娘が欲しくば試練を乗り越えてみよ
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皆様お読みいただきありがとうございます。
コンディさんの件はこれで無事に収まったかに見えた。
が、しかし。
伯爵はまだ納得しきれていないようだった。
「……あなた?」
「分かっておる。コンディの幸せが最優先だ。
しかし、シュージ君。我が家に連なる男児となるならば一つ試練を受けて頂く」
「試練?」
「なに、私が指定したダンジョンに行って見事そこを踏破してきてほしい。
ダンジョンの名を『秘密の花園』という」
「お父様!!」
ダンジョン名を聞いたコンディさんが慌てて立ち上がった。
そんなに強い魔物が出るダンジョンなのだろうか。
「そこはあまりに危険ではありませんか!?」
「安心せい。ダンジョン内に魔物はおらん。
レベルの低い彼でも十分に踏破できる可能性はある」
「しかしそこは熟練の冒険者ですら一度入れば二度と出てこれない場所ではありませんか。
私は反対です!!」
「だがしかし、この試練を乗り越えねば当家は彼を歓迎することは出来ん」
声を荒げて言い争う伯爵とコンディさん。
聞いた限り、魔物の出ない珍しいダンジョンらしい。
魔物が居ないのに生還出来ない人が居るって事はダンジョン自体に何かがあるという事か?
それよりなにより。
「あの、伯爵。
『秘密の花園』とは大そうな名前ですが、踏破した証明は何ですればよいのですか?」
「それなら心配はいらん。
最深部に行けば1体の魔物が居る。その魔物から踏破証明のアイテムを手に入れる事が出来るであろう。
もっともあの方はもう魔物というより神獣に近い存在であるが」
「シュージ様。いけません。『秘密の花園』は大迷宮なのです。
ただの人であるシュージ様では中に入ってしまえば方向感覚は失われ、延々と迷宮内を彷徨い歩くことになり、最悪2度と出てこれません」
なるほど。
迷路を抜けた先、ゴールには景品が待っているって事か。
名前からしてバラ園なんかに造られる生垣の迷路の巨大版かな。
「正しき道筋を知る術は当家の血を引く男児にのみ受け継がれている。
その為、本来ならこのダンジョンの踏破は当家を継ぐ者に与えられる試練なのだ。
残念だが君にその方法を教えても使えないだろう。
だから自分の知恵と記憶を頼りに進むしかない」
重々しく言う伯爵。
でも、それってもしかして。
「最奥に居る魔物というのは初代にリンゴを授けたという樹の魔物ですか?」
「……よくわかったな。かの魔物は試練を乗り越えた者のみを祝福する」
「なるほど。ならこの試練、受けない訳には行かないようですね」
「どういうことだ?」
「俺がここに来た本来の目的は、そのリンゴの実を生らせる魔物の所在を教えて貰うことだったんです。
多分門外不出の情報だと思っていたので、こんな風に教えて貰えてむしろ感謝したいくらいですよ」
「昔は一般公開された情報だったのだよ。
最奥に到達出来た我が家の興隆ぶりを見て後を追おうとする者が絶えなかった。
だが余りに未帰還者が多くてな。今は仕方なく入口を制限することになったそうだ」
「そうでしたか」
しかし、力自慢の冒険者が迷うのは分かるけど、斥候系の冒険者までってことは相当複雑なのか。
「ちなみに、迷宮は奥に行くほど複雑になり、後半は行き止まりに辿り着くと段々強力な罠が待っているそうだ。私は掛かったことが無いがね。
なので正しい道順の判別法を理解せずに進めばすぐに行き詰まるだろう。運だけでは踏破出来ぬという事だ。
死にたくなければ、後半に踏み込む前に一度立ち止まりよく考えることだ」
魔物はいなくても罠はある、か。
なら右手の法則で突破する訳にも行かないか。
「もちろん空を飛んだり壁を壊すことは出来ないのですよね?」
「そうだ。上空には見えない壁があるのか壁の高さ以上に飛び上がることは出来ん。
また壁を破壊すると、その時点でダンジョンの構造が変わり罠が増え、それまで居なかった魔物が現れる。
一応言っておくが地面を掘ることも出来んからな」
正攻法で突破するしかないってことか。
でも正しい道順を知る方法があるなら、それさえ分かれば楽勝なんじゃないか?
まぁ簡単に分かるようには出来ていないんだろうけど。
「分かりました。では早速挑戦させて頂きたく思います」
「そうか。迷宮までの案内はビルマックにさせよう」
「私も入口までご一緒します」
「好きにするがいい。だが、一緒に中に入る事は罷りならんぞ」
「はい」
そんな訳で俺はビルマックの案内でコンディさんと一緒に迷宮の入口へと向かった。
その道中。
ビルマックが楽しそうに口を開いた。
「あれでいて旦那様はシュージ様の事をいたく気に入っているのです」
「そうだったんですか?」
「はい。コンディ様の上の姉2人が婿を連れてきた時にも同様に旦那様が殴りかかっておりましたが、今回のように殴り返された事は初めてでございました」
「そういえば。あの時は咄嗟に反撃してしまいましたけど、あれで良かったんですね」
「その通りでございます。常日頃から『私に反抗の一つも出来ないようでどうする』と愚痴をこぼしておいででしたから」
娘を持った父親は理不尽だな。
婿養子で来た人が嫁の父親を殴り返すって早々出来ないだろうに。
「この試練についても、お出しになったのは3人の中でシュージ様のみでございます」
「それだけ期待されていると?」
「そう言う事でございます」
道中、屋台が出ていたので団子とどら焼きを買ってみる。
長丁場だっていうし、色々食糧もあるに越したことはない。
というか、こっちには餡子とかあるんだな。
そうして色々と物色しながら歩き、街の南端に辿り着いた。
「さぁ着きましたぞ」
「って、ビルマックさん。もしかして街の南端がダンジョンと隣接してるんですか?」
「はい。なので『秘密の花園』という名ではありますが、公然の秘密とでもいうべきですな。
あ、もちろん最奥部に何があるかを知る者は伯爵家に連なる者のみですが」
俺達の前には想像通り緑の壁が聳え立っていた。
高さにして4メートル近くあるな。これなら大型の種族でも頭が出ないだろう。
そして入口には茨が巻き付いた門がある。
「私が案内出来るのはここまでです」
「いえ、ありがとうございます。ビルマックさん」
「どうぞご無事でお帰りください」
「はい」
「シュージ様!」
それまで黙って付いて来たコンディさんが、体当たりするように俺に抱き着いて来た。
「私が無理を言ったばかりにこのような事になってしまい申し訳ございません」
「いえ、決してコンディさんのせいじゃないですよ」
「必ずご無事で帰って来てください。もし無理そうなら途中で帰って来ても……」
「コンディさん」
「は、はい」
不安そうな声を出すコンディさんを遮って、その肩に手を置いた。
「俺を信じて待っていてください」
「はい。お早いお帰りをお待ちしております」
「うん」
「あとこれを」
「これは?」
「お守りです。小さいころに父からもしもの時はこれを握りしめて帰りたいと願えば、きっと無事に帰れると渡されました」
差し出されたのは黒い真珠っぽい石が付いたネックレス。
コンディさんの説明からして帰還の魔道具か?
折角だから受け取っておくか。
「ありがとうございます。では行ってきます」
「はい、行ってらっしゃませ」
そうして二人に見送られて俺はダンジョン『秘密の花園』へと足を踏み入れた。
後書き掲示板:
No.631 通りすがりの冒険者
第21回武術大会、予選終わった
No.632 通りすがりの冒険者
今回本選出場者で注目は?
No.633 通りすがりの冒険者
前回優勝のハリボテンダー
準優勝のチョクバッチ
あと予選上がりのカルキー
このあたりは見逃せないな
No.634 通りすがりの冒険者
武術大会は会場が狭いからな
遠距離キャラは活躍しにくい
No.635 通りすがりの冒険者
せめてチーム戦ならなぁ
No.636 通りすがりの冒険者
半年に1回の大会ではチーム戦だって話だよ
No.637 通りすがりの冒険者
次はいつだっけ?
No.638 通りすがりの冒険者
再来月だったかな
No.639 通りすがりの冒険者
ということはイベントが終わった後か
No.640 通りすがりの冒険者
その頃には攻略組は3次職に上がってそうだな
No.641 通りすがりの冒険者
2次職と3次職でどれくらい能力に差が出るかだな
No.642 通りすがりの冒険者
バランス壊れるレベルなら部門分けたりするんじゃね?
No.643 通りすがりの冒険者
個人戦ならそうなんだろうけどな
No.644 通りすがりの冒険者
俺としては最強を決めるのに一切の制限なしにしてほしい
No.645 通りすがりの冒険者
それは確かに。
結局このゲーム多種多様なジョブがあるけど、どれが強いんだろうな
No.646 通りすがりの冒険者
それはプレイヤースキルによるだろうけどな。
それでも堅実なジョブの人は堅実なプレイをするし、
トリッキーなジョブの人はやっぱり1か8かになりがち。
No.647 通りすがりの冒険者
ハマるとトコトン強かったり、地形によって強さが全然違ったりな
No.648 通りすがりの冒険者
それでも攻略組トップのアドラさんはやっぱり強い
攻防一体の剣技は見てて惚れ惚れする。
早すぎて半分見えないけど
No.649 通りすがりの冒険者
あの人は地力も装備もかなりこだわってるからなぁ
No.650 通りすがりの冒険者
あれを倒すとしたら、正攻法では難しいだろうな
No.651 通りすがりの冒険者
距離を取れれば魔法で吹き飛ばすって手もあるけどな
No.652 通りすがりの冒険者
それを突破してこそのアドラさん!
No.653 通りすがりの冒険者
次のレイド戦も参戦よろしくお願いします!




