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うちのスライムが弱いはずが・・・・・・くっ!  作者: たてみん


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いざ死の大地へ

うーむ、2週間くらい書いては消してを繰り返したプロットがいざ本番描き始めたら9割がた無視される。

ほんとプロット通りに出来る人を尊敬してやみません。

 予想外の商談も済んでいざ死の大地へ、と思ったけど、そもそも死の大地までどれくらい掛かるんだろうか。


「リャンさん。リャンさんは死の大地には行ったことはあるんですか?」

「入口までならね」

「ここからだと何日くらい掛かるんでしょう?」

「そうだね。

 馬車で2週間と言ったところだね」


 2週間か。

 リアルで考えれば近いけどゲームで考えると遠いな。

 これはもっと早く行ける方法を模索したほうがいいか。


「より早く行こうと思ったら航空便でしょうか?」

「残念ながら向こう方面は空を飛ぶ魔物も多いからね。

 そっちに飛んでくれる人は無いだろうね」

「そうでしたか」

「そこでモモの出番さ」

「モム?」


 こてんと首をかしげるモモ。

 いや癒されるけどわかってないっぽいぞ?

 そんなモモの頭をやさしくなでながらリャンさんが続けた。


「モモには普段、荷馬車を引いてもらっているけどね。

 実はそうじゃないと早すぎて危険なのさ。

 という訳でモモ。

 今回は全速力を出してシュージ君の度肝を抜いてみようか」

「モッ!」


 モモは返事すると同時に闘気を放ちだす。

 あ、あれ?なんかこの前のレイドボスより強そうなんだけど。


「さぁ行こうかシュージ君。乗ってくれ」

「はい」


 俺たちが背中に乗ると、モモがクラウチングスタートの姿勢を取り、そして。


「モモッ!」


 掛け声一つ置き去りにして王都の前から走り去った。

 一応、俺たちの周りにはリャンさんが防壁の魔法か何かをかけてくれているお陰で突風にさらされることはなかった。

 けど周りの景色の流れが凄い。

 イメージはF1を通り越してドラッグマシーンだ。

 時速何百キロ出てるんだろう。

 これで曲がれないとか言ったら笑えないな。

 しかも気が付けば地上10メートルくらいの空中を疾走してるし。


「もともとね。モモはワイバーンなんかを捕食する側だったみたいだよ」

「それって、飛行専門の魔物より速いってことですか?」

「流石に、ドラゴンとかファルコンとかには勝てないみたいだけどね」


 それでも十分凄いんだけど。

 そうして移動する間、リャンさんはそれぞれの領地についても説明をしてくれた。

 今いるところがベーリング領、その次がバニラ領、右手にデルモント領だそうだ。

 デルモント領?どこかで聞いたような。


「……あぁ、ビルマックさんのところか。

 確かリンゴが美味しいんでしたよね」

「そうだね。あそこの果樹園は魔界でも有名だね。

 経済力でも魔界で5本の指に入る領地だよ。

 それに領地の南東側が死の大地に隣接しているからね。

 冒険者ギルドも活気があるよ」

「なるほど」

「ほら、前方に見えて来たのが領都だ」


 遠目でもすごく栄えているのが分かる。

 死の大地に隣接しててダンジョンも複数あるって言ってたから、冒険者は集まるだろう。

 特産品もあるから資金力にものを言わせて領地開発とかも力を入れているらしい。

 更には俺なんかの1冒険者に家宰を寄越すほどの柔軟性も持ち合わせていると。

 そりゃ発展するよな。


「リャンさん。

 デルモント領の死の大地に隣接した街に向かって貰えますか?」

「いいよ。そこを拠点にするんだね。

 でも領都には寄らなくて良いのかい?」

「はい。この位置なら向こうからも見えているでしょうし」

「ん?まぁそうだろうけどね。

 ではこのまま真っすぐ。目的地ガイエスの街までもう少し空の旅をたのしんでくれ」


 そうして1時間足らずでガイエスの街に辿り着いた。

 街というか、要塞だな。

 外壁が高くて厚いし歩哨も王都より多い。

 まさに最前線といった感じだ。

 門の外に降り立った俺たちは、リャンさんのお陰でほぼ顔パス。

 リャンさんもここでは行商人ではなくどこかの公爵として振舞っていた。

 そのせいで門の衛兵たちが可哀そうなくらい慌てふためいていたけど。


「ではシュージ君。私の案内はここまでだ。くれぐれも気を付けるんだよ」

「はい。送っていただきありがとうございました」

「気にしなくていいさ。モモにもたっぷりお土産を貰ったしね」

「モフッ」


 モモは返事より干し柿食べるのに忙しそうだ。

 まぁ喜んでもらえて何より。


「私はこの後、商談を行ってから自分の領地に戻るつもりだ」

「そうですか。多分この後デルモント伯爵か遣いの人が来ると思うのでよろしく伝えておいてください」


 多分さっき領都のそばを通った時に向こうがリャンさんを視認したはず。

 飛んで行った方角から目的地は簡単に分かるだろうから、ビルマックさんなら間違いなく何かアクションを起こすだろう。


「そうだね。世間話ついでに例の彫像とかの自慢もしておこうか。

 伯爵の悔しそうにする顔がいまから目に浮かぶよ」


 ふふっと笑うリャンさん。どうやら伯爵とは知り合いのようだな。

 ならきっといい感じに話を纏めてくれるだろう。


「では俺は準備を済ませたら早速、死の大地に行ってみます。

 やっぱり自分の目で実際に見ないとどうするのかも決められないですからね」

「ああ。何度も言うようだけどくれぐれも気を付けるんだよ」

「はい。行ってきます」

「すらっ」

「モモっ」


 リャンさんと別れた俺は教会と冒険者ギルドに寄ってリスポーン地点の更新などを終えた後、街を出た。

 ギルドで聞いた話によると、この先の緩衝地帯になっている丘を越えた先が「死の大地」って呼ばれる領域だそうだけど。


<警告:この先は魔物のレベルが極端に上がります。

 基礎レベルが60以下かつ3次職に転職が済んでいない場合、勝ち目は絶対にありません。

 今の貴方では無謀を通り越して無望です。ただの自殺行為です。今すぐ引き返してください>


 丘の頂上に来る手前で通知が飛んできた。

 流石、死の大地だな。

 でも俺は3次職にはなれないし。レベル60ってのも遥か先だ。

 ま、戦いに来た訳じゃないし。何とかなるだろ。

 そうして丘を越えたところで再び通知が飛んできた。


<警告を無視するのか。愚か者め>


 ……は?

 っ!?


 突然突き刺さる殺気に慌てて両籠手の防壁を展開しつつ飛びのくと、防壁を薄いガラスの様にぶち破りつつ首のすぐ横を何かが突き抜けていった。


「チッ」


 そう短く舌打ちしたのは、真っ黒いウサギだった。

 あっぶねぇ。今防壁置いて無かったら絶対に首を刈り取られてただろ。

 このままじゃまずい。何とか反撃しないと。


「スライム」

「すらっ」

「フッ」キラッ

「え、スライム?」


 何今の。ウサギの体が一瞬ブレたかと思ったらスライムが光になったんだけど。

 ジャブか、ジャブなのか!?

 視認できない程の速度って、まさにレベルの桁が違うぞ。

 これもしかして、この地域の最弱の魔物とかいうオチかな。

 今も休まずスライムを召喚しては飛び掛かってるんだけど、ウサギの体に届きもしない。

 こうなったら逃げるしかないか。


<シュージは逃走した。しかしソニックラビットに回りこまれた>

「……おいこら」


 なんなんだこの通知は。さっきから俺をおちょくってるのか?

 まぁいいや。まずは目の前のウサ公だ。

 通知の通り、逃げようとして回れ右した俺の前にわざわざ回り込んで来てくれたんだが、そんなことが出来るなら俺に一撃食らわせられただろ。

 もしかして俺を倒す気がないのか?

 今もボクサーよろしく、腕を前に構えて短いステップを踏んで俺を見ている。

 右手を突き出し「ヘイ、カモン」のサイン。

 完全に見下されているが今はありがたい。


「しゃあない。満足するまで付き合ってやるよ」

「キッ」

「まずはこれだ『分裂弾』」

「すらっ」


 先日のレイドボスにも有効だった分裂スキルを使った面攻撃。

 これなら幾ら早くても落としきれまい。


「ケッ」ブオンッ

「ちょっ、嘘だろ」


 カポエラの蹴りよろしく耳で倒立しながら両足を広げてスピンしやがった。

 巻き起こる衝撃波で光に変えられるスライムたち。

 まさか初見で対応してくるのか。

 しかし折角倒立してくれたんだ。その姿勢のまま攻める!!


「スライム連射しつつ四方から包囲だ」

「すらっ」


 だけどこれもすべて倒立したまま足捌きだけで倒していくウサ公。

 しまいには鼻歌交じりに回ってやがる。

 そんなナメプを続けるあいつにせめて一撃入れてやらないとな。


「なにせ、その姿勢には死角があるんだからな!」


 左右から同時にスライムを突撃させて奴の両足を開かせる。

 そしてがら空きになった真上から細く鋭くなったスライムが急降下アタックを仕掛けた!

 その状態ならどう頑張っても真上は見えまい。


「いっけぇーー」

プスッ


 ……ん?

 なんか凄い気の抜けた効果音がしたな。

 そしてウサ公はスライムをお尻に刺したまま固まってるし。

 ってお尻?

 まさか、ピンポイントで刺さっちゃったのか。

 次第にプルプルと震えだすウサ公。

 同時に黒かった肌が真っ赤に染まっていく。


「キ……」

「き?」

「キャアアアアーーーーー」

「っ!?」


 叫び声をあげて正に脱兎のごとく走り去ってしまった。

 言葉にすれば「エッチ~!」とか「もうお嫁に行けない~~」とかそんな感じだ。

 というか、雌だったのか。

 それを茫然と見送る俺とスライム。


「なんか、悪い事しちゃったな」

「すらっ」


 まぁ今更言っても仕方ないか。

 兎に角無事に済んだんだし、先に進むか。



一方その頃。

リ:「シュージ君は無事に死の大地に入れたみたいだね」


デ:「戻ってこないという事はそうなんでしょう。

  あの弱さでどうやって門番の試練を乗り越えたのか、実に興味深い」


リ:「彼はその前にもマグール様のブレス攻撃の直撃を受けて無事だったよ。

  異界の住人は私たちの知らない技術を持っているのかもしれないね」


デ:「ふむ。彼にはぜひとも我が領に来て頂きたいものですな」


リ:「おいおい、彼は私が先に目を付けたんだ。横取りはいけないね」


デ:「もちろん、独占する気はありませんとも。

  そんなことをすれば翌日にはマグール様が襲来しかねませんからな」


リ:「流石にそんなことは……無いとは言い切れないのが怖いね」


デ:「ところで、最近向こう側から流れてきた宗教はご存じですか?」


リ:「もちろん。向こう側では農村部や貧民街など、貧困層を中心に広がっているそうだ。

  こちらでも行商人たちから広まり始めている。想像以上に浸透が早いね」


デ:「教義の内容も確認しましたが、個人的には歓迎したいですな」


リ:「今の教会は上層部が金の亡者になってしまったからね。

  何とかしたいと思っていたところさ」


デ:「しかし宗教戦争となるとかなり大規模な混乱が生まれます」


リ:「ああ。やるならじっくりと準備して、一気にひっくり返すべきだろうね」


デ:「誰かが裏で纏める必要があるでしょうな」


リ:「そこは任せてくれていいよ。根回しは私の十八番だ」


デ:「我々も協力は惜しみませんよ。まずは水面下で広げていきましょう」


リ:「そうだね。向こうの本部には良さげな報告だけ送るようにしておくよ。

  どうせ彼らがこっちに来ることなんて無いからね」


という会話がガイエスの酒場でされたとか。

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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ…プロット通りに進まないのめっちゃわかります…!イラストも、小説も、最初のアタリ・下書きとかプロット通りに行くことがまずないんですよね…ポーズ変わるわ向き変わるわ、キャラの性格変わるわ筋…
2020/05/27 02:03 退会済み
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