新しい家族
それから数日すると、だんだん目が見え始めてきた。
不思議に思うのが、ここの人たち急に現れるのでびっくりする。近づく音がしないんだよね。それから、仰向けになると、背中にゴツゴツしたのが当たって痛い。
痛いよ~!!ジタバタしながら泣いていた。何か
が手に当たったので、むんずと掴んでみた。
「いたたた!ティナ!お姉ちゃんの翼掴まないで!」
…翼?
お母さんに抱き上げられ、泣き止んだら私はよーく目を凝らして、周りを見てみた。
!!!皆、羽付いてる!天使みたいな翼が!そりゃ音しないわ
「ティナは翼が生まれてないから痛いのね」
そう言いながら、お母さんは私の背中をさすった。
あー気持ちいい。仰向けだと痛いし、そうじゃないと痒いし、生えかけの翼だったんだね。さすってくれているお母さんの顔は見えないが、姉のエリスが寄ってきたので観察する。顔は所謂エルフっぽいね。マジ天使だなこりゃ。髪は薄いピンク色でふわふわの綿菓子みたい。よく見ると、瞳も同じ色なんだね。耳は尖ってる。肌は白い。服は翼が邪魔しないように、アメリカンスリーブっぽい。生成りの麻素材の様な無地の生地だ。
「ティナが私をじっと見てるよ」うふふとエリスが微笑んだ。
「僕も見たい!」
私の視界に、カルムが割り込んできた。
「カルム!ティナがビックリするでしょ!」
「お姉ちゃんだけのティナじゃないもん」
姉弟喧嘩が始まってしまったよ。まぁ、カルムの観察を始めよう。お兄さんもなかなかのイケメンだな。髪の色は薄い水色。瞳もだね。髪と瞳は同じ色なんだね。髪はエリスと同じふわふわ綿菓子。ただ、エリスよりは短く切ってるみたいだね。服はエリスと同じようなアメリカンスリーブだけど、下はアラジンのズボンとか、ニッカポッカみたいな、膨らんだズボンだ。翼は二人とも、服と同じ様な生成りだ。怒って声をあげるときは、バサッと広がるのに、劣勢のときは萎むのが面白い。
「はいはい。ティナにそんな喧嘩をみせてもいいのかしら?」
お母さんがそう言うと、2人はピタリと動きを止めた。「ティナ。お姉さんは喧嘩なんかしてないよ」「お兄さんもしてないよ!」仲良しだよねと言い合いながら、私に近づいてきた。2人はいくつだろ?見た所、姉のエリスは7歳前後、兄のカルムは5歳前後ってところかな?
お母さんが私をベッドに下ろした。お母さんの観察もする。すごい美人だ。髪の色は薄い赤。でも姉兄よりも色は濃い。目もそんな感じ。優しさ溢れた瞳。髪型は前髪はふわっとしてるけど、後ろの髪は編み上げてお団子状に纏めてある。兄のカルムはお母さん似かな。姉のエリスは少し面差しが違う。お姉さんはお父さん似なのかも。翼はやっぱり生成りだ。皆白いのかな?服もアメリカンスリーブだけど、下着っぽいのが見える。結構なお胸だったし、そらそうか。
「今帰った。」
突然、天井の一部始終がパカッと開いたと思ったら、男の人がバサッと降りてきた。お父さんか。おかえりなさい。ビックリしたけど、普段から飛んでるなら、壁に扉付けるよりいいのか。
「おかえりなさーい」エリスとカルムが飛び付いた。
「お帰りなさいませ。」
「エリス、カルム、ただいま!」
そう言って、2人の頭を撫でてから、私に近づいてきた。ふむ。観察せよと。
「ティナ~!ただいまぁ」
お父さんデレデレですな。お父さんは、カルムより濃いめの青い瞳に髪だね。大人になると、色が濃くなるのかも。お父さんもなかなかのイケメンだね。イメージのエルフのよりはがっしりした感じだ。某映画のロ○ドオブザ○ングのエルフみたいな感じでカッコいい。髪は短いけど。やっぱりエリスはお父さん似だね。服は、子供や女性と違って袖があるね。翼の付け根の所から、鎧みたいな金属製のものを着けている。動いてるから、普通の金属じゃなさそう。
「ティナの目が開いたね」お父さんが覗き込む。
「…瞳が黒い?」何か、驚いてる感じだ。
「ええ。髪と同じ黒なの。珍しいわね。」
「髪も細いからよくわからなかったが、こうして見ると黒いな」お父さんが、わしゃわしゃと私の髪を集めて言った。「見せて見せて!」エリスとカルムも寄ってきた。
「ホントだ!」「黒いね!」
…なんか、皆に見られると恥ずかしいです。
「ほらほら。ティナが驚いてるじゃない」困ったわねというふうに、お母さんが私を抱き上げた。
「瞳と髪が黒くたって、可愛いティナには違いないわ」そう言って、優しい瞳で私を見た。
「そうだな。黒い瞳も可愛いしな!」がははとお父さんが笑った。「うん!ティナは可愛いよ!」カルムも言う。「この辺りじゃ、一番の美人だよ!」エリスも言う。
…暖かい家庭に生まれて幸せだな。ここを転生先にしてくれた神様ありがとう。でも、日本の家族や孫に会いたくなっちゃった。皆元気かな…
家族からの愛を存分に感じながら、月日が過ぎた。家族の話を聞きながら、この世界の情報を集めた。この国はアトワーフという王政の国だ。首都はカストン。首都の隣にあるフリアという町に私達は住んでいる。お父さんは巡視兵と言われる、警察のような仕事をしている。王様や貴族を守るのが騎士団や親衛隊で、平民の治安を守るのが巡視兵なのだ。門兵は町の入口を守っていて、巡視兵とは別みたい。お父さんはこの町の第三巡視兵長なんだって。えらいんだね。もっと色々知りたいなぁ。そろそろ、母乳にも飽きたんだよね。カレー食べたい…
「ティナも明日で1歳になる。翼が生まれるだろう。次の露の日に礼拝堂へ魔晶石を納めに行こう」
お父さんが夕食の時に言った。ま、私は食べてないし、匂いだけ。この世界は1歳じゃ離乳食とか無いんだね。まぁ、歯もまだだし。やっと座ったけど。
「露の日まで後何日?」カルムが、聞いた。
「今日が闇の日でしょ?次が日の日、風の日、雲の日、露の日だから、4日後かな?」
エリスか指折り数えて言った。
この世界の1週間は、風の日から始まり、雲、露、夕、闇、日の日となる。闇の日と日の日は休日だ。父のダスリーは巡視兵の為、平日の休みが多い。
「明日はお披露目会だな。お父さん休みを取ったから、朝から準備だぞ」
「エリスもカルムもお願いね」
「うん!お手伝いする!」
「私、お母さんのお手伝いしながらティナを見るわ」
楽しげに明日の話と、露の日の話をしている。明日と露の日なにするんだろ。どうやら私が主役っぽいけど。明日は誕生会で、露の日はお宮参りみたいな感じかな?
…家から出るの初めてだし楽しみ。カレーは出ないだろうな
ふぅとため息をついたつもりが、泣き声になり、慌ててお母さんが駆けつけた。
お母さん、そんなつもりじゃ無かったんだ。ご飯邪魔してごめんなさい。
赤ちゃん視点もう少し続きます。