表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/59

スライムにだってして良いことと悪いことがあるんです。きっと

ちょうどよい切れ目が無かったので長くなってます。

 ダンジョンを出たらなんか通知が幾つも出てきた。

 一番気になるのは既存の召喚スキルの強化ってやつだろ。

 さてさて、何が変化したかな?


名前:

種族:スライム

レベル:12

HP:24/24

MP:12

STR:11

INT:4

VIT:13

DEX:7

AGI:6

LUK:17


スキル:

分裂、粘着、打撃力アップ、硬化


魔法:



 パラメーターは微増ってところか。いや前から1LV上がっているし元の値から考えれば十分な上がり具合か。

 それにスキルが2つも増えてるな。

 打撃力アップに硬化か。名前の通り物理攻撃力と防御力が上がるんだろうな。

 ……ふと思ったけど、このステータスならウサギに勝てるんじゃ無かろうか。

 街に戻りがてら試してみるか。

 草原に戻れば早速ウサギが居たのでスライムに攻撃させてみる。


「スライム、あのウサギを攻撃だ」

「すら!」


 ビシッと敬礼したスライムはポンポンと跳びはねながらウサギに向かっていく。

 その光景をみた俺はというと、


「おお、軽快に跳びはねてるじゃないか。やれば出来るんだな」


 感動していた。

 もちろん、今でも自分で歩いた方が早いのは間違いないが、以前に比べたら飛躍的な進歩だ。


「行け、そこだ」

「すらっ」

ドンッ。


 おぉ、ウサギを弾き飛ばした。

 そしてウサギの反撃。


「きゅい」(ぺしっ)

「すらっ」

「た、耐えたーー!」


 昔は1撃で光にされていたのに今ではびくともしない。

 そこから更にスライムの攻撃。今度こそウサギは光に変わった。


「よぉしよしよし、よくやったぞ~」


 無事に帰ってきたスライムを思いっきり撫でてやる。

 いかんいかん。まるで息子の立ち上がりを見守る父親のような心境になってしまった。

 でもこれでスライムでも成長すれば強くなることが証明されたな!

 そうして街の入口に戻ってきた俺はふと気が付いた。


「そういえばまだ街に入ったことなかったな」


 ログインしてすぐにスライムの検証を始めて、スライム投げに没頭してたからな。

 幸い初期装備でウサギやゴブリンなら勝てたし。

 でも流石にこれ以上の難易度の場所に行くなら装備もそうだし回復ポーションなんかも揃えておかないといけないだろう。

 あと冒険者ギルドに行ってクエストをクリアしたりドロップアイテムを売ったりな。

 そうしないと金がない。

 現在の所持金は最初から持ってる100Gだけだ。

 これじゃあポーション1つ買えればいい方だろう。


 そんな訳で、やってきました冒険者ギルド。

 剣と杖のマークの看板が付いた扉をくぐり抜ければ、想像通りの光景が広がっていた。

 受付カウンターが3か所あって、その横に掲示板、反対側に待ち合わせスペース的なテーブルセット。

 冒険者たちもちらほらと居て掲示板を眺めてたり仲間で集まって談笑に耽っている。

 幸いカウンターは空いていたので、待つことは無かった。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件ですか?」


 にこにこと営業スマイルで挨拶してくれる受付嬢。えっとエリーゼさんか。

 同時にダンジョンの時のようにウィンドウが出てくる。


『新規登録』『クエスト受付』『クエスト報告』『買取』

(※選ばなくても直接会話で進めることも可能です)


 2行目に補足が付いている。

 なるほど、確かにこうして対面してるのにウィンドウ操作だと味気ないというか殺伐としてていやって人も居るよな。俺もどっちかというとそっち派だ。

 なのでウィンドウを操作することなく話を進めることにした。


「えっと、初めてここに来たんですが、登録ってどうすれば良いですか?」

「新規登録ですね。ではこちらのプレートに手を置いてください」


 そう言って差し出されたA5サイズの金属板に手形を付けるようにすると、一瞬板が光った。

 どうやらこれだけで登録は完了したらしい。

 手を離したらプレート上に俺の名前とジョブ、後はランク情報が記載されていた。


「シュージ様ですね。これで登録は完了です。

 続きまして、冒険者ギルドのシステムについてご説明させて頂いてもよろしいですか?」

「はい、お願いします」


 説明された内容は、大体よくあるゲームの冒険者と同じだった。

 ランクはGから始まってSSまで。

 ランクAまでは一定基準のクエストポイントを貯めて試験を受ければ昇格できるらしい。

 ランクSは国に対して大きな貢献をしたと認められた場合になれるそうだ。

 さらにランクSSは世界の危機を救う程のことを成し遂げた、所謂英雄の為に用意されたもので、この国の初代国王を始め数人しか存在していないという。

 またクエストの受付、報告およびドロップ素材の買い取りは、カウンターに来なくてもギルドの中ならどこでも出来るらしい。

 なるほど、それでカウンターに全然人が居なかったのか。

 もちろんカウンターでやり取りするのも歓迎だそうなので、俺は今後もお世話になることにしよう。


「早速何か依頼を受けられますか?」

「それならまず素材の買い取りをお願いできますか?」

「かしこまりました」


 そうして再び買い取り用のウィンドウと自分のアイテムボックスのウィンドウが出てきた。

 まぁ、突然ここでウサギの毛皮とかをドバドバ出す訳にもいかないもんな。

 ウィンドウを操作して溜まっていたウサギの毛皮、あとゴブリンからドロップしてた魔石も買い取りウィンドウに移してOKボタンを押した。


「はい、確認致します。

 ……あら、魔石がこんなに沢山。少々お待ちくださいね。

 …………お待たせしました。

 シュージ様は既にずいぶん多くの魔物を討伐されているのですね」

「はい、さっきまでゴブリン狩りに精を出していました」

「ははぁ。確かに『ゴブリンの巣』も攻略済みと出ています。

 シュージ様は優秀なのですね」


 どうやら今の一瞬で俺の討伐記録をチェックしていたようだ。


「それではシュージ様。

 規定数の魔物の討伐および魔石の納品が確認出来ましたので、早速ですがFランクへ昇格させて頂きます」

「え、もうですか!?」

「はい。Fランクへの昇格条件は最低限魔物と戦えることの確認と魔石の納品のみとなっております。

 Eランク以上には、戦闘のみならず各種クエストを達成する必要がありますよ。

 それと、先ほどの買い取り結果は17720Gとなります」


 おぉ。17720円(円じゃないけど)。

 意外と多かったな。あとは物価がどれくらいか次第だけど。


「今受けられる依頼って何がありますか?」

「はい、各種魔物の討伐および素材、魔石の納品依頼は常時出させて頂いています。

 他に、薬剤師のレスさんから薬草採集並びに調合手伝いの依頼、

 鍛冶師のガントさんから鉱石採掘並びに鍛冶手伝いの依頼があります」


 ふむふむ。採集と採掘はチュートリアルクエスト的な位置づけかな。

 回復ポーションとかは自作出来るようになるとお金の節約になるだろうし早めに受けておくか。


「なら薬草採集の依頼を受けます」

「かしこまりました。初回は薬草の説明などもありますので、この依頼票を持ってレスさんの工房で詳しい話を聞いて来てください。

 工房の場所はギルドを出て左に2ブロック進んだところです。薬瓶の看板が出ているのですぐ分かると思います」

「分かりました。行ってきます」

「お気をつけて」


 エリーゼさんに挨拶をして冒険者ギルドを出た俺は左へ。

 えっと、あれか。なるほど、分かりやすいな。

 表の看板もさることながら、工房の前に行くとハーブティーのような匂いが漂って「きゃーーーー!」って悲鳴!?

 工房の中から悲鳴が聞こえてきたので慌てて中に飛び込んだ。


「大丈夫ですか?」

「助けてください!!!」


 そう言って俺に抱き着いて来た女の子。

 エプロン姿からしてこの工房の店員さんだろう。

 ただ工房内をざっと見渡しても特に不審者がいる訳でも魔物が居る訳でも無い。

 唯一籠がひっくり返って中に入っていた薬草が散乱しているくらいか。


「一体何があったんですか?」

「あ、そ、その。ご、ごきっ」


 ごき?って、あぁ。Gか。

 女性が悲鳴を上げて怯えて、上手く名前も出したくないっていったらGOKIBURIだろう。

 その証拠にカサカサッと小さな音と共に部屋の隅で黒い何かが動いた気がする。


「俺が退治するんで大丈夫ですよ」

「はい、よろしくお願いします」


 安心するように声を掛けてからそっと抱きしめられている手を離してもらい、一旦外に出ていてもらう。

 さて、とは言ったもののどうやって退治するか。

 リアルで考えれば丸めた雑誌、ホウ酸団子、殺虫スプレー、粘着罠が一般的だろう。

 ……粘着罠?

 ふとスライムと目が合う。

 確かにゴブリンリーダーの足さえくぎ付けに出来るスライムの粘着スキルならGくらい余裕だろう。

 だけどな。


「スライム……」

「すら?」


 さ、流石に可哀そうな気がしてきた。

 今まで散々投げ飛ばしたり盾に使ったりしてきた俺だけど、Gを粘着させたら多分その後は消化吸収してしまいそうなイメージがある。

 流石にそれは無いんじゃないかって思う。

 もし俺がこいつだったら二度と召喚に応じなくなること間違いなしだ。

 なのでここは心を無にして。


「えいっ」ぷちっ


 近くを走って来たところを足で踏みつぶした。

 くっ、この一瞬足から伝わる感触に寒気がっ。


「ふぅぅ~~」


 後は死骸をポイすればミッションコンプリートだ、と思ったけど死骸は光になって消えてくれた。

 良かった。

 ひとまず工房内にいたのはその1匹だけだったので表で待っていた店員さんを呼び戻した。


「この度は本当にありがとうございました。私は薬剤師のレスと言います」

「あ、あなたがレスさんだったんですね。俺はシュージです。

 冒険者ギルドで依頼を確認して来たんですよ」

「そうだったんですね。ありがとうございます。

 最近は回復ポーションの需要が増えて薬草の供給が間に合わなくて困っていた所なんです。

 最近の冒険者の方は薬草採集みたいな地味な作業は敬遠しがちですし」

「なるほど。じゃあまずは薬草を採ってこれば良いんですね?」

「はい。こちらが回復ポーションの材料になる活力草です。

 根が残っていれば1日で伸びてきますので、採取する際には根まで抜かないように気を付けてください」

<薬草知識Lv1を手に入れました>


 そう言って見本に渡してくれたのはシロツメクサ=四つ葉のクローバーに似た草だった。

 同時にスキル取得のアナウンス。多分これで外に行けば薬草が採取出来るようになっているだろう。


「分かりました。ついでに毒草もあれば採ってきたいんですけど」

「毒草?何に使うんですか?」

「毒団子を作って部屋の隅とかに置いておけばさっきのアレがまた出てきても退治できるかなって」

「!!それは良いですね。東の森に行けば幾つも毒を持った植物があるので色々採ってきてください。

 私の方で調合レシピを考えておきますので」


 かなり食い気味な回答が返ってきた。

 よほどあれが嫌いだったんだな。

 そんな訳で工房を急き立てられるように出た俺は街を出て東へ。


「あ、結局武器もポーションも買ってなかった。まいっか。俺にはスライムがいるしな」

「すらっ!」


 心なしか気合の入った返事が返ってきた。

 やっぱりあの時あれにけしかけなくて正解だったな。

 なんて思っている間に森に到着。

 辺りを見渡せば、さっき見せて貰った活力草が薄っすら輪郭が光って見える。

 他にも幾つも光っているのがあるので、それらも薬草の一種なんだろう。

 折角だから採れるだけ取っていくか。


「お前たちも採取出来るのか?」

「「すら」」

「よし、ならジャンジャン採って行ってくれ。ただしあまり離れ過ぎないようにな」

「「すらっ!」」


 多重召喚もレベル2に上がったお陰で一度に4体まで召喚出来るようになったスライム達に指示を出して採取を始める。

 やっぱりこういうのは手数を増やすのが効果的だよな。

 人海戦術ならぬスライム海戦術だ。

 四つん這いになりながら光っている草を次々と摘んでいく。

 時々キノコもあったので光ってはいないけど一緒に回収しておく。

 キノコ=食用or猛毒っていうのはこの世界でも通用すると思いたい。


「みんなどうだ~?」

…………


 あれ?返事がない。どこいったんだ?

 離れすぎるなって言っておいたから迷子じゃないと思うんだが。


「召喚『スライム』」

「ぽよ」


 試しに召喚してみると出てきた。

 と言うことはいつの間にか倒されていたのか。

 しかし魔物が襲ってきた訳でも無いのに何が起きたんだろう?

 原因を調べるために今度はスライム達だけに採取をさせて俺はその様子を伺ってみた。


「すらっ」

「すら」

「すら?」

「すらすら」


 ぽよぽよと動き回りながら薬草に近づくとパクっと食べるようにして採取をするスライム。

 アイテムボックスの中を確認するとちゃんと活力草のストックが1つ増えている。

 それからもパクパクと食べてピカッと光って消えるスライム……って消えた!?


「今のって倒された時とおなじエフェクトだよな」


 スライムが消えたところを調べると活力草とは別の薬草が生えていた。

 もしかしてこの草が原因か?


「召喚『スライム』」

「ぽよ」

「この草を採取してみてくれ」

「ぽよっ」

キラッ

「スライムーーー」


 無事に採取は出来たけど、同時に光になって消えるスライム。

 採取出来た薬草をアイテムボックスから取り出してみるも、薬草知識のレベルが足りなくて何かは分からない。

 恐らく毒草だったんだろう。それを肯定するかのように再び通知が流れた。


<毒耐性Lv1を取得しました>

「は?」


名前:シュージ

種族:人間

ジョブ:固有召喚士(スライム)

冒険者ランク:F

基礎レベル:5

ジョブレベル:7

HP:132/145

MP:168/185

STR:22

INT:34

VIT:27

DEX:23

AGI:20

LUK:25


スキル:

投擲術 Lv3、格闘術 Lv2、盾術 Lv1、高速召喚 Lv2、多重召喚 Lv2、HP自然回復Lv1、MP自然回復Lv2、毒耐性Lv1、薬草知識Lv1


魔法:

召喚(スライム)Lv12、身体強化(自) Lv2、身体強化(他) Lv2


称号:

意志を貫くもの、ゴブリンバスター



 ゴブリンの巣を攻略したお陰で全体的にレベルが上がっているのはいいとして、確かに毒耐性スキルが増えていた。

 もしかして、召喚獣が経験した内容が召喚主の俺にも返ってくるってことなのか。

 あ、いや。そうじゃないと召喚士のレベルが上がらなくなるか。

 でもそうすると、今回みたいに毒草を食べるような危険な経験も安全に行えるって事か。


「すげぇ。やっぱりスライム万能か!」


 もちろん他の召喚獣でも同様の事は出来るんだろうけど、他所は他所だ。

 今はスライムの新たな活用法が見つかったことを喜ぼう。


「よし、そうと分かればジャンジャン行こうか」


 スライムを召喚しては手当たり次第に採取をしてもらう。

 大体4回に1回くらい毒草に当たるようで光になって消えるけど、すぐ再召喚出来るのでペースは落ちない。

 また分裂スキルを使った後の分体でも採取は出来るみたいなので更にペースは上がった。

 上を見上げればちらほらと木の実も見えた。


「あれも採れたら何かに使えるかもな。よし、行けスライム」

「すらっ」


 スライム投げの要領で木の上にスライムを投げ上げれば、自分ではなかなか採れない場所の木の実も余裕で回収出来た。

 そうして気が付けばアイテムボックスの中にかなりの量の採集物が溜まっていた。



後書き掲示板:

No.32 通りすがりの調合士

急募)ランク3以上の毒草もしくは毒素材


No.33 通りすがりの冒険者

ランク3って言ったら毒蛇と毒蜘蛛のレアドロップか?


No.34 通りすがりの冒険者

第2の街の先なら通常ドロップもするよ


No.35 通りすがりの調合士

最初の街の近くでもレア素材として採取で見つかるみたい


No.36 通りすがりの冒険者

ちょっ。それって確かあれだろ?

見つけた奴は死ぬっていう都市伝説。


No.37 通りすがりの冒険者

あ、それは間違いだよ。

森で突然死した奴のアイテムボックスに採取した記憶もない猛毒キノコが入ってたんだ。

そして驚いて街で騒いだそいつは今度は衛兵に捕まって連行されていったという。


No.38 通りすがりの冒険者

その後彼を見たものは誰もいなかった……


No.39 通りすがりの冒険者

余計こえぇぇよ!!


No.40 通りすがりの冒険者

それよりも

>>35はなぜそんな毒素材が欲しいんだ?


No.41 通りすがりの調合士

だって毒殺ってロマンじゃない?


No.42 通りすがりの冒険者

だれかーーーー


No.43 通りすがりの冒険者

お巡りさん、こいつです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ