権力には屈しません
黄門様は嫌いではありません。
そして魔界には無茶ぶりをする人が多いらしく、この先(6話ぐらい後)でちょっと更新が滞るかもです。
途中で執筆を辞めることは無いので気楽にお待ちいただけると助かります。
(後書きで遊んでる場合じゃないという説もw)
しばらく休んだ俺は改めて今回の件について思考を巡らせていた。
まず何が起点だったのか。
これは間違いなくあの魔石だろう。
金銭的価値だけで評価されたのか、それとも魔道具なんかに使いたいのかは分からない。
少なくとも買おうとすればかなりの額になるのは間違いないだろう。
じゃあ続いて、この件に絡んでいる人は誰か。
アッテンは確実だろう。
それ以外は?
例えばここの職員。この施設が本当に警備隊の詰所かどうかはさておき、受付の人の応対に特に気になる様子は無かった。
つまりこういったことは普通と見ていい。ならば黒に近いグレーと言ったところだろう。
他に考えられるのはアッテンの更に上の人物。
人を一人闇に葬り去るにしても、あの巨大な魔石を捌くにしてもたかだか警備隊長程度では荷が重い気がする。
だからこの街の顔役クラスの誰かが居ると見るべきだろう。
大方今はその人物に話をしに行っていると言ったところか。
ここで間違ってはいけないのは例えこの街の領主が黒幕だったとしても、街全体、国全体が俺に敵対してきた訳じゃないってことだ。
俺個人としては最悪、境界のクレバスを越えて二度と魔界に来なければ良いとしても、安易に関係ない人たちを巻き込むべきではないだろう。
この国にはリャンさんやミーシャさんのように良い人もいるのだから。
そうして諸々思考が纏まったところで、ガチャリと入口のカギが開き扉が開いた。
入ってきたのはアッテンと武装した兵士4名。
「お前の名前はシュージで間違いないな?」
「ええ、そうです」
最初に会った時とは打って変わって慇懃な態度で話すアッテン。
そう言えば名乗ってはいなかったなと呼ばれて思い出した。
「副議長様がお会いくださるそうだ。付いてこい。
くれぐれも妙なマネはするなよ」
「副議長様、ね」
「おら立て!」
「はいはい」
兵士たちに槍で追い立てられるように立ち上がった俺はアッテンに続いて部屋を出た。
前後を兵士で囲んでいるのは妙なマネを出来ないようにってことなんだろう。
「ところでどこで俺の名前を知ったんだ?」
「黙れ。無駄口を叩くな」
そう言いながら後ろから頭を殴られる。
こりゃ完全に罪人の処遇だな。
建物を出て馬車に乗り、着いた屋敷の奥の部屋へと通された。
いや、屋敷というより裁判所か。
部屋の中央に立たされ、正面2階席とでもいえばいいのか、こっちを見下ろす位置にある椅子にカッパ頭の偉そうなおっさんが座っていて、その両サイドにも何人か似たような感じのおっさん達が座っていた。
「遠路はるばるようこそ、シュージ君。
私はこの街の議会で副議長を務めるテッカ・ゲハル侯爵だ」
「はぁ」
正面のおっさんが分かりやすい見下した視線と共に話し始めた。
「気の抜けた声を出しよって。程度が知れるな。
おバカな冒険者にも分かりやすく簡潔に言おう。
君には今、窃盗の疑いが掛けられている」
「窃盗ですか。何を盗んだと?」
「白々しいな。魔石だよ。それも特級のね」
その言葉を合図にアッテンが魔石を全員に見えるように持ち上げた。
「その魔石はつい先日発生した災害級の巨大魔物の魔石である。
その魔物については君も話くらいは聞いただろう。
通常であれば軍で当たるかCランク以上の冒険者が数十人がかりで討伐に向かう相手だ」
そう言えば参加人数が最大100人になってたもんな。
流石レイドボスってところだ。
「アッテン君の報告では彼の部隊がその魔物を討伐している最中、たまたま通りがかった君が魔石だけ回収していったそうじゃないか」
「それは根も葉もない話ですね。全く事実とは異なります」
「嘘を言うな嘘を!」
俺が副議長の話を否定したら、アッテンが怒鳴ってきやがった。
「お前のような初心者装備の奴が災害級の魔物に立ち向かえる訳が無いだろ!
それに比べて俺の部下は魔鉄によるフル装備だ。
大方俺の部下を囮にして美味しいところだけ奪ってきたんだろ!!
そのせいで俺の部下たちは……」
「まぁ落ち着きなさい、アッテン君」
いや、個人的にはその続きが聞きたいんだけど。
その場に居もしなかったお前の部下になにがあったんだ?
俺の心の声が聞こえるはずもなく副議長は話を続けた。
「本来、他人の獲物を奪うのは重罪だ。特に今回は特級魔石という大変高価なものだ。
最悪死刑だってあり得る程だ。
だが君は異界の住人だそうだね。こちらの世界のルールもまだ分かっていない。そうだろう?
私たちだってね。前途ある君のような若者を失うのは惜しいと思っているんだよ。
だからどうかね。
君はあの魔石を偶然拾ってしまっただけ。この街にはあの魔石を届けにきたということにしては。
そうすれば何も問題は起きず、我々から君に謝礼を渡すことだって出来る。
君にとって悪い話じゃないと思うがね」
つまり二束三文で売れってことか。
なんでそんなまどろっこしい事をするんだ?
別に最初からこの魔石は我々のものだと主張すれば話は早いのに……あぁそうか。
ユニークなアイテムの場合、所有者が固定になっている場合がある。
あの魔石の所有者も今は俺になっているってことなんだ。
だからこんなまどろっこしい手順を踏んで、所有権を放棄させようとしているのか。
なら後の問題はこの部屋に居る武装した人がどれくらい強いかってことくらいか。
「えっと、副議長」
「おぉ、決心してくれたかね」
「はい。あなたの提案を全面的にお断りします」
「ッ!?」
俺の回答に青筋を立てて机を叩く副議長。
同時に俺の後ろに控えていた兵士たちが俺に槍を向けた。
「君は自分の立場が分かっていないようだね」
「副議長。逆にお尋ねしますが、もしそこにいるアッテンから正しい情報を聞いていた場合。
目の前に居る俺がどういう存在か理解されていますか?」
「何を言っている!?」
「俺は、方法はご存じないでしょうが、実際にはたった1人で災害級と称される魔物を倒したんですよ?」
「だ、だからどうしたというんだ」
「頭の回転が遅いなぁ。
災害級の魔物に勝てる人物が災害級の魔物より弱いとでも思っているんですか?」
「ぎぇっ」
そう言いつつ殺気を放つと副議長は潰れた叫び声を出しながら仰け反った。
「き、君は我々に手を出してただで済むと思っているのか!?
この国に反旗を翻すことと同義なんだぞ!
最悪君が元居た国との戦争の引き金にさえなりかねないんだぞ?」
大きく出たなぁ。というか、こいつにそんな権力があるとは思えないんだけど。
もしこれが戦争の引き金になるのなら、この国は元々戦争する気満々だったってことなんだろう。
それなら遅かれ早かれ戦争は起きる。それに。
「もしそんなことになったら異界の冒険者たちは大喜びでしょうね」
1大イベントキタコレって。
その場合、間違いなく防衛ミッションになるだろうから、魔界側が勝てる見込みはかなり薄い。
ま、どうなっても俺の知ったところじゃないけど。
「さて。俺から提案できる一番穏便な案は、その魔石を俺に返して頂き、今日の出来事を忘れて頂く事です」
「くっ。冒険者風情が。
こちらが下手に出れば付け上がりおって。
やれ!!」
「はっぐふっ」
「ごぼごぼごぼ」
副議長の合図と同時に俺の後ろに居た兵士たちが崩れ落ちた。
見れば毒々しい顔色で泡吹いて痙攣を起こしている。
どうやら毒耐性は持っていなかったみたいだな。
予想外の事態に動揺の隠せない副議長。
「な、何が起きている!?」
「さぁ。具合が悪かったんじゃないですか?」
すっとぼけてみたけど、こっそり背中にくっついてたスライムが毒撃をお見舞いしただけだ。っと。
「逃げるならそれ置いてけ!」
「ぐああっ、腕がぁっっ」
魔石を持って逃げ出そうとしたアッテンの腕にスライムが飛び掛かると、その腕ごと食いちぎっていた。
アイテムボックスの中を確認すれば魔石は無事に格納されている。
よし、これであとは無事にここを出れたら万事解決だな。その前にだ。
あ、アッテンが痛みで転げまわってるけど無視な。
「さて、テカったハゲ侯爵。この紋章に見覚えはあるか?」
そう言ってリャンさんから預かった印籠を取り出して見せるといよいよもって崩れ落ちそうになっているハゲ。顔面と頭部が汗で酷いことになってる。
この様子だとこのハゲ副議長よりリャンさんの方が地位は上のようだ。
「き、貴様がなぜそれを持っている!?」
「これの正当な持ち主から預かってるだけさ。
という訳で俺は帰らせてもらう。
もし、今後まだ俺に何かしてくるようなら、色々報告するからそのつもりでな」
立ち去る俺を止めようとするものはもう居なかった。
俺は堂々と正門から屋敷を出ると、その足でそのまま冒険者ギルドへと向かった。
後書き掲示板:
No.332 通りすがりの冒険者
さ、お待ちかねイベントの季節が来ましたよっと
No.333 通りすがりの冒険者
今回はインスタントフィールドに分かれての活動か
No.334 通りすがりの冒険者
前回が殺伐とした討伐だったからな
かなり趣が違って楽しみだ
No.335 通りすがりの冒険者
村の開拓に周辺魔物の討伐、遺跡探索なんてのも出来るらしい
No.336 通りすがりの冒険者
相変わらずここの運営は色々盛り込んでくるな
No.337 通りすがりの冒険者
自由度が高いのは評価するけど、高すぎて何から手を付けていけばいいか悩む
No.338 通りすがりの冒険者
集まったメンバーの特技から考えると良いんじゃない?
1ブロック100人も居るんだから色々な職業の人が居ると思われる
No.339 通りすがりの冒険者
悲報:100人全員戦闘特化
No.340 通りすがりの冒険者
どこの戦闘民族だよw
No.341 通りすがりの冒険者
こっちは逆に農業林業畜産加工何でもござれ
その分戦力は少ないから魔物の襲撃とかあったらピンチかも
No.342 通りすがりの冒険者
俺教員免許あるから村の子供たちを育成してみる
No.343 通りすがりの冒険者
村人との交流か。それもありだな。
何かのフラグが隠されてるかもだし。
No.344 通りすがりの冒険者
あと願わくば前回みたいなイレギュラーが起きないと良いんだが
No.345 通りすがりの冒険者
イレギュラー?
No.346 通りすがりの冒険者
なんかあったっけ?
No.347 通りすがりの冒険者
ほら、北のボスの特殊ドロップが奪取されてからのバトロワ展開とか
西のボス含む魔物が出てこなかったり強化されたり
No.348 通りすがりの冒険者
あぁあったなそんなのも
No.349 通りすがりの冒険者
でも順風満帆なのもつまらんからな。
多少のハプニングは歓迎さ




