魔王様、無茶振りです
ここ数日一気にアクセス数とか評価が増えてます。
皆様ありがとうございます。
それにしてもランキング効果恐るべし。
王都の空港に着いた後、ふらつく俺を待っていた検査官に身元の確認をされる。
まぁ曲がりなりにも王都だしな。
その辺りは当たり前だろう。
しかも聞けば王都は一般区と貴族区に分かれており、ここは貴族区の空港なのだそうだ。
つまり普段使用するのはそれなりの地位にある人な訳で、来客も貴賓扱いされる。
「シュージ様。あちらに馬車の用意が出来ております。
陛下からはそのまま王宮までご案内するように仰せつかっております」
「分かりました」
「どうぞこちらへ。足元にお気を付けください」
気分はファーストクラスで降り立った富豪だな。
最初の確認以外、実にスムーズに案内される。
馬車に乗れば飲み物まで出てくる始末だ。実に快適。
そうして馬車が向かった先にあったのは白亜の王城だった。
「うーん、『魔王の城』って言ったらもっとこう、禍々しいのを想像するんだけど」
「はい?何かございましたか?」
「いえ、何でもありません」
鳥獣人のメイドのコンディさんに城内を案内されて客間へ。
部屋の内装は派手ではないけどお金がかかってそうだ。
汚したら罰金とか言わないよな。
「お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「陛下からは今から約1時間後に面会すると言付かっております。
その時になりましたらお呼び致しますので、ごゆっくりお寛ぎください。
何かあれば呼び鈴を鳴らして頂ければすぐに参りますのでお気軽にお呼びください」
「何から何まで至れり尽くせりですね」
「ふふっ。では一度下がらせて頂きます」
優雅にお辞儀をして部屋を出ていくコンディさん。
うーん。流石だ。世間一般にあるメイド喫茶のなんちゃってメイドとは格が違うな。
一つ一つの動きが実に洗練されていた。
そうして若干時間が出来たので部屋の中を見て回ることにした。
様々な調度品があるのだが、そのなかで一番目に着いたのが机でも椅子でも花瓶でもなく。
いや、正確には全部になるんだけど。
そのほぼ全てに付いている翼を広げた龍が山の上に立っている紋章。
以前リャンさんに貰った印籠によく似たデザインだ。
思い出せば城の正門にも付いてたし、王家の家紋なんだろう。
じゃあ、リャンさんの紋章は?
当然王家と関係のあるものだろう。
最低でも王家と血の繋がりのある公爵家といったところか。
でもそんな人がなぜ行商を?
あの様子だとそれなりの頻度でイニトの街に顔を出してるみたいだし。
と、あれこれ考えていた所で扉がノックされた。
「失礼致します。
シュージ様。陛下がお呼びです。一緒に来て頂けますか?」
「分かりました。案内をお願いします」
「はい、どうぞこちらへ」
そうして案内された部屋は8人掛けの机が1基あるだけのこじんまりとした部屋だった。
入口から見て一番奥の上座には20代後半か30代前半くらいの男性が座り、その左に文官らしき人が、右側に武官らしき人が座っていた。
「ようこそ、魔王城へ。
堅苦しい挨拶は不要なので、まずは掛けてくれ」
「はい、では」
正面の魔王様(?)の指示に従って一番下座に座った。
「さて、自己紹介と行こうか。
私が第34代魔王のリュウ・ショウジンだ。
隣に居るのは宰相のゲッペルンと魔軍総司令のハイネスだ」
「冒険者のシュージです」
「君の噂はリャンやミーシャから聞いているよ」
「あの、お二人とはどういう間柄なのですか?」
そう聞くと魔王様は聞いていなかったのが意外だったのか目を見開いた後、口元を緩めた。
「聞かされていなかったのだな。リャンは私の兄だ。ミーシャは姪っ子だな」
「やっぱりそんな感じなんですね。
印籠を預かった時点でそうじゃないかと思ってました」
「ふたりとも君を気に入ってたからね。
出来れば今後とも変わらず接してやってほしい」
「分かりました」
「うむ。
さて、本題に入ろうか。
君を呼んだのはリャンがべた褒めしていた冒険者がどんな人物かをみるのもあったが、トニイの街での1件も聞いている。
近々、我々が乗り込もうかと思っていた所だったので、仕事が減って助かったよ。
そしてそんな君を見込んでやってほしい事がある」
「やってほしい事? てっきり例の魔石を献上してほしいという話かと思いました」
そう言いながら無造作に魔石を机の上に置く。
ゲッペルン宰相は魔石を見て目を細めたが、魔王はそんな俺を見て試案顔になった。
「元々君からその魔石を奪うような真似をする気はなかったのだが、その様子からして手放したいみたいだね」
「ええ、まぁ。これのせいで方々から人がやってきて無駄に時間が取られてしまっているので。
もしここで魔王様に献上出来なければうちの教会に貢物として奉納するところです」
「それはやめておいた方がいい。
その魔石は奉納するには強すぎる。君の教会が聖域になってしまうよ?
スライム教の総本山にするにしても、一度場所を移すべきだね」
スライム教の総本山って。
いつの間にかうちの教会は独立した一大宗教になってしまったみたいだな。
まぁ俺自身、宗教に興味はないからローラさんの好きにして貰えればいいと思ってる。
「とは言っても場所を移すには時間が掛かる。
それまで私の方で借り受けておこう。移し終えたら返すから連絡してくれ。
もっとも、その頃には君はその程度の魔石は幾つも持ってるかもしれないがね」
「流石にそれは無いと思いますが。
ちなみに魔石は何に使うのでしょうか?」
「ああ。国家間の転移門の開通に使う予定だ。
現状、転移門は国内の都市間でしか使えないが、これを使えば王都同士を繋げることが可能だ。
そうすれば君も境界の向こう側の王都と簡単に行き来が出来るようになるだろう」
「たしかにそれは有難いですね」
って、あれ?
もしかして境界村やトニイの街で転移門の登録をしておいたけど、イニトの街には飛べなかったのか。あぶなかったな。
そう話がまとまった所で魔石は宰相が預かる事になった。
これで俺のところに来る商人とかは居なくなるはずだ。
「さて。改めて君にお願いしたいことだが。
君は魔族と魔物の違いが何か知っているかね?」
魔族と魔物?
どちらも魔界に住んでいるからって訳じゃないし、魔石を体内に持っているかどうかか?
いや、魔族が魔石を持っていないとは限らないか。魔族以外の人も魔石を持っているかどうかは確認したこと無いし。
なら。
「言葉を話すかどうか、でしょうか」
「うむ。近いね。より正確には文化文明を築いているかどうかだ。
魔族はその知恵を使って他者との交流を図り、言語体系を作り言葉を交わして街や国を作る。
対して魔物は動物に近い。種族特有のルールを作り縄張りを作ることはあっても、国を作ることは無い。
お互いに意思の疎通はしているようだが、文字などは使っているのを見たことが無い。
時々ゴブリンキングなどが同種族を大量に従える事はあるが、それも本能による繁殖はあれど次代に繋げる行動はとらないので国とは呼べないな」
「なるほど」
「魔界とはこの魔族と魔物がお互いの領土を奪い合うようにして発展してきた土地だ。
弱肉強食を良しとする者は後を絶たないからね。
だが私としてはこれ以上魔族の生存圏を広げる必要は無いと考えている。
生存圏を広げるというのは言い換えればずっと戦争をし続けているようなものだからね。
今でも手の付けられていない土地は多くあるし、あと3000年は土地不足になることは無いだろう。
だから私は先代魔王と共に20年掛けて法を整備し無為に魔物領に攻め込まないように楔を打ち続けてきた」
20年か。
こっちの人達は寿命も長そうだけど、それでもかなりの年数だろう。
まぁある意味それくらい時間を掛けないと文化や常識は変わらないってことなのかもな。
「ただな。どうしても不満は残る。お互いにな。
特に魔物にとってはこちらの法も事情も関係ないからな。
小さなきっかけ一つでまた戦争状態に逆戻りだろう。
私としてはそうなる前に手を打ちたい。
そこで君の出番だ!
なんでも君は魔物の言葉が分かるそうじゃないか。
その能力を使って魔物との交渉役をお願いしたい」
つまり魔物相手に外交をしてほしいってことか。
そう言うのって普通国を挙げて使節団を作ったりするものじゃないんだろうか。
魔族なら魔物言語を習得している人もそれなりにいるんじゃないのか?
「あの、それかなりの大役ですけど、俺なんかに頼んで良いんですか?
言ってしまえば俺はただの旅行者ですし、国に対してなんの責任も持っていませんよ?」
「ああ、分かっている。だがだからこそ良いのだ。
国の者ではどうしてもこちらの利益を優先してしまうだろうし、魔物も同様に考える。
彼らも馬鹿ではないからな。侮れば手痛いしっぺ返しを受ける。
その点君なら公平な立場で物事を捉えられるだろう。
結果、最悪魔物を率いて魔族を襲う事になったとしても、我々は恨んだりしないから安心してくれ」
「いや、流石にそんなことはしないと思いますが」
この国が先日のハゲ侯爵みたいな腐った貴族しかいないなら考えなきゃいけないけど、リャンさん達も居るし、ここに居る人達を見ればその心配は無さそうだ。
視界の端にクエスト受注確認のダイアログが出てるから受けても断ってもどっちでも問題はないだろうな。
あと問題は俺一人の力では明らかにキャパオーバーって事だろうな。
「引き受けた場合、交渉の期間中、国からの支援は十分に頂けると考えて大丈夫ですか?」
「!!」
「ああ、構わんぞ」
「お、お待ちください陛下!!」
慌てて魔王の発言を遮ろうとする宰相。
逆に将軍は沈黙を保っている。
「陛下。それでは彼が私腹を肥やすことにもなりかねませんぞ。せめて検討するに留めねば」
「宰相よ。アホ貴族の相手が長くなって目が悪くなったようだな」
「なっ」
「彼が私利私欲で暗躍する人物ならもっと狡猾に動くだろうし、その魔石だってより効果的に恩を着せてきただろう」
「それは、そうかもしれませんが」
「少しは将軍を見習ってみよ。この一連の流れで微動だにもしておらんぞ」
「……将軍は寝ているだけでしょう」
「……」
「……フゴッ」
まるで頷くように舟をこぐ将軍。本当は起きてるんじゃないよな。
「ごほんっ。
これでも悪意を感じ取れば即座に起きるので頼りにはなるんだが。
難しい話が始まったと見るや、すぐに居眠りをするのがな。
まぁよい。
無駄に協議して時間を浪費するのも悪手だろう。
最悪私のポケットマネーから出すとする。
手始めに軍資金として1000万Gを渡すとしよう。
その程度なら財政も痛まぬだろう」
「分かりました」
「シュージよ。他に何かあるか?」
「そうですね。
では陛下とのホットラインを繋げることは可能でしょうか」
「ホットライン?」
「現地とここを一々行き来するのは時間が掛かりますから。
現地から直接陛下に連絡を取りたいと考えています」
「なるほど。確かに必要だな」
<魔王リュウ・ショウジンと友諠を結びました>
「これで今後は直接連絡が取れるだろう」
「ありがとうございます」
思いがけず魔王と友達になってしまった。
ローラさん達が聞いたら卒倒しそうだな。
「では最善を尽くさせて頂きます。
ちなみに魔物側の代表は誰か居るんですか?」
「ああ。この王都の東から南東にかけて『死の大地』と呼ばれる土地がある。
そこに住む黒龍王に会いに行くと良い。
と言っても、私も会ったことはないが、伝説ではかの地を統べる王だという話だ。
南側の終焉山に住むと言われているが詳細は不明だ」
『死の大地』に『黒龍王』って。どう考えてもラスボスじゃねぇか。
しかも伝説になるレベルって。
戦いに行ったら確実に瞬殺だろう。
どう考えても荷が勝ちすぎてるって。
はぁ……。
ま、言い換えれば俺達がどんなに弱くても誤差って事だ。
何とか交渉だけで解決できるように頑張るしかないか。
後書き掲示板:
No.122 通りすがりの冒険者
さて次のイベントの告知ですよっと
No.123 通りすがりの冒険者
というか早くね?
運営の本気度がぱないな
No.124 通りすがりの冒険者
ちなみに開催は1月後
No.125 通りすがりの冒険者
ww
No.126 通りすがりの冒険者
どんだけ溜めるんだよw
No.127 通りすがりの冒険者
理由はイベント内容からお察し、かな。
メインステージは海だって。
No.128 通りすがりの冒険者
海戦?それともレース?
No.129 通りすがりの冒険者
ここの運営だからなぁ
No.130 通りすがりの冒険者
多分両方、というか他にもありそう
No.131 通りすがりの冒険者
具体的な内容は随時出していくみたいだね
No.132 通りすがりの冒険者
どっちにしろ西海岸に集合だな。
……西海岸?まさか……
No.133 通りすがりの冒険者
上陸戦か!!!!!!
No.134 通りすがりの冒険者
否定できない所が怖い。
一体何が上陸してくるのか
No.135 通りすがりの冒険者
くっ。海岸沿いに要塞を建造すべきか
No.136 通りすがりの冒険者
まぁその前に普通に船作るべ
No.137 通りすがりの冒険者
だな。高速艇を作るべきか、漁船を作るべきか、戦艦を作るべきか悩むが。
全部となると1月でも足りない。
No.138 通りすがりの冒険者
戦艦なんて作れるのか?
No.139 通りすがりの冒険者
ガレー船くらいなら時代背景とも齟齬が無いかなと
No.140 通りすがりの冒険者
漕ぎ手の問題とかあるけどな
No.141 通りすがりの冒険者
潜水艦とか作っちゃダメかな
No.142 通りすがりの冒険者
Uボートか。
それもまた夢があるな
No.143 通りすがりの冒険者
いっそのこと潜水艇を作って海底探査に乗り出すとかどうよ
No.144 通りすがりの冒険者
多分魔物に襲われて沈没させられるね。
それにそんなの造らなくても水棲種族なら余裕
No.145 通りすがりの魚人
ああ、ようやく俺達の時代が来たな。
永かった。特殊2次職で陸上に上がれなくなって幾星霜。
ずっとこの時を待っていたんだ
No.146 通りすがりの冒険者
>>145
あ、噂の半魚人さんですか
No.147 通りすがりの冒険者
>>145
魚の胴体に人の頭と手足が付いているというあの
No.148 通りすがりの冒険者
>>145
ぶっちゃけ魚の着ぐるみ。
「フィーーッシュ!」とか叫んで踊ってそう
No.149 通りすがりの魚人
いや、別に某落ちものゲーのスケトウダラじゃねえからな




