表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/59

魚釣りからの餌付け作戦

一昨日くらいからアクセス数がぐっと伸びたんですが、何があったんだろう汗

「いやぁ、助かったよ。

 俺としたことが調子に乗り過ぎたな。はっはっはっ」


 釣り具屋のご主人は俺に突き飛ばされた格好のまま頭に手をやって豪快に笑っていた。

 海の男は懐が広いとはよく言うけど、湖の男もそうなんだろうか。


「よし、じゃあ今度はお前さんがやってみな」

「はいっ」

「そういや、釣り餌は買ってなかったよな。何か餌になるものを持ってるのか?」

「ええ。俺にはスライムが居ますから」

「はぁ!?」


 驚くご主人を横目にスライムに釣り針にくっついてもらう。


「よし、行くぞスライム」

「すらっ」

「まずは近場からな。それっ」


 俺はいつものスライム投げの要領でスライムを湖へと投げ込む。


「おいおい、大丈夫かよ」

「スライムですから。っと、もう捕まえたみたいです」


 投げ入れてから3秒と経たずに糸が引かれた。

 俺は特に考えずに竿を引き上げれば、見事50センチほどの魚を捕まえたスライムが釣れた。

 ドヤ顔のスライムから魚を受け取ってアイテムボックスに収納。

 そういえば魚は釣れた状態から食材として認識されるみたいだ。

 さっきのナマズは倒さないと行けなかったので、普通の魚と魔物の魚で扱いが違うって事なんだろう。


「すらっ」

「よしよし、よくやったぞ」

「おいおい、今のはなんだ?」

「見ての通り、スライムで魚を釣り上げたんですよ」


 驚くような呆れるようなご主人の質問に答えたけど、伝わらなかったようだ。

 やったことは単純で、湖に入ったスライムが粘着で近くの魚を捕まえただけだ。

 向こうから食いつくのを待たないので通常より早く釣れる。


「さっきのナマズみたいな魔物だとこうは行かないですけど、普通の魚くらいなら俺のスライムは負けません」

「まったく。見た目は弱そうなのに大したもんだ」

「今では俺の大事なパートナーですよ」


 と思わず自慢してしまった。

 俺も親ばかかもしれんな。


「それはともかく、今くらいのサイズの魚なら十分軽く釣れるのが分かったので、実践と行きましょうか」

「実践?」

「やるぞ、スライム達」

「「すらっ」」


 ビシッと敬礼するスライムx50。

 彼らには3体1組になってもらい、2体で釣り竿を持ち、残り1体が餌役を担当。残りは補助だ。

 お互いに竿がぶつからないように広がってもらい、めいめいに湖に釣り針を投げ込む。


「こ、このスライム達は釣りも出来るのか!?」

「やらせた事は無いですけど、だいぶ器用になってきましたからね。

 無理だったら別の方法を考えようかと思ってましたけど、何とかなってるっぽいですね」


 俺達の視線の先でどんどん魚が釣り上げられていく。

 サイズはどれも30~50センチと小振り(?)だ。

 釣れた先からアイテムボックスに放り込み、餌役を交代しながら次の釣りを開始している。

 スライム達からは喜の感情が送られてくるので、楽しんでくれているようだ。

 ちなみに一番人気は餌役らしい。


「お前さん。漁師になる気はないか?

 この頻度で魚が釣れるなら十分食っていけるぞ」

「あははっ。今のところその予定は無いですね」

「そうか。まぁ大物が釣れるようにならないと1人前とは呼べないから仕方ないか」

「あ、そっちはまた明日チャレンジしてみるつもりです」

「そ、そうか」

「今日はありがとうございました」

「良いって事よ。俺も面白いもの見せてもらったしな」


 お礼を言ってその日は街へと戻った。

 スライムたちはそのままに。



 そして翌日。

 昨日の岩場に到着した俺を軍隊よろしくスライムが整列して待っていた。


「よし、みんな。今日が本番だ。

 まず20体1組で2組作ってくれ。残りはサポートだ」

「「すらっ」」

「今日は10メートル先の沖で大物を狙うぞ」

「「すらっ」」

「ここにガントさんに造ってもらった杭がある。

 これを今から地面に刺していくので、皆はこれに粘着で体を固定。

 獲物の引きに負けないようにしてくれ。

 まずは俺が試しにやってみるからな」


 そう言って釣り針にスライムを2体くっ付けて釣り竿を大きく振りかぶる。


「すら~~」


 スライムにとっては丁度良いアトラクションなのかもな。

 悲鳴ではなく楽しそうな声をあげていた。


……ぼちゃん

…………キラッ。ビビッ


 一瞬、倒された時の光るエフェクトが見えた後、昨日釣った時とは比べ物にならない程の力で糸が引かれた。


「くっ。スライム、サポート頼む」

「すらっ」


 俺の声に応じてスライム達が粘着で俺を地面に縫い留めた。

 更にパワーアシストよろしく一緒に竿を引き上げれば、昨日のナマズ同様、水上に飛び上がった魚は一直線に俺達に飛び掛かってきた。


「どっせい」


 ごちんっと俺の振り下ろしたハンマーがマグロっぽい魚の頭に直撃。

 目を回したところをスライムでタコ殴りにすればあっさりと討伐が完了した。

 よしよし。

 これで俺達だけで大物も釣れることが分かったな。

 後はスライム達だけでも釣れるかどうかか。

 そんな俺の心配は無事杞憂に終わった。

 杭にひっつく事で引き合いに負けなくなったスライム達は見事大物の魔魚を釣り上げた。

 そして釣り上げられた魔魚はなぜか例外なく釣り上げたスライム達に頭からダイビングアタック。

 それに対しスライム達の取った行動は『うけとめ&バックドロップ』だった。

 普通の人なら正面から受け止めれば大ダメージになりそうなところを、2~3体が犠牲になりつつ残りのスライムが粘着でキャッチ。

 飛び込んでくる勢いを更に加速させて岩場に叩きつけて倒していた。

 その際、顔面に張り付いていた数体が光になって消える。


「お前達。俺が言えた義理じゃないけど、もうちょっと自愛精神を持った方が良いんじゃないか?」

「すらぁ」


 思いっきり呆れたため息をつかれてしまった。

 まあなぁ。これまでも今もずっとスライム達に決死の特攻をさせていたのは俺だからな。

 ほんと今更何を言ってるんだってところだろうな。


 ごほんっ。

 気を取り直して、釣りを続ければ、午前中だけでもかなりの量が獲れたので釣りは終了にして、俺達は本命のイベントフィールドへと行くことにした。

 イベントフィールドに入った途端、さっきまで晴れていたのにどんよりとした雲が広がり出した。


「おぉ、居る居る」


 湖のすぐそばの平原では主に遠距離攻撃プレイヤーと鳥たちとの熾烈な争いが繰り広げられていた。

 鳥は翼を広げたサイズが大体1メートルくらいで、羽毛はグレー。恐らく曇り空の保護色になっているんだろう。

 そして鳥たちの事情を多少知っている俺からしたら『湖に魚を取りに行きたい曇鳥 VS 妨害するプレイヤー』の図に見える。

 スライムを使役する者として親鳥の方を応援してあげたいんだがダメだろうか。

 ……応援だけなら良いかな。邪魔する訳じゃないし。


「となると。みんなの邪魔にならないところに陣取るか」


 周囲を見渡せば、なぜか柱の様に岩が幾つか飛び出している。

 細いもので直径1メートル、大きいもので10メートルはある。

 高さも3メートルくらいから300メートルくらいのものも。

 よく見ると何故か一番高い岩の壁にへばりついているプレイヤーも見える。

 どうやら岩の頂上を目指しているようだ。何かあるのかな?

 折角だから俺も岩の上に登るか。


「スライム。誰かいないか先に見て来てくれ」

「すらっ」


 フィールドの南端ギリギリの岩の上にスライムを投げ上げる。

 すると頂上に降り立ったスライムから〇と返ってきたので、以前岩山を登った要領で岩の頂上へと登った。


「どことなく、高層マンションの屋上の眺めだな」


 ぽつりぽつりとここと同程度の高層マンション(岩)がありつつ、下を見れば人が行き交っている。

 またよく見れば他の岩の幾つかにも他のプレイヤーが居て飛んでいる魔物に矢を射かけているのが見える。


「そっか。下から矢を打ち上げるより上からの方が威力も上がるよな」


 ただその分、逃げ場が少ない為に鳥に群がられている場所も何か所かある。

 あ、たまらず誰か落ちた。

 この高さから紐無しバンジーは怖いだろうな。なむなむ。

 さて。俺は俺で予定通りやろう。

 鳥のサイズは1メートルほど。なら食べる魚もそれ以下の方が良いよな。

 そう思って昨日獲れた30センチ程度の魚をアイテムボックスから取り出して岩の上に並べてみる。

 すると……


「ケェー、ケェー」

「ケェー、ケェー」


 おぉ、集まってきた集まってきた。

 ただ俺を警戒してか、直ぐには降りてこない。

 うーん、もうちょっと待ってみるか。

 俺としては今回、戦う意志が無いので胡坐をかいてだらけてみる。

 それを見て鳥たちも徐々に近づいてきたけど、まだ降りてこない。

 仕方ないな。


「ほれ、食っていいぞ」

「ケェー」


 魚を1尾空に放り投げれば、見事にバクっと空中キャッチ。

 そいつはそのまま雲の上に飛んで行ってしまった。

 上空にはまだ20羽以上が旋回している。


「全部投げ上げるのは疲れるから自分で取りに来い」

「ケェー」


 ポンポンと地面を叩きながら声を掛けると、1羽がおっかなびっくり降りてきた。


「ケェー?」

「おう、持ってけ」

「ケェー」


 バサバサと嬉しそうに羽ばたいたそいつは置いてあった魚を咥えると飛び上がり、俺の上をクルっと一回りしてから雲の上に飛んでいった。

 そしてそれを見た他の鳥たちも我先にと降りてきたので、追加でアイテムボックスから取り出してやった。

 そうして50尾以上捌いた頃、雲がグレーから黒に変わり雷光が煌めきだした。

 これはボスのお出ましかな?


「グケェー」


 全長10メートルはあろう、巨大鳥が暗雲から飛び出してきた。

 予想通りボスだな。

 それを見て周りのプレイヤー達も色めき立ち矢を放っていた。

 ボスはそんなプレイヤー達をあざ笑うかのように矢の届かない場所をぐるっと飛び回り。

 そして俺の居る岩場に突撃を仕掛けてきた。


「どわぁ」

「グケェー」


 気が付けば俺はボスに捕まれ空を飛んでいた。

 ちょ、待て待て。俺は美味くないと思うぞ?


後書きイベント攻略掲示板:

No.222 通りすがりの冒険者

なぁ、なんか南の岩山に魔物が集まってるんだけど。


No.223 通りすがりの冒険者

あぁ、あれか。どっかの馬鹿が魚を餌におびき寄せてるんだろ?

それで近づいてきたところを倒していく算段なんだろうな。


No.224 通りすがりの冒険者

結果、自分たちが餌になるという


No.225 通りすがりの冒険者

あるある。

っと、ボス北


No.226 通りすがりの冒険者

相変わらず最初は無敵モードだな。


No.227 通りすがりの冒険者

王者のごとくフィールドを1周して巣に戻ってからが本番


No.228 通りすがりの冒険者

って、さっきの岩山に突撃したんだけど!?


No.229 通りすがりの冒険者

さっきの奴もボスの餌になるなら本望だろう


No.230 通りすがりの冒険者

いやいや




No.245 通りすがりの冒険者

……ボスどうした?


No.246 通りすがりの冒険者

降りてこないな




No.261 通りすがりの冒険者

悲報:雲が通常モードに戻った


No.262 通りすがりの冒険者

え、ボスは??

まさか逃げた?


No.263 通りすがりの冒険者

なぜか通常の魔物も明らかに数が減ったように見えるんだけど


No.264 通りすがりの冒険者

確かに。一体何が起きてるんだ!?





No.511 通りすがりの冒険者

またボスがドタキャンした件。


No.512 通りすがりの冒険者

運営に確認取ったら特殊イベントが発生した結果らしい


No.513 通りすがりの冒険者

詳細は?


No.514 通りすがりの冒険者

一定時間ボスを含むイベント魔物の発生頻度の減少。

その後の魔物にバフが付くらしい。

ただ、その分、継続して魔物のドロップが良くなるって。

イベント発生のタイミングは発生させてる冒険者プレイヤー次第なので不定期だそうだ。


No.515 通りすがりの冒険者

それは俺達にとってプラスなのかマイナスなのか


No.516 通りすがりの冒険者

そいつは何のためにそんなイベントを起こしてるんだ?

何か特典でも付くんだろうか


No.517 通りすがりの冒険者

あ、俺そいつ見たかも。


No.518 通りすがりの冒険者

まぢか!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] スライムが釣りをする光景をアニメの映像で見たいです。 『すらっ』 と喋る?スライム君たちめちゃくちゃ可愛すぎる。 スライムて異世界のアニメや漫画多いけど面白い発想ですね。 最初に考えた人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ