運営のバグ取りをやらされてるとか言わないよな?
それにしてもなぁ。
まさか背中からぐっさりやられるとはね。
これからどうしようか。
北の岩山は恐らく行くとまた絡まれるだろうな。
結局このイベントで取れるはずの素材は何も手に入らなかったし、少しくらい自分の装備用に欲しかったんだけど。
まぁ行くとしたらほとぼりが冷めた最終日近くだな。
イベント自体は街の東西南北4か所でやってるらしいし、北以外のどれかに行くか。
よし、そうと決まれば今はデスペナルティが付いてるし冒険者ギルドで情報収集だな。
「ローラさん、また出掛けてきます」
「はい、お気をつけて。シュージ様に神のご加護がありますように」
<司祭の祝福により、デスペナルティが半減しました>
おぉ。
ただの挨拶だと思ってたら意外な効果が。
もしかしたら他の教会でも同じことが起きるかもしれないし、今後出先で困ったら試してみよう。
そうして冒険者ギルドに来た俺はいつものように受付のエリーゼさんの元に向かう。
「こんにちは、エリーゼさん」
「あっ。シュージさん。良いところに来てくれました」
「はい?」
よく見れば若干疲れた感じのエリーゼさん。
一体どうしたことだろう。
「何かあったんですか?」
「それがですね。
先日の預言の日以来、異界の方々が誰も依頼を受けてくださらないんですよぉ」
「あ、あぁ~。まぁそうでしょうね」
みんなイベントに行っちゃってるもんな。
それで依頼が滞っているってことか。
「でも元から居た冒険者の人達は?」
「居ますけど。最近はそれだけじゃ全然手が回らないんですよ。
預言の通り街の四方で魔物は大量発生してますし。幸いそちらは異界の方々が向かっているらしいから良いのですけど。
代わりにそれ以外の地域が。ほら、先日シュージさんが報告してくれた奴です。
それが他の地域でも起きてるんです」
「そうなんですね」
「はいぃ。ですからシュージさぁん。
シュージさんにも都合があるのは分かります。
分かりますが、そこを押して、何とか急ぎの案件1つでも良いので受けて頂けませんか?」
そう言ってしなだれかかるように泣きついてくるエリーゼさん。
うーん、これはかなりやられてるな。
イベント装備は気になるけど、俺にはスライムが居るしどうしても欲しいって程でもない。
「分かりました。出来る範囲で協力しますよ」
「ほんとですか!?ありがとうございます!!
それでは、シュージさんにお願いしたいのはこちら。
街の南東の湿地に東の魔物と南の魔物が移動してしまい魔物密度が急上昇しているとの報告があります」
「魔物密度?それが高まるとどうなるんですか?」
「想定される最悪のケースは大きく2つ。
1つは広い生息地を求めて大暴走が発生すること。ただしこれは同一種族が増えた場合に起こる可能性が高いので今回は大丈夫です。
もう1つは魔物の進化です。異種族の魔物同士で食らい合う事で通常この地域には居ない上位の魔物が生まれる事があるんです。
魔物の種類によっては進化した魔物を中心に巨大なコロニーを形成する危険もある為、早急に討伐する必要があります」
魔物の進化かぁ。
うちのスライムは少しずつ強くはなっているけど進化はしなさそうだから、ちょっと羨ましいな。
「移動した魔物はどういった種類ですか?」
「はい。東からは狼系の魔物や熊系などの大型の魔物が。南からは蛇や蜘蛛、毒蛾などの毒を持った魔物が多く移動したそうです」
「なるほど。ちなみに西側は大丈夫なんですか?」
「ええ、そちらは川と湖があり水棲魔物と鳥獣型の魔物が多いのですが、鳥は移動範囲が広い分、広く分散してくれたみたいですし、湖は半分以上が影響範囲外になっているお陰で生態系に大きな影響は出ていないようです」
「湖が半分無事だったのは幸いでしたね」
「本当に。あの湖は漁業者の生命線でもありますから。漁が出来なくなったら、街の魚介類が高騰する危険もありました」
道中魔物も出るだろうに、漁するだけでも命懸けだな。
「あと、今回のクエストの達成条件は何になりますか?」
「はい。まず今日から10日間の中で、最低3回、該当の地域を巡回してください。
これに関しては巡回終了後ギルドまで報告に来てください。
また先に挙げた魔物を見つけた場合は積極的に討伐して頂けると助かります。
続いて進化した魔物を発見した場合ですが、報告だけでも多少の追加報酬があります。
討伐頂けた場合は更に追加の報酬も用意させて頂きます」
イベント期間中に3回か。最低ってことはもっとお願いしたいけどって事なんだろうな。
逆に毎日じゃなくて良いってことはイベントの討伐と両立出来るようにっていう運営の配慮なんだろう。
「分かりました。ではまずはこれから見に行ってみます」
「よろしくお願いします。くれぐれも気を付けて」
「はい」
ギルドを出た俺はレスさんのところに顔を出した。
「こんにちは~」
「あ、いらっしゃいませ。シュージさん」
「街の南に生息している魔物対策用の薬が欲しいんですけど」
「南なら、そうね。
毒、麻痺、混乱、虚脱ってところかな」
「それなら毒と混乱は耐性があるので麻痺と虚脱用の薬をお願いします」
「はーい」
カウンターに用意されたのは4種類の薬。
2つは事前に飲んでおく予防薬で、後の2つは症状が出てから使う薬だそうだ。
「シュージさんは特に一人で活動されているんですから予防薬は必ず飲んでおいてくださいね。
酷い症状だと指1本動かせなくなって薬が飲めない、なんてこともありますから」
「そうですね。
いざとなったらスライムに飲ませてもらいますよ」
「えっ、スライムってそんなことも出来るんですか?」
「やらせた事はないけど。出来るよな?」
「すらっ」
力強くうなずくスライム。
いつの間にか頼りがいのある姿になったなって思うのは親ばかかな。
「『任せろ』だそうですよ」
「ほぇ~。上位の召喚士や従魔術士は魔物の言葉が分かるって言いますけど、シュージさんはもうそのレベルなんですね」
「いや、すみません。多分そうだろうなと思ってるだけで、言葉が分かる訳じゃないんです」
「そうなんですか? 私にはぽよぽよ動いている風にしか見えないですけどね~」
そうだったのか。
しかし、特に2次職に転職した訳じゃないし上位じゃないだろう。
レベルは蟻退治で多少は上がってるはずだけど。
えっと、今のステータスは……
「
名前:シュージ
種族:人間
ジョブ:固有召喚士(スライム)
状態:虚弱(全ステータス2/3。残り30分)
冒険者ランク:F
基礎レベル:14
ジョブレベル:20
HP:264/264
MP:412/412
STR:42
INT:70
VIT:51
DEX:48
AGI:40
LUK:62
〇戦闘スキル:
投擲術Lv8、格闘術Lv5、盾術Lv2、槌術Lv3、罠術Lv2
〇ジョブスキル:
高速召喚Lv6、多重召喚Lv6、以心伝心Lv2、
〇耐性系スキル:
毒無効化、精神異常無効化、
〇生産系スキル:
薬草知識Lv3、調合Lv2、料理Lv3、
〇一般スキル:
共有Lv3、登攀Lv1、HP自然回復Lv2、MP自然回復Lv3、
〇魔法:
召喚(スライム)Lv52、身体強化(自) Lv6、身体強化(他) Lv6、生活魔法Lv3
〇称号:
意志を貫くもの、ゴブリンバスター、蜂の天敵、闇を照らす者
〇配下:
ローラ、ジョン、ミーニー、ラナリン、ビスケ
」
おぉ、レベルがだいぶ上がってるな。
きっと大量の蟻を退治したお陰だな。
相変わらず召喚レベルだけ物凄い上がりスピードだけど。
他の固有召喚士の人も同じなんだろうか。会う機会があったら聞いてみよう。
後は……ん?
『以心伝心』なんていつの間に増えてたんだろう。
効果は心の通った相手と思いを通わせるスキル、か。
なるほど。これのお陰でスライムの気持ちがより分かるようになったんだな。
そのスライムのステータスはというと……。
「
名前:
種族:スライム
レベル:52
HP:112/112
MP:80
STR:45
INT:59
VIT:72
DEX:48
AGI:40
LUK:78
スキル:
分裂、粘着、硬化、毒撃、打撃力アップ、刺突力アップ、斬撃力アップ、跳躍力アップ、重量操作、身体操作、以心伝心、統率
魔法:
」
こ、これは!?
俺よりもうスライムのほうが強いんじゃないだろうか。
VITとか俺より上だし。それにここに来てINTも上がってきたな。
これ物量作戦で来られたらまず負けるな。
いつかスライムに使役される日が来るとか……
「は、ははは。無いよな。信じてるぞ」
「すら?」
「どうされました?」
「いえ、なんでも。では行ってきます」
俺はレスさんに手を振って工房を後にした。
思考は現実化するっていうしな。
考えないようにしよう。うん。
後書き生産掲示板:
No.102 通りすがりの鍛冶師
今回のイベント素材で早速ハンマー造ってみた
出来は悪くないんだが……
No.103 通りすがりの鍛冶師
第2の街周辺で手に入る素材で作った武器よりちょっと上ってところか
No.104 通りすがりの鍛冶師
だな。
第3の街が見つかるまでの繋ぎにはなりそうだが……
No.105 通りすがりの細工師
朗報。複数の地域の素材を掛け合わせると相乗効果が出るっぽい
つ『ウィングティアラ』
No.106 通りすがりの細工師
これは……南の木材と西の鳥の羽を使ったのか。
No.107 通りすがりの細工師
いや、細部に北の金属も使ってる。
お陰で耐久性向上、敏捷補正、MP回復速度UPが付いた
No.108 通りすがりの鍛冶師
ガタッ
No.109 通りすがりの錬金術師
ガタッ
No.110 通りすがりの皮革師
ガタガタッ
No.111 通りすがりの細工師
なんか色々沸いたw
でもこれ、まだボス特殊ドロップ使ってないんだぜ
そのせいか1つ1つの効果は微々たるもの
No.112 通りすがりの鍛冶師
つまりボスアイテムを使えばその効果も向上できる可能性があるってことか
No.113 通りすがりの鍛冶師
4地域のボスアイテム全部を使ったらどうなっちまうんだこれ
No.114 通りすがりの鍛冶師
試してみたいが、市場に出回ってるのはかなり高騰してるからな
No.115 通りすがりの鍛冶師
1時間に4体の頻度で出現するとは言っても需要に対して供給が全く足りてないんだよ
No.116 通りすがりの鍛冶師
運営何とかしてくれ!!
No.117 通りすがりの鍛冶師
このままだと血みどろの奪い合いに発展しそうな予感




