色々と慎重にならないと
いつも誤字報告ありがとうございます。
m(_ _)m
無事に拠点が出来たので、これで心置きなく転移が出来るな。
そう思ってゾートさんが作ってくれた転移門に入った。
<転移先を指定してください>
ん?指定?
選択式じゃないのか。なら魔王の城へ。
そう指定した瞬間、視界が一瞬で切り替わった。
「ここは……もしかして先日魔王様と会っていた会議室か」
まさか城内に転移出来てしまった。
というか、これマズくないか?
ほら、廊下の方からドタドタと走ってくる足音がこっちに近づいて来る。
そして扉の前で止まった。
「侵入者に告ぐ。部屋の中に居るのは分かっている。
その部屋の周囲は既に魔法を封じてある。抵抗は無意味と知れ。
大人しく出てくるならよし。さもなくば突入の上、問答無用で首を刎ねる。
出てきた後、不審な動きをした場合も同様だ!!」
緊張を孕んだ声が響く。
恐らく扉の外には近衛兵が多数武器を構えていることだろう。
まぁ悪いのは俺だからな。大人しく出ていくとしよう。
言葉の通りなら扉を開けた瞬間刺し殺されることもないだろうしな。
そうして扉を開けると、正面に1人。左右に3人ずつが立ち並び、こちらに武器を構えていた。
正面の人が多分隊長かな。さっきの口上もこの人だろう。
「良く大人しく出てきたな。両手は頭の上に乗せておけ。
何者だ。ここがどこか知っての狼藉であろうな!」
「冒険者のシュージです。ここは王城ですよね。
魔王様に急ぎ伝えねばならないことがあり、このような無礼を働きました」
本当は急がない報告しかまだないけど。
でもこう言っておけば情状酌量の余地ありって思ってもらえるだろうか。
「残念だが身元がはっきりしない者を陛下の元に連れて行くわけにはいかない」
だよな。俺でもそう思う。
「では鳥獣人メイドのコンディさんを呼んでもらえますか?
彼女なら先日あったばかりですし、俺の事も分かるはずなのですが」
「ふむ、コンディ嬢か。確かに彼女なら信頼に足るだろう。
分かった。取り次ぎはしよう。だがそれまでの間、拘束させてもらうが良いな?」
「それくらいは仕方ないでしょう。
急いでいたとはいえ、城内に転移してきてしまったのですから。
待っている間に魔王様への簡単な報告も出来るでしょうし」
そうして後ろ手に縛られた上で元の部屋の中に押し込まれた。
椅子に座らされた後、両足を椅子と結ばれて念には念をと全身を椅子もろとも縄でグルグル巻きにされてしまった。
更には椅子の斜め後ろ。丁度死角になる位置に2人が立ち、不審な挙動が無いか目を光らせている。
思えば直接連絡取れるんだからわざわざ戻ってくる必要も無かったのか?
いや、その後の行動を考えれば必要な行動だったと思おう。
それでも次回からは城門前に転移するように調整しないとな。
「(魔王様。今ってお時間ありますか?)」
『(ん?この声はシュージだな。しばし待て。
今城内に不審者が現れたそうでな。
その対応を指示しているところだ)』
「(あ、すみません。それ多分俺です)」
『(なんだと!?城の対魔結界を突破されたと大騒ぎになってたんだが。
並の空間魔法師では真似できない所業だぞ)』
「(黒龍王のゾートさんに造ってもらった転移門を使ったんです)」
『(まさか本当に黒龍王と会えたのか!?……まぁよい。
詳しい話は会ってから聞こう。
今はどこに居るのだ?)』
「(先日お会いした会議室です)」
『(そうか。直ぐに向かおう)』
魔王様も忙しい筈なのにフットワーク軽いよな。
程なくしてまた廊下が騒がしくなってきた。
「あら陛下御自身がいらっしゃったんですか」
「お、コンディか。お前も呼ばれたんだな」
「城内で彼の顔が分かるのは私と陛下達だけでしょうから」
「へ、へいか!?
お待ちください。まだ身元の確認が取れておりません」
「なに心配はいらん。
それともその不審者というのは私よりも強いのか?」
「い、いえ。そのような事は決して」
「なら問題なかろう。今はお前達もそばにおるしな」
そんな会話が聞こえた後、会議室の扉が開き魔王様がたが中に入ってきた。
そして俺を見るなり魔王様は声を上げて笑い出した。
「はっはっはっ。死の大地から生きて帰ってきた勇者ともあろう者が蓑虫状態とはな」
「ほんと。このまま塔の上から吊り下げておきたくなりますね」
意外とコンディさんが笑顔でドSな発言をしておられる。
いや、これは鳥の本能的な何かか?モズの早贄みたいな。
「えっと、冗談、ですよね」
「城内に転移魔法で侵入した罪を考えればそれくらいが妥当か」
「ふふふっ」
「まぁ冗談はさておき、縄をほどいてやれ」
「では私が」
俺の後ろに回ったコンディさんが楽しそうに縄をほどいて行った。
時折コンディさんの髪が首筋を撫でるのがこそばい。
「コンディ、終わったら茶を頼む」
「はい」
「お前達もご苦労だった。もう持ち場に戻って良いぞ」
「はっ!」
兵士の皆さんはテキパキと部屋を後にし、コンディさんはお茶を取りに行った。
そうして残ったのは俺と魔王様。
「さて。落ち着いた所で話を聞こうか。
まさかこの短期間で死の大地の門番を突破して来れるとは思ってもみなかったぞ」
「死の大地の門番?」
「居なかったか?これまで死の大地に向かったものは口を揃えて入口に強力な魔物が居たと報告していたが」
……もしかしてあれか?ソニックラビット。
確かに死の大地で出会った魔物の中でもかなり強い部類だったと思う。
まぁ偶然かんちょーが刺さって走り去ってしまったけど。
「言われてみればウサギっぽい見た目の魔物が居ましたね。
倒せはしませんでしたが、何とか見逃してもらえました」
「そうかそうか。君を抜擢した我の目に狂いはなかったということだな」
俺の報告に嬉しそうに頷く魔王様。
そこでコンディさんがお茶を淹れて戻ってきた。
ポットが2つあるのは俺と魔王様で別々に淹れているのか。
手が込んでいるな。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
差し出されたお茶を一口飲むと、紅茶ともまた違った甘味のある味わいが口の中に広がる。
「これは、アップルティーですか?」
「はい。デルモント領の特産のリンゴを使用しております」
おぉ、ここでもデルモント領か。なかなかやるな。
味も香りも一級品だ。リアルじゃここまで美味いのは飲んだことがない。
「これほどまでに香り豊かなのは初めてです」
「特産品の中でも珍しいスイートハートという品種を使わせて頂きました」
「ほう」
魔王様からもため息が漏れる。
と、折角話題にリンゴが出てきたし、このまま話を進めるか。
「魔王様。実は死の大地の魔物との交渉にリンゴを使いたいと考えていたんです」
「交渉? ふむ、順を追って聞かせて貰おう」
「はい、まず……」
そこから死の大地の魔物と言っても一括りには出来ず、南北でその性質が大きく異なる事。
そして、危険となるのが北側の魔物であり、南側とは友好関係が結べそうな事。
友好関係を結ぶのにリンゴの、正確にはリンゴの原生種が欲しい事を伝えた。
「原生種とはなんだ? コンディ、聞いたことがあるか?」
「一応実家に居た頃に子守唄代わりに聞かされたことはございます。
かの地を平定した折に、そこに居た魔物と知恵比べの末、土地とリンゴの種を授かったと」
「子守唄?コンディさんっていったい……」
「ああ、彼女は現デルモント領主の3女なんだ」
「なるほど、それで」
「はい。シュージ様が仰っているのは、その魔物の事ではないでしょうか?」
「そうですね。多分それで間違いないと思います。
境界の向こう側で、こちらのリンゴとは少しだけ形状の違う実を成らせる魔物が居たんです。
残念ながら今ではもうどこかに去ってしまいましたが、デルモント領でリンゴが手に入るのを見て、その魔物の亜種、実際にはこっちが原種かもしれませんが、とにかく同種の魔物が居ると思ったんです」
先日のイニトの街周辺で起きたイベント。
その南側に発生した魔物がリンゴとマンゴーの合いの子みたいな果実を実らせていた。
あの魔物が死の大地で自生出来るなら、あそこの魔物たちのニーズをかなり満たせるはずだ。
魔物なら自走して移動してもらえる可能性もあるし、多少土地が枯れてても魔素が濃ければ生きていけるんじゃないだろうかと思っている。
しかしコンディさんは首を横に振った。
「大変申し訳ないのですが、私はその魔物の所在を知らされてはおりません」
「そうですか」
「ですが、父であれば知っているかもしれません。
代々後継者にのみ伝えられる情報というのもあるでしょうから」
「ふむ。ではコンディよ。これよりシュージに同行しデルモント領主への取り次ぎをしてきてもらえるか?」
「はい、喜んで。
シュージ様。これからよろしくお願い致します」
「あ……はい。こちらこそ」
見事なカーテシーをするコンディさんは確かにメイドというよりお嬢様だった。
ただ、ちょっと気になるのは魔王様がどことなくニヤニヤしてるんだけど。
あれは何か隠し事をしているんじゃないだろうか。
後書き掲示板:
No.22 通りすがりの冒険者
みんな明日のバザーは参加するのかな?
No.23 通りすがりの冒険者
王都の?
俺は行く予定
No.24 通りすがりの冒険者
同じく。
最近品ぞろえが凄く良くなってるからな
調味料なんかも充実してきたから、もう少しでカレーも作れる。
No.25 通りすがりの冒険者
お米は見つかったの?
No.26 通りすがりの冒険者
海の向こうにはあるって話だから、
次の海イベントで交易が出来るようになると期待してる。
No.27 通りすがりの冒険者
おっしゃ!!
俄然イベントの期待度が上がったぜ!
No.28 通りすがりの冒険者
ちなみに噂では今回から外国産の品も入って来るらしい。
No.29 通りすがりの冒険者
それは是非とも顔を出すしかないな
No.30 通りすがりの冒険者
というか、そんな外国との国交なんていつ開通したんだ?
No.31 通りすがりの冒険者
さぁ
No.32 通りすがりの冒険者
というか、外国ってどこ?
No.33 通りすがりの冒険者
これまで判明している範囲で言うと
・俺達が最初にいる王国
・北の火山地帯の更に向こうの帝国
・西の海の先(島国?)
・南西の教会都市の更に南側に共和国
・イニトの南東の砂漠の国
No.34 通りすがりの冒険者
あと魔界にも国あるかもな
No.35 通りすがりの冒険者
じゃあ天界も?
No.36 通りすがりの冒険者
まだどっちも誰も行ったという話はないから憶測でしかないけどな
No.37 通りすがりの冒険者
いや、魔界は例のあの人が行ってるって話だろ
No.38 通りすがりの冒険者
結局魔界はどこにあるんだ?
No.39 通りすがりの冒険者
さっきの国の配置から考えて……東側?
No.40 通りすがりの冒険者
そういえば誰も東側行ってないの?
ここまで情報が少ないのも不思議を通り越して怪しいんだけど
No.41 通りすがりの冒険者
一応前に一度調べに行った事があるんだが
No.42 通りすがりの冒険者
お、どうだったんだ?
No.43 通りすがりの冒険者
村が1つあったけど門前払い
それ以外は巨大クレパスのせいで先に進めず。
空を飛べれば向こう側に行けるかも。
No.44 通りすがりの冒険者
門前払いか。何か条件があるのかもな。
No.45 通りすがりの冒険者
考えられるのは冒険者ランクか、誰かの許可証とかか
No.46 通りすがりの冒険者
冒険者ランクなら当時はまだEだったな。
今はDになってるし、もう一回行ってみる。
No.47 通りすがりの冒険者
おう、がんば~~




