完全犯罪
後書きのイベントですが、シュージは境界の向こう側に行ってしまっているので参加不可。
本人の気付かない間に完全にはぶられています。
そしてよくよく日間ランキングを見てたら100位以内に入っているという。
トニイの街の冒険者ギルドは、最初の街のものと構造はほぼ一緒だった。
なので迷うことなく受付へ。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。ようこそ冒険者ギルドへ、シュージ様。
私は当ギルドの受付担当のエリーナと申します」
実に丁寧にあいさつをしてくれるエリーナさん。
年の頃は俺と大して変わらないだろう。エメラルドグリーンの髪がウェーブしていて、耳に該当するところに小さな翼が付いている。
鳥系の獣人?にしては背中に翼も無さそうだし普通の人と大して変わらない。
っと、そんなにジロジロ見るのは失礼だな。
「えっと、ここに来たのは初めてのはずですが、なぜ俺の名をご存じなのですか?」
「それはもう、有名人ですから。
スライム教の開祖にして教主。『スライムを統べる使徒』と呼ばれているのをご存じないですか?」
「初耳です。街に入った時の門番の人達にも知られていなかったので、呼んでいるのはごく限られた人では?」
「あーそうかもしれませんね。
ギルドとスライム教の信者ならほとんどの方が知っているはずなのですが。
ここだけの話、既にファンの方もいらっしゃるそうですよ?」
ファンって。何がどうしてそうなったんだ?
「まったく身に覚えがないんですが」
「うーん、ご自身の評価には無頓着でいらっしゃるんですね。少し例を挙げるだけでも、
『最弱を覆す者』『スラム教会の救世主』『新光鳥の主』『災害を未然に防ぐ者』『龍王と並び立つ者』『災害に立ち向かう者』などなど。
その姿は力なきものに勇気を与えると謂われています。
客観的に見ても吟遊詩人が詩にしていても不思議ではないと思いますよ」
挙げられた内容に心当たりはある。
でもどれもだいぶ誇張されている気がするな。
まぁそれよりもだ。
「最後の『災害に立ち向かう者』というのはもしかして」
「はい。シュージ様が街道に出現したレイドボスにたったお一人で立ち向かい、見事討伐したという情報も入ってきています。
あ、そうでした。その事でギルドマスターが会って話したいとの事でした。今お時間はありますか?」
「ギルドマスターが? 分かりました。時間なら大丈夫です」
「ありがとうございます。ではこちらへお越しください」
そう言ってギルドの奥へと案内するエリーナさん。
そういや最近こうしてどこかに連れて行かれることばかりだな。
まぁ今回は変な事にはならないだろうけど。
ギルドの2階の一番奥の扉をノックし、中に通される。
その部屋は質実剛健、必要なもの以外無いシンプルな造りだった。
扉側から見て右手にある巨大な執務机で作業していたのはリザードマンの男性だった。
「ギルドマスター。シュージ様をお連れしました」
「ご苦労。ついでに茶を淹れていってくれるかね」
「かしこまりました。マスターの給料から天引きしておきますね」
「ちょっ。待ってくれ。これ以上給料が下がったら妻に殺される」
「ふふっ、冗談ですよ。でもシュージ様にお出しするので良い茶葉を使いますね」
俺にウィンクを飛ばしながらエリーナさん。
どうやら今のやり取りはここでは日常茶飯事のようだ。
見た目はゴツくて怖そうなイメージのギルドマスターだけど、意外と話しやすい人なのかも。いや、そう思わせてくれたのか。
「ごほん。さて、立ち話もなんだ。座ってくれ」
「はい、では」
応接用の椅子に座ると、すぐに向かいにギルドマスターも腰かけた。
「シュージくん。君の噂はかねがね聞いている。
早速この街でも面白いことになっているようだね?」
「えっと、どこまでご存じで?」
「街に着いた早々、警備隊のアッテンに拉致されたそうじゃないか。
それなのに半日足らずでこうして無事にここに居る。
一体どんな手品を使ったのか教えてほしいね」
実に楽しそうなギルドマスター。
ただ目は真剣なことから面白い話を期待している訳ではなさそうだ。
「さてどこから話したものか。
そうですね。まずこれが今回の話の中心になる魔石です」
そう言ってレイドボスから取れた例の巨大魔石をテーブルの上に出した。
それを見たギルドマスターは愉快気に笑い出した。
「くっくっくっ。君はとんでもないものを気軽に出すなぁ。
こんなものを見せられたら確かにアッテンでなくても目の色を変えるさ」
「そんなに価値のあるものなんですか?」
「もちろん。これと同等のものを手に入れようと思ったらAランクの魔物の更にボスを倒す必要があるだろうね。
希少性もさることながら、用途も通常の魔石では対応できないアーティファクト級の魔道具に使うことになるだろう。
王に献上すれば爵位の1つや2つ貰えるレベルさ」
「なるほど、それで副議長が出張ってきたのか」
「副議長?」
「アッテンに連れて行かれた先に居たんですよ。テカりハゲ侯爵が」
「ぷくくっ。テカりハゲっ。くはははっ。それ良いね。今度から私もそう呼ぶことにしよう。
あいつは色々と黒い噂があるのだが中々尻尾を出さない事でも有名なんだがね。
大方君の事を、どこにでもいる普通の冒険者と思って油断したんだろう。
本来ならこの魔石を奪った後、君を契約魔法で縛るか闇に葬るつもりだったんだろうけどね。
しかし君はこうして無事にここに居る。
……ギルドカードを預かっていいかい?」
「?はい」
「ありがとう。エリーナくん、履歴の確認を頼む」
「はい、すぐに」
お茶を出した後、そのまま部屋に残っていたエリーナさんは俺のギルドカードを受け取るとキビキビと出ていった。
その行動は1職員とは思えない程優秀だ。
「ん?ああ。彼女はここのNo.3。全職員の管理監督をしてくれているのさ。
私なんかギルドマスターという肩書だが外との交渉が主でね。
ギルドの中だと肩身が狭いんだ」
頭の後ろに手をやって笑うギルドマスター。
家では奥さんの尻に敷かれ職場でもこれじゃあ髪の毛がある種族だったらハゲ散らかること間違いなしだな。
「それはともかく、これでハゲ侯爵の監査が進むよ。ありがとう。
ただそうすると今後君に逆恨みしてくる危険があるな」
「ですよね。悪党のやる事なんて古今東西変わりませんから」
侯爵本人が出てくることは無いだろうから、暗殺者を雇うとか闇ギルドを通じて賞金首扱いにするとかそんなところだろう。
俺がどこかの店で働いてたら、そっちに圧力を掛けてくる可能性もあったけど、幸い冒険者ギルドはそういった権力に屈することはなさそうだ。
「君さえ良ければ護衛を付けることも可能だが?」
「いえ、それには及びません。
ただその代わり、襲ってきた相手を返り討ちにして殺してしまうかもしれませんが大丈夫でしょうか」
「ああ、その点は心配しなくていい。
ギルドカードを調べれば何が起きたのかはおおよそ判明するし、君が罪に問われることは無い」
「それが聞けて安心しました。それにしてもギルドカードにそんな機能があったんですね」
「本来なら所有者の魔物討伐実績を正確に評価する為の仕組みなんだがね。
あ、もちろんプライベートな情報には本人しか見れないようにロックが掛かっているから安心してほしい」
それはそうか。
そうじゃなかったら怖くて持ち歩けないところだ。
「今後の予定とかは決めているのかい?」
「そうですね。今日のところは臨時収入も入りましたし、商店を覗いたり装備の更新をしたりですね」
「ああ、それはいいね。君の強さでその初心者装備は詐欺に近い。早めに相応のものに変えてもらえると余計な諍いが起きずに済むだろう」
ここに来るまでにも何度か初心者装備を見て絡まれたりしたからな。
人は見た目も大事って事なんだろう。
その後、多少雑談をした後、ギルドを出た俺はまずはギルドマスターに紹介してもらった防具屋と服飾店を巡り、どこに出ても文句が出ない程度には真面な恰好になった。
まさか服に100万も使う日が来るとはな。
リアルだと服装に1万でも高いと思ってしまう俺が居るんだけど。
武器に関しては籠手の魔道具にした。
これは魔力を流すことで腕の周辺にバリヤーを張れる優れものだ。
バリヤーの形状も強度も自由に変えられるのでいざとなったら武器にも出来る。
装備の更新を終えた後は、調味料や食材などを求めて商店へ。
そこで嬉しい事になんと味噌と醤油が売られていた。
これで米も手に入れば最高なんだけど「この街では扱っていない」と言われた。
つまりこの世界のどこかにありはするってことだ。これは是非探さねば。
それと掘り出し物が携帯用魔導コンロ。
これは今まで使ってたものと違って、低級な魔石を燃料に、自由に火力が調整できる優れものだ。
1台200万もしたが、今後またマグールさん級の大食漢が来ても大丈夫なように2台買ってしまった。
お陰で手持ちの残高はもう1万を切っている。
……俺ってこんなに散財するたちじゃないんだけど。
リアルに戻っておなじ感覚で金使ったらすぐに破産だな。気を付けないと。
その後、宿をとって夕食を食べた後、夜の散歩と洒落こむ。
敢えて人気の少ない通りを歩けば、尾行してくる人影がワラワラと20人くらい。
前も先回りしてるのが何人か居るな。ならもういいか。
振り返り尾行してきた奴らを確認すると正面には見知った顔があった。
隻腕のアッテンだ。
この世界、部位欠損は再生魔法で治るはずなんだけど。金が無いのか?まぁいいや。
「さっきぶりだな、アッテン。一緒に居るのはお友達か?」
「貴様よくもぬけぬけと。俺の腕を奪った礼はたっぷりしてやるからな!」
「まぁ待て待て、アッテンさんよ」
憤るアッテンの肩を抑えて宥めるのは隣の狼系獣人。
ウェアウルフ?ライカンスロープ?まぁどっちでもいいか。
俺からすればただの追剥ぎAだ。
「なぁそこの冒険者さんよ。
有り金とアイテムボックスの中味を置いて境界の向こうに帰るなら見逃してやる。
いくらなんでも、お前さん一人で俺達100人を相手に出来るなんて自惚れてはいないだろう?」
「100人? 俺には32人にしか見えないがな。
それともそこら辺を走り回ってる虫を数に入れてるのか?」
「ふ、ふんっ。自分の索敵能力の低さを露呈しやがったな」
いやハッタリ利かせるにしてももう少し近い数字にしないと嘘だとすぐにばれるだろうに。
それに動揺したらダメだろう。
次はもうちょっと演技に磨きをかけてこような。次なんて無いけど。
それと朝見た警備隊とは違って装備がバラバラでイマイチ動きに連携が取れてないところから正規の兵士ではないことが窺える。
なら容赦してあげる必要性は無いって事だな。
「あぁ、済まない。32人って言ったのは確かに間違いだったな。
もう残っているのはお前達2人だけだし」
「は?」
「なんだと!?」
アッテン達が慌てて周りを見ると、さっきまでいたはずの仲間が消えていた。
「ゲール?……ビンビ!?みんなどこに行った!?」
「まさかお前の仕業……なのか」
その問いには答えずに、俺はアッテンに冷めた視線を送った。
「アッテンは身に染みて分かってた筈だよな。
目の前の男が災害級の魔物以上の何かだって。
それがこんなあからさまに罠を仕掛けてきたんだから、もっと警戒しないと。
そんなんだから長生きできないんだよ」
「ううう、うるせぇ。てめぇの説教なんか聞くかよ」
「それもそうだな。じゃあこれでさよならだ。
スライム。食っていいよ」
「すらっ」
「な、むぐっ」
俺の声に呼応して、まるで影が伸びるようにして現れたスライムがアッテン達の顔面に張り付く。
次の瞬間。アッテン達は穴に落ちるかのように声一つ出せずに消えていった。
後には血1滴残っていない。
まさに完全犯罪だ。レイドボスから受け継いだ『暴食』スキルが優秀すぎる。
防ぐには防御力がスキル攻撃力を上回るか、魔法で接触を防ぐ必要がある。
本来なら扱ってるのがうちのスライムだから、上位冒険者には一切効かないはずだ。
ただ不意打ちが成功している現在、相手の防御力にはマイナス補正が掛かっているようだ。
お陰で一切の抵抗なくスキルが発動している。
ちなみに余談だけど、アッテン達以外の30人については話始める前から少しずつ数を減らしてはスライムとすり替えていた。
さっきアッテン達が振り返る直前まで一緒にいたのは粘着の応用でヒトガタになっていたスライム達だ。
日中ならすぐばれるだろうけど、月明りしかないこんな夜更けでは判別しにくかった事だろう。
なんとも可哀そうなことだ。
そうして俺は何事も無かったように宿に戻り眠りにつくのだった。
後書き掲示板:
No.334 通りすがりの冒険者
みんな乙~
No.335 通りすがりの冒険者
今回のイベントもほんと自由度高かったな
No.336 通りすがりの冒険者
攻略板見てきたら、フィールド毎に全然違ってて吹いた
No.337 通りすがりの冒険者
運営曰く1日毎のユーザーの活動内容でルート分岐がされてたらしいな
No.338 通りすがりの冒険者
という事はスタートは一緒?あれで?
No.339 通りすがりの冒険者
3割が最終日を待たずにデッドエンドになってたのは笑えない冗談だよな
No.340 通りすがりの冒険者
イベントフィールドはリスポーン不可だったからな。
俺のところそれに気付くのが遅れてプレイヤーがどんどん神隠しに遭っていく恐怖現象。
No.341 通りすがりの冒険者
そして誰も居なくなったw
No.342 通りすがりの冒険者
イベント結果発表出たぞ!!
ってか順位じゃなくて『○○賞』ってネタフリ全開かよ!?
No.343 通りすがりの冒険者
『最速自滅賞』……イベント初日でプレイヤー全滅w
多分全員が個々に戦いに出かけて死んだと思われる。
No.344 通りすがりの冒険者
www
No.345 通りすがりの冒険者
こっちも似てるけど更に酷い
『最速壊滅賞』……現地住民含め全滅まで3日
No.346 通りすがりの冒険者
バトルロイヤル通り越してデスゲームw
一体何があったらそうなるんだよw
No.347 通りすがりの冒険者
どうやら人が減っていく原因が現地民にあると考えたアホが犯人探しに人狼始めたらしい
プレイヤーが1人減るたびに現地民を1人磔にしたとか。
で止めどころ誤って現地民全滅。
No.348 通りすがりの冒険者
ちなみに現地民を殺すと何故か魔物は凶悪化してたので、現地民の全滅=プレイヤーの全滅
パワーアップじゃなくて凶悪化な。ここ大事。
No.349 通りすがりの冒険者
噂ではまさに地獄絵図だったそうだ。
完全トラウマもの
主犯はブラックリストに載ったという噂も
No.350 通りすがりの冒険者
なぁもうちょっとマシな結果は?
せめて現地民生存で最終日まで行けたルートで。
No.351 通りすがりの冒険者
………………なぁなぁ。
皆なんでそんなに殺伐としてたんだ?
俺のところ全然魔物出てこなかったんだけど。
No.352 通りすがりの冒険者
は?
No.353 通りすがりの冒険者
どゆこと?
No.354 通りすがりの冒険者
ちなみに受賞した賞は『牧歌賞』。
のんびり田舎生活を満喫したらもらえるらしい。
No.355 通りすがりの冒険者
あー、多分だけど誰も戦いに行こうとしなかったんじゃね?
No.356 通りすがりの冒険者
なんか明らかに魔物の多いルートと少ないルートが分かれてるもんな。
恐らくこっちの戦意に呼応して魔物が現れていたと思われる。
No.357 通りすがりの冒険者
じゃあボスが出た所と出なかった所の差は、
プレイヤーがボスを求めたかどうかの差ってことか?
No.358 通りすがりの冒険者
「こういうイベントなんだからボスが出るはず」って考えた人は多いだろうな
No.359 通りすがりの冒険者
そういう意味でもこのイベントのゴールはそれぞれ違ったって事か
No.360 通りすがりの冒険者
ちなみに牧歌賞の報酬はイベントフィールドの村が別荘地(サブ拠点)として今後も使えるそうだ。
場所は王都の南東。最初の街の西にあった湖の南西近くだ。
高品質の素材が色々手に入る
No.361 通りすがりの冒険者
現地民を殺したプレイヤーは近づくと重犯罪者扱いされるので注意。
No.362 通りすがりの冒険者
現地民としては悪い夢を見てたような状態らしい。
あるいは前世の記憶?
とにかく俺達の扱いが綺麗に2分されてて凄い。
笑顔で会話してると思ったら視線すら動かさずに真横にやってきたプレイヤーを槍で刺し殺してたw
No.363 通りすがりの冒険者
それ俺も見たかも。
LV40だったプレイヤーが避けることも出来ずに脳天に槍生やしてて吹いた
No.364 通りすがりの冒険者
村人最強説ww
No.365 通りすがりの冒険者
イベント中に狩人の青年と仲良くなった俺は今一緒に魔物討伐してるぜ
村の周囲限定だけどめっさ強い。多分3次職
No.366 通りすがりの冒険者
裏山
No.367 通りすがりの冒険者
あとヤバい賞はこれか?『スライム教布教賞』
現地民全員をスライム教に改宗させたらしいぞ。
No.368 通りすがりの冒険者
スライムさん、なにやってるの!?
No.369 通りすがりの信者
待ってくれ。神に誓って教主様は無関係だから
No.370 通りすがりの冒険者
教主て。スライム連れてたあの人がそうなのか?
そういやあの人を見かけたって人が最近居ないな
まさか天に召されたか?
No.371 通りすがりの信者
教主様は今、世界平和の為に魔界へと行脚しているそうだ
No.372 通りすがりの冒険者
ブフっ
突然爆弾発言やめろや
No.373 通りすがりの冒険者
魔界なんてあるのかよ
No.374 通りすがりの冒険者
まぁ天界があるんだから魔界もあって不思議じゃないけど
何をどうしたらそんなところに行けるんだよw




