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小さいもの相手には勝てるんです

 森での採取活動も順調に進んでいたが、そこは通常フィールド。

 当然魔物たちも活動している訳で。


ヒュッ

「よっと」

「クキキーーッ」


 木の上から飛んできた礫を避け、お返しにスライムを投げ返す。

 ゴスッと岩がぶつかったような硬質な音を響かせて礫を投げてきた猿の魔物が地面に落ちた。

 そこをすかさずスライムが3体掛かりでタコ殴りにすれば、見事討伐が完了した。

 ほんと最初はどうなるかと心配したスライムだけど、無事に戦えるようにもなって安心だな。

 魔物が居ない間は採取も捗るし一石二鳥だ。


「走れ走れ走れ」

「うおおぉぉぉーーーー」

「いぃやあぁ~~」

「……!……っ!」


 ん?

 森の奥が何やら騒がしいな。

 数人の叫び声がこっちに近づいてくる。

 こんなところに居るって事は十中八九プレイヤーだとは思うんだけど、フィールドボスにでも見つかったのか?

 兎に角巻き込まれないように避難をしていると、程なくして4人組の冒険者(やっぱりプレイヤーだな)が走ってくるのが見えた。

 同時にブーンと羽音が幾つも重なって聞こえて来る。

 ふむ、どうやら蜂の巣でも突いたみたいだな。大体10センチくらいの蜂が2、30匹。

 蜂の巣、はちみつ、ローヤルゼリー。この世界でも高級食材だよな、きっと。

 他にもプロポリスとか回復ポーションとかの材料にもなるんじゃないかな。

 っと、そんなこと考えてるうちにとうとう冒険者たちが蜂の群れに捕まった。

 このままだと程なくして拠点送りだろうな。


「仕方ない。いくぞスライム」

「すらっ」


 冒険者たちに群がる蜂に被せるようにスライムを投げて『粘着』を発動させる。

 Gと違って蜂ならそんなに忌避感も起きないし、見た所あれは魔物だ。

 ペタペタとスライムにくっついた蜂は、そのままベシベシとスライムに叩かれて光になって消えていった。

 やっぱり1匹1匹は耐久力が低いな。

 うちの成長したスライムなら十分に倒せる。

 俺のアイテムボックスには『キラービーの針』が増えてることから、あの蜂はキラービーと言うらしいな。

 そうして10回くらいスライム投げた時にはキラービーは姿を消していた。


「おーい、無事かい?」

「あ、はい。救援ありがとうございます」


 助けた冒険者たちはぱっと見高校生くらいの4人組だ。

 聞けば実際同じ高校に通ってる友達同士でパーティーを組んでやっているそうだ。


「さっきまでは順調だったんですけど、スロウモンキーの投げた礫が運悪くキラービーの巣に当たってしまいまして」

「やっぱ範囲攻撃が出来る魔法使いが必要だよな」


 ジョブは剣士のタチバナ、騎士のルータス、アーチャーのローラ、ヒーラーのシェンナと。

 なるほど。確かに範囲攻撃キャラが居ないな。


「お兄さんのさっきのあれは何ですか? 魔法とも違う気がしましたけど」

「ああ、あれは俺の召喚したスライムだ。粘着能力があったから、小型の魔物相手なら通用するかなって思ってやったらうまく行ったよ」

「召喚士ですか。良いですね。敵に合わせて召喚する魔物を変えれば戦術の幅も広がりますし」

「あーうん。そうだな」


 俺はスライムしか召喚出来ないんだけどな。

 まぁそれは言わなくてもいいか。


「それで? 君たちはこれからどうするんだ?」

「はい、受けてたクエストは達成出来てるので一度街に戻ろうと思います。

 今ので回復アイテムも無くなってしまったし、シェンナの魔法だけだと追い付かないので」

「そっか。じゃあ気を付けてな」

「はい。ありがとうございます。

 っと、良かったらフレンド交換させてもらっても良いですか?

 今度このお礼もしたいですし」

「これくらい気にしなくても良いけどな。

 でもフレンド交換はしようか。今後一緒にクエストを受ける機会もあるかもしれないし」

「はい!」


 やり方を聞きながら4人とフレンド交換を済ませた。

 ……何気にこの世界で初のフレンドだったな。

 ここに居るって事はレベルも似たようなものだろうし、また会う機会もあるかな。


 彼らと別れた俺は蜂の巣があるらしい森の奥へと足を踏み入れた。

 そして見つけた蜂の巣は、ミツバチの巣のような可愛らしいサイズではなく、巨大な蟻塚のような塊が木の枝と枝の間に乗っかっていた。

 ……あれで良く枝が折れないな。

 まぁそれは良いとして、どうするか。

 スライム4体で包み込んで粘着で一気に攻められたら行けるかなって思ってたんだけど、そんなに簡単にはいかないか。

 リアルだと煙で燻したり麻酔で眠らせたりするんだろうけど、そんな都合の良い物も無いしな。

 俺は他の魔物に注意しつつぐるっと巣の周りを確認する。


「ふむ。これなら行けるかもしれないな」


 外から確認出来た巣の出入り口は6か所。

 1つ1つは直径10センチほどで蜂たちがギリ通れる程度のサイズしかない。

 恐らくは外敵が容易に侵入出来ないように小さくしているのだろう。

 俺はスライム2体に分裂してもらい5か所の出入り口を粘着スキルで塞いでもらった。

 同時に残り1か所の出入り口から10センチサイズに分裂したスライムを次々と投入し巣の攻略をお願いする。


「さっきも思ったけど粘着スキルは小さい魔物には良く効くな」


 巣の中がどうなっているのかは伺い知ることは出来ない。

 今出来ることは再召喚が出来るようになった=投入したスライム本体がやられたらすぐさま再召喚をして投入することだけだ。

 万が一塞いでいた出入り口が突破された場合も考慮して俺自身は巣が見えるギリギリまで離れている。

 アイテムボックスの中を確認すればキラービーの針やハチミツなどが増えているから順調に攻略はできているはず。

 ただ、蜂も必死なのか巣に突撃したスライムのやられる速度も半端ないな。

 まぁ言っても俺は延々と召喚したスライムを巣の入口に投げ込むだけのお仕事だけど。


 そして攻略を開始してから1時間が経過した頃。


<キラービーの巣を攻略しました>

<キラービーの巣の攻略に伴い、キラービー召喚スキルを開放……失敗。

 代わりに既存の召喚スキルの強化を行います>


 よし、無事に攻略出来たようだ。

 しかもうれしい誤算でまた召喚スキルが強化されたらしい。


『『『ブーンッ!!!』』』

「うぉっ。スライム達、撤退だ」


 巣の外に出ていたキラービー達が帰ってきたらしい。

 巣の惨状に怒って俺の方に殺到してきた。

 仕方ないので一目散に逃げつつスライムで迎撃しながら何とか森の外まで生き延びることに成功した。

 当初の予定では薬草採集だけだったのに人助けから蜂の巣退治と随分忙しかったな。

 その分、見返りも大きかったけど。

 さて、落ち着いたところで今回の強化の内容は何かな?


名前:

種族:スライム

レベル:18

HP:44/44

MP:26

STR:20

INT:12

VIT:28

DEX:15

AGI:24

LUK:33


スキル:

分裂、粘着、打撃力アップ、刺突力アップ、硬化、毒撃


魔法:



 ……上がり過ぎじゃね?

 あれ、街に行く前はレベル12だったよな?

 パラメータもかなり上がってて特に素早さ(AGI)がかなり上がってる。

 これはあれか? 蜂の素早さが移った感じなのか?

 このままだと俺のパラメータを抜かれる日も遠くないかもしれないな。

 スキルも刺突力アップと毒撃ってのが増えてるし。

 この二つはまんま蜂の針攻撃を踏襲した感じだろうな。

 毒の威力がどれくらいかが気になるところだけど、その検証はまた今度だ。

 街に戻った俺はレスさんの工房へ。


「いらっしゃいませ~」


 今度は流石にGが出ることもなく普通に迎えられた。


「こんにちは、レスさん」

「あ、シュージさん。お帰りなさいです。

 薬草の方は無事に採取出来ましたか?」

「はい、色々と。ただ教えて貰った活力草以外、見分けが付かなかったので手当たり次第採ってきたので確認してもらえますか?」

「分かりました」


 確認を取ってからカウンターの上に今日の戦利品を出していく。

 えっとまずは活力草だろ。次に草B、草C、草D、草E、草F。木の実A、木の実C。

 草に関しては両手で抱える籠一杯分くらい採れてた。


「……」

「……多すぎましたかね?」

「そうですね。シュージさん、1日でこれだけ採れるなら薬草採集だけで十分生計を立てられますよ」

「そう言ってもらえるのは嬉しいですが、流石に本業にする気はないですね」


 リアルなら面白そうだけど、ゲームの中で延々とルーチンワークはしたくないな。


「それで、活力草以外のものが何か分りますか?」

「はい。こちらは毒草でこちらは逆に解毒草です。こっちは……」


 順に説明してもらう。

 どうやら草の内訳は活力草が5割、解毒草が1割、毒草1割、麻痺草1割、その他2割とやっぱり活力草がよく採れるみたいだ。

 あと、嬉しい事に木の実と草の幾つかは香辛料やハーブで料理に使えるそうだ。

 まだこのゲームでは料理とかしたことないけど、アイテムボックスの中にはウサギの肉を始め、食材が結構溜まってきたので、そっちに手を出してみるのも面白いかもしれない。


「あとキノコも採れたんですよ」


 そう言ってキノコFとキノコHを取り出すと、バッと音が立つ勢いでレスさんが飛び退いた。


「ちょっ。気軽にそんな危険なものを取り出さないでください!!

 というか、どうやって採ってきたんですか!?」


 キノコFは猛毒茸で一つで熊さえ殺せるそうだ。

 さらにキノコHは幻覚茸。食べると素敵ハッピーな夢が見られるというが食べ過ぎると廃人になるという。どこの麻薬だよ。

 どちらも採ろうとすると胞子を出して威嚇、さらにその胞子も吸い込めば死に至る猛毒であるために直接採ることは通常不可能だそうだ。

 俺の場合いつの間にかスライム達が回収してきてくれたんだけど。

 あいつら呼吸とかしないから大丈夫だったんだな。

 そしてこのキノコ達は犯罪にも使われる危険なもので、持っているだけでも職質を受けるし一般の人に対して使ったら捕まって重い罪に問われるので注意してくださいと言われた。



後書き掲示板:

No.153 通りすがりの冒険者

最初の街周辺の森であまり人を見かけないんだけどみんなどこ?


No.154 通りすがりの冒険者

次の街に行ってると思われる。


No.155 通りすがりの冒険者

レベルさえ上がってればそっちの方がうまみが多いからね


No.156 通りすがりの冒険者

東の森とか、少し奥に行くとサルがウザい


No.157 通りすがりの冒険者

それ分かる。あいつら木の上から攻撃してくるし追ったら逃げるしノーコンだから勝手に周りの魔物を巻き込むんだよね


No.158 通りすがりの冒険者

リアルでも野ざるは面倒


No.159 通りすがりの冒険者

ゴブリンや狼は少数なら良いんだけどね。時々団体さんがいるのが怖い。


No.160 通りすがりの冒険者

それでいてドロップしょぼいからな


No.161 通りすがりの冒険者

南にも森は広がってるけど、そっちはそっちで虫が多いので毒消し必須


No.162 通りすがりの冒険者

毒耐性取るために通うのが一般的かな。で、取れたらおさらば。


No.163 通りすがりの冒険者

麻痺→毒→めまいの3コンボで動けないままアボーン

お陰で各耐性Lv1取れたけど。


No.164 通りすがりの冒険者

耐性は後から結構重要になりそうだから早めにとれて良かったじゃん


No.165 通りすがりの冒険者

私耐性上げるために毒薬と解毒薬を交互に飲んでるよ

この舌にビリビリッとくるのが良いよね


No.166 通りすがりの冒険者

・・・・・・ソウネ


No.167 通りすがりの冒険者

良い子の皆はマネしないようにね

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