「そうか…」


 ―ここへ来たのも目撃情報があったからで、ゲートの通過詳細は確認していなかった。目撃情報が誤りなら、脱走犯はまだ貴族街に居ることになる。



 「総長、明日からはフリアの捜索は巡視兵のみで行ってくれ。騎士団は貴族街を再度捜索する。ゲートは何らかの方法で、抜けた可能性が無いわけではないからな」

 「承知しました」


 騎士団員、巡視兵達に明日からの変更を伝え、貴族街に戻った。


 ―明日は先ず礼拝堂に向かおう。



 


 朝から礼拝堂にやって来た。知り合いの御遣い様は、困った顔だ。


 「フェリオルフ殿、申し訳ごさいません。まだ、名を納めた御遣いが見当たらないのです」

  

 …なんと…何故だ?


 「ゲートも潜っておりますし、日常生活でも紋章は使っているので、必ず名前は納めている筈なのですが…」


 私が困惑していると、申し訳無さそうに、

 「必ずお調べして、見つかりましたら、第二部隊の待機所へお知らせしますので、今暫くお待ちください」

 と頭を下げられた。


 「御遣い様に頭を下げられては、此方が困ってしまいます。お待ちしておりますので、宜しくお願い致します」

 私も頭を下げた。


 ―見つからぬものは仕方が無い。取りあえず、脱走犯の捜索に専念しよう。




 再度、護送していた牢番や、目撃者に話を聞くも、新しい情報は無く、手詰まりとなっていた。ゲートの通過詳細も確認しているが、フリアと違い、通過している貴族が膨大な為、確認作業が難航している。フリア側のゲートはフリアの上部ゲートと照らし合わせたが、可怪しな点は見当たらない。


 ―やはり、平民街には行っていないのか?


 貴族街の捜索は難しい。平民街と違って、問答無用で屋内の捜索が出来ないからだ。裁判所から許可が必要な上、高位貴族の家に匿われれば、ほぼ見つかることはない。


 ―雇元の貴族の家で潜伏しているのかもしれない


 そうなるとお手上げだ。フリアに入ったと云うのが、我々を欺く偽装で、犯人を匿う時間稼ぎだったとしたら、まんまとしてやられたことになる。


 ―これ以上失態を繰り返すわけには…クソッ


 奥歯を噛み締め、拳をテーブルに叩きつけた。 

 

 

 翌日、僅かな手掛かりを求めて、再度礼拝堂へやってきた。


 「また押し掛けて申し訳ありません。再度納めの壁を確認させてください」


 御遣い様に頭を下げると、

「畏まりました。納めた御遣いが分からないのであれは、人海戦術と行きましょう」

 ニッコリ笑って言った。


 …人海戦術?この件はジルド以外には話していないので、騎士団を連れてくるわけにもいかないが…?


 納めの壁に向かうと、何と10人以上の御遣い様が、壁に張り付いていた。


 「これは…」 

 「フェリオルフ殿がお困りだったようなので、仲間にお願いしてみました」

 御遣い様は、ふふふと笑われて

 「さぁ、私達も探しましょう」

 そう言って、壁に向かわれた。


 ―有り難い。


 私は、暖かい気持ちで一杯になりながら、壁の捜索に向かった。


 「どうしたのかな?皆で納めの壁に張り付いて」


 後ろからのんびりした声が聞こえた。


 「大司祭様、お騒がせして申し訳ありません」

 「大司祭様、騎士団第二部隊長のフェリオルフでございます」

 「フェリオルフ殿は第二騎士団長になられたんだね。今日はどうしたのかな?」

 「実は…」


 先王弟であるアトワーフの真正教シュラーリアの最高位、大司祭のエルサザール様が突如現れた。ティナの名納めの魔晶石を探していること、納めた御遣い様が見当たらない事を話した。

 話が進むに連れて、大司祭様の顔色がみるみる悪くなっていく。


 「あの、大司祭様どうかされましたか…」

 「いや、何でもない」そう言うと、私の知り合いの御遣い様に向き直り、

 「暫く、礼拝堂を私とフェリオルフ殿以外は立入禁止にしてくれ。何ほんの数分だ」

 「畏まりました」


 御遣い様は、少し首を傾げたが、大司祭様の指示を通り、人払いをした。幸い朝早かった為か、参拝の者は居なかった。


 「結界術を行使する」

 人払いが済むと、大司祭様が仰った。本来なら、私が行使すべきだろうが…苦手なのだ。


 「恐れ入ります。所で…」


 私が話し出そうとすると、大司祭様は手で制した。


 「はぁ…まさかこの様に大事になるとは…いや、何時かはなると考えてはいたが…」


 制されたにも関わらず、大司祭様はブツブツ独り言を言い始めた。


 「大司祭様?」

 「おお、済まない。実はティナの名納めは私がしたのだ」

 「は?」

 

 ―大司祭様が名納め??


 平民の名納めは、役職の着いた御遣い様が行うのは稀だ。稀と言っても、無くはない。しかし、大司祭となると話は違う。貴族や王族でさえ大司祭が名納めする事は無い。大司祭が行う名納めは国王一家なのだ。


 「どうして、平民のティナの名納めを、大司祭が…?」

 驚きつつ、聞くことにした。


 「いやな、本当に偶然なのだ。その日は、参拝者が多いな〜と思うて、明けの小窓からちょっと様子を見ようと、出たのだ。そしたら…」

 「そのタイミングで、ダスリー達がやってきたのですか?」

 「そうなのだ。凄く幸せそうな一家でな。思わず名納めしてしまったのだ」

 そう言いながら、照れたように頭を掻いている。


 …思わずで済むと話では無いような…? 


 呆れてしまったが、話を聞こう。


 「まぁ、この事は内密にします。所で、ティナは不思議な髪色をしておりましたか?」

 「ああ。珍しい黒髪であったな。確かにダスリーとシラーナの子で間違いない。一応魔晶石を確認するが…」


 大司祭が、言い淀む。


 「何か?」


 「名納めの場所についても口外せぬと誓ってくれるか?」

 大司祭様が、真剣な目をする。


 「…私は騎士であります。約束を違える事は致しませぬ」


 「…そうか。ならばついて参れ」


 そう言って、飛び上がる。


 ―何処まで行く気だ?名納めの魔晶石を出してくれるのではないのか?


 ぐんぐん高度を上げ、天井近くまでやって来た。


 「大司祭様、何故ここに?」


 大司祭様は、無言で振り返り、シュラーリア様の左目の横辺りを指差した。


 指差す所を見て、絶句した。


 「な…何て場所に…」


 そこには、『フリアのティナ』と書かれていた。平民でこんな場所に名が納まるなど有り得ない。アルベティウス様でさえ、シュラーリア様の鼻の横だったと聞く。


 「最高機密だ。分かっているね」

 大司祭様に、無言で頷くしかなかった。


 大司祭様が、魔晶石を取り出した。手に包むと魔晶石が光出す。

 「お主にも見えるようにしよう」

 そう言って、魔晶石を見せてくれた。

 「触ってはならぬぞ」


 魔晶石には、『父ダスリー 母シラーナ 姉エリス 兄カルム 太陽の季 日の日 フリアに誕生 齢五』


 と印されていた。


 「…間違いなく、ダスリーの子だな」

 「ああ、間違いない。ティナは息災かな?」

 「…虹色に輝く白い翼を羽ばたかせ、元気に育っております…」

 「何っ?!」

 大司祭は目を剥いた。


 「…明日、ダスリー親子を呼んで話をします」

 「私も同席しよう」

 「大司祭様が?!」

 「私が大司祭って云うのは内緒だよ。名前で呼んでくれ。大きくなったティナに会いたいしね」

 かかかと笑う大司祭様を暫し呆気に取られて見ていた。


 …平民に会いに大司祭様がフリアに来るなんて


 「何処で集まるのかな?」

 「フリアの神殿にお願いします」

 「じゃぁ、ダスリー親子が来る前に、フェリオルフ殿に会わせたい者が居るし、どう話を持っていくか考えないといけないから、早めに集まってくれ」


 …会わせたい人?


 疑問に思っている私に、「じゃ、明日宜しくね」と、ポンと肩を叩いて、降りて行かれた。私も後に続いて、礼拝堂を出る。

 知り合いの御遣い様には、ティナの魔晶石が見つかって確認したので、もう大丈夫だと伝えた。何も聞かれることはなく、「見つかって良かったです」そう笑顔で送り出された。


 …明日は一体何が起こることやら


 少々、鬱々としながら待機所へ戻った。



  

更に長くなってしまいました。次で終わりたいですが(^_^;)

 因みに、ダスリーは他の巡視兵に比べて細いというだけで、ティナ的にはムキムキです。つばさの夫、章斗は細かったので。

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