護衛クエスト開始
翌朝。
俺は日の出前に冒険者ギルドに来ていた。
「おはようございます。エリーゼさん」
「あら、おはようございます。シュージさん、ずいぶん早いですね」
「ええ。昨日は『明日の朝に来るように』とだけ言っていたので、念のため早めに来てみました。
いけませんでした?」
「いえいえ。とても良い心がけです。
ふふふっ。冒険者の方は時間にルーズなところがあるので、朝と伝えても昼前に来る人もいるんですよ」
「ふむ。つまりお嬢の目に狂いは無かったという事だね」
「ん?」
僕らの会話に後ろから入ってきた男性。
見れば年のころは30代半ばのちょび髭が似合うジェントルだった。
服装は一般的なものにプラス急所を守る防具を付けていて軽戦士っぽい。
「あなたがリャンさんですか?」
「おや、分かりますかな」
俺の質問におどけながら答えるリャンさん。
でも俺を見る目は鋭い。
目の前の相手が信頼に足る相手かどうかを見定めているんだろう。
「このタイミングで話に入ってくる人が居れば予想は付きます。
護衛依頼を受けたシュージです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼むよ」
握手を交わすと、細身の体からは信じられない程のゴツゴツした手の感触が伝わってきた。
この人は間違いなく強い。多分俺よりも。
「それで、すぐに出発しますか?」
「いや。期待以上に早かったからね。街を出るのは日が昇ってからだよ」
「それは良かった。エリーゼさんに一つお願いがあったんです」
「私に?何でしょう」
「調べてほしいことがあるんです。
エリーゼさんは俺が今、教会でお世話になっていることはご存じですよね?」
「ええ、もちろん。この街で新光鳥の居るスライム教会を知らない人はいません」
「スライム教会? ……なんですかそれは。
まぁ意味は何となく分かりますけど。ともかく。
実はですね。うちの教会および教会関係者の首に賞金が掛けられているかもしれないんです」
「そんなまさか」
「事実、俺は昨日3人組の冒険者から襲われたんですが、その時に俺の首に賞金が掛かっているって言ってました。
今のところ思い当たる節は教会の新光鳥だけです。
だから他の皆も同じように賞金が掛けられているんじゃないかと思いまして。
その真偽と誰が賞金を懸けたのかを調べて頂くことは可能ですか?」
「……分かりました。
あの教会はもう、この街のシンボルのようなもの。
事実確認と共に上にも話を通しておきます」
力強くうなずくエリーゼさん。
彼女の事だ。きっと俺が出ている間に色々手を回してくれることだろう。
それにこれで問題はうちの教会だけの話じゃなくなる。
エリーゼさんの行動によっては街を挙げて協力してくれることも期待できる。
今後を考えるならもっと実力と名声を上げて、国家権力にすら手が出せない存在になる必要があるかもしれないな。
って、それはどこのトッププレイヤーだって話だよな。
ま、出来るところまで全力でやるまでだ。その為にも冒険者ランクを上げよう。
「リャンさん。お待たせしました」
「もういいのかい?
ではぼちぼち行こうか。ウマを北門近くに待たせてあるんだ。
今から出ればそこまで歩く内に丁度良い時間になるだろう」
冒険者ギルドを出て北門に向かう間、俺は昨日疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「そういえば、ちょっと気になったのですがリャンさんはアイテムボックスはお持ちですか?」
「もちろんあるよ。それがどうかしたのかい?」
「アイテムボックスに荷物を積み込めば、わざわざ荷馬車を使う必要って無いんじゃないかと思いまして」
「ああ、その事か。確かに行商人以外は知らないルールだね。
アイテムボックスは持ち主しか出し入れ出来ない。持ち主が死ぬと荷物を取り出すことが出来なくなる。そこまでは良いね?
だから自分に何かがあっても荷物が無事なようにする、というのが理由の一つだ。
他にも税関の問題などもあるので街に入る時、半分以上の商品はアイテムボックスの外に出しておく必要あるのさ。商品の量が申告と違うと捕まることもあるね」
「なるほど。であればリャンさんの場合は1人ですし街を出た後の道中は荷馬車はしまってしまっても問題はないってことですか」
「いやいや。私に何かあれば荷馬車だけでも村まで行くようにウマに躾けてあるよ。
そうして、積み荷を対価にして救助隊を編成してくれるように村に頼んであるのさ。
ほら、私のウマはあれだ」
北門そばの停留所には何頭もの馬が居た。
流石ゲームというか、普通の馬以外に魔獣も居る。
その中でもひと際、馬の代わりにはならなさそうな魔物がリャンさんのウマらしい。
「これは、リス?いや、モモンガかな」
「このコはモガーという魔物だね。こう見えて普通の馬の数倍はパワーがあるよ。
モモ、彼らはこれから一緒に行動する仲間だ」
「モモン」
座った状態で俺と同じくらいの背丈の巨大モモンガ。名前はモモって安直だな。
ふさふさの毛並みは柔らかそうで撫でたら気持ちよさそうだ。
動かなければ巨大なぬいぐるみだな。
それがリャンさんの言葉を聞いて、右手を上げて挨拶をしてくれる。
可愛いもの好きなら堪らないしぐさだ。
「こんにちは」
「すらっ」
「モモ~」
俺とスライムが挨拶すると、モモは嬉しそうに一鳴き俺にのしかかってきた。
「ぬわっ。ちょっとまて」
「モモ~」
ぬいぐるみ訂正。しっかり中身が詰まってる、というか重い。
触り心地は予想通りふさふさなんだけどな。
そんな僕らを見たリャンさんが楽しそうに目を細めている。
「ほぉ、一目でモモに気に入られた人、初めて見たよ」
「感心してないで助けてほしいです」
「いや、済まないね。モモ、今はそのくらいで。
どうせ道中一緒に居られるんだ、続きはまた後にしよう」
「モ~」
ふぅ、やっと解放された。
あれ、そういえばスライムは?
「すらっ」
「ちゃっかりモモの頭の上に乗ってるし。いつの間に」
どうやら咄嗟にジャンプして難を逃れたみたいだな。
と、若干のハプニングもありつつも停留所を出て、リャンさんがアイテムボックスから出した荷馬車にモモをセットする。
これも普通の馬車と違ってワンタッチだ。
そして北門を出る際にちょっとした荷物検査を受けた後、俺たちは街道を北東へと進んだ。
道中は実に平和だ。
俺は偵察も兼ねてスライムたちに周囲の採集をお願いしたので、魔物や盗賊が近づいてきても直ぐに分かるし、ここらの魔物であればスライムが10体も集まれば大抵負けない。
今も蜂型の魔物がスライムの粘着で叩き落されて光に変わった。
「ふむ。キミの噂はお嬢から聞いていたが、本当にスライムで戦うんだね」
「ええ、そうですよ。俺自身はまだまだ弱いですから。こいつらのお陰で助かってます」
「私の知っているスライムはウサギにすら劣る最弱の魔物なんだがね。あれは本当にスライムなのかね?
見た目が同じなだけで別の魔物という事は無いのかい」
「間違いなくスライムですよ」
ウサギにも劣るって、懐かしいな。
ほんと、最初はそうだったなぁ。
それが今や俺よりも強いし、環境と数を揃えればトッププレイヤーにだって負けないんじゃないだろうか。
「そういえば、リャンさんはスライムを見たことがあるんですね。
イニトの街の近くでは全く見かけなかったんですけど」
「あぁそうだね。こっち側では余り見ないね」
「こっち側?」
「そう。境界の向こう側にはスライムもいるよ」
「境界の向こう側か……。
もし行けるなら行ってみたいですね」
一体この先に何があるんだろう。
エリーゼさんは自分の目で見た方が良いって言ってたし、リャンさんの口ぶりからして行き来も出来るし特に秘密って程でもなさそうだ。
境界が何かを知った後で色々教えてもらうのも面白そうだ。
後書き掲示板:
No.171 通りすがりの冒険者
西の港町に到着!!
海産物がうめぇ
No.172 通りすがりの冒険者
カニにウニにイクラ、鯛もアワビもあるよ♪
No.173 通りすがりの冒険者
なん、だと……!?
No.174 通りすがりの冒険者
これは行くっきゃないな!!
No.175 通りすがりの冒険者
ちなみに自分でとってこれば調理はお願いできる親切設計……らしい。
No.176 通りすがりの冒険者
>>175
らしい? そこのとこ詳しく
No.177 通りすがりの冒険者
湖の魚に比べてかなり強化されている。
釣りの難度もかなり高い。
なので海に潜ってとるのが一般的らしい。
だけど攻撃性も高級度に比例している模様。
No.178 通りすがりの冒険者
つまり?
No.179 通りすがりの冒険者
水棲種族以外のプレイヤーは魚の餌になるのがオチ
No.180 通りすがりの冒険者
まぁ彼らはこれまで散々我慢していた部分もあるしな。
それくらい活躍できる場を用意してあげないと可哀そうだろ。
No.181 通りすがりの冒険者
でもそれなら普通に店売りとか食堂に行けばよくね?
No.182 通りすがりの冒険者
そうなんだけど、お値段がね
No.183 通りすがりの冒険者
ここに来て破産する人続出
No.184 通りすがりの冒険者
もしかしたら南のカジノと闘技場よりヤバいかも
No.185 通りすがりの冒険者
誰が食うんだ、そんな高級魚
No.186 通りすがりの冒険者
貴族とかカジノで勝った人とか?
あと南側にお得意様が居るという情報も
No.187 通りすがりの冒険者
港の南っていうと、カジノ街の西側……あっ(察し
No.188 通りすがりの冒険者
確かにあそこの奴らなら金ありそうなイメージ
No.189 通りすがりの冒険者
カジノの胴元だって噂もあるしな
No.190 通りすがりの冒険者
それ以上はやめとけ
消されるぞ!!




