他のプレイヤーの戦闘風景
前話で岩山の高さが低すぎたので訂正しました。
その後、ログアウトしながらリアルでの休憩を挟みつつ360度広がる星空を眺め、日の出を迎えた。
来年の新年はここで初日の出を眺めるのも良いかもしれないな。
そんなことをぼーっと考えていた俺は、ふと山の反対側はどうなっているんだろうと気になった。
今回、蟻達は1方向からだけしか登ってこなかった。
もしこれが反対側からも登って来られたら間違いなく対応しきれなかっただろう。
「ただ距離が離れていたからなのか、それとも……っ!」
山の反対側。
そこには底が無かった。
いや、ダジャレが言いたかった訳じゃなくてだ。
まるで大陸を分断するかのような亀裂がどこまでも続いていた。
その闇を見ていると引きずり込まれるような錯覚を覚える。
なるほど。蟻達もこれを恐れてこちら側には近付こうとしなかったのかもしれない。
俺は街の方に戻ると山を下りることにした。
街へ戻り、無事に鍛冶クエストを終わらせ(ドロップしたアイテム量にびっくりされた)、その報告と共に鉄蟻が大量に密集していたことを冒険者ギルドに伝えると、もしかしたらイベント終了後に氾濫が起きるかもしれないとのことで警戒してくれることになった。
そっちはギルドに任せて、俺は数日遅れでイベントに参加することにした。
こういうのって初日は激混みだろうし、これくらいが丁度良いだろう。
さて、イベントフィールドを見渡せば、大勢のプレイヤーで賑わっていた。
鉄蟻討伐の行き帰り見た時は重量級ファイター系のプレイヤーばかりだった印象だけど、魔法使い系のプレイヤーもちらほら見える。
「『サンダーブラスト』!」
魔法使いプレイヤーの放った雷撃が魔物に突き刺されば、魔物を光へと変えた。
ここの魔物は金属を含んでいるからな。電気が良く通るんだろう。
他にも火炎放射みたいな魔法で魔物を溶かしている人も居る。
ただ流石に短剣系や弓矢はいない……いや、弓持ってる人も居た!
「矢は刺さらないと思うんだけど、どうやって戦うんだろう」
そんな疑問に答えるように弓プレイヤーが魔物に狙いを定めて弦を引き絞った。
……あれ、矢を番えてない?
「『インパクトショット』」
スキル名と共に弦から手が離れる。
そしてそこから飛び出したのは矢ではなく礫だった。
ああいうのは確か弾弓って言うんだっけ。
放たれた礫は魔物に当たるとパァンと激しい衝突音を立てて魔物を吹き飛ばした。
うーん、こうして他人の戦い方を見たのは初めてだけど面白いな。
このゲームは最初から多くのジョブを選択出来たし戦い方もそれに合わせてほんと多彩だ。
向こうではなぜかバイオリンを弾いている人も居る。バッファーかな?って思ってたらその人の周りにいた3匹の魔物が一斉に光に変わった。
音波による全周囲攻撃か。
戦いの真っただ中に飛び込んで演奏をしないといけないんだから、相当神経がすり減りそうだ。
ただその分の恩恵があの威力なのかもしれない。
「おおおおぉぉぉ!」
「ふんぬぁぁ」
「どりゃあぁあああ」
ひと際野太い掛け声と共に魔物に襲い掛かる一団が居た。
2メートル近い身長と額に角。そしてなぜか上半身裸だ。
全員が全員、大型のハンマーを担いで魔物を粉砕している。
「おい、見ろよ。鬼男組が来たぞ」
「うわっ、相変わらずすげぇパワーだな」
「唸る筋肉、良いわぁ」
他のプレイヤーが彼らの事を噂している。
どうやら有名人らしいな。
まぁあの目立ち様なら分からなくもない。
時々そういうネタプレイ専門のプロゲーマーも居るしな。
あと彼ら以外にも同様に何組か目立つ集団はいる。
「へいっ」
「ほっ」
「へいっ」
「ほっ」
ツルハシを規則正しく振るドワーフかノームと言った出で立ちの2人組。
「お前達、やぁっておしまい」
「へい、姉さん!」
「がってんだ」
女王様とガリノッポとちびマッチョの3人組など。
ああいうロールプレイも面白そうだ。
そして。
俺にとって最も馴染みのある言葉が聞こえてきた。
「『召喚:ストーンゴーレム』」
声の方を見ればファイターっぽくはなく、さりとて魔法使いっぽくもない男性が両手を前に差し出して魔法を唱えていた。
彼の目の前に光る魔法陣が展開され、そこからズズズッと石の塊、恐らくストーンゴーレムが出てきた。
「行け、ゴーレム。『スタンプ』だ」
「GGGG」
ドスンドスンと地響きを轟かせて走ったゴーレムは魔物の頭にその拳を振り下ろした。
ゴガンッとさっきの鬼男組に負けない衝撃音が響き魔物の体に罅が入る。
更にもう1撃叩き込むと魔物が光に変わった。
……たった2発か。
得意分野の違いと言えばそうなんだけど、うちのスライムとはえらい違いだ。
多分スライムでここの魔物を倒そうと思ったら数十発は攻撃させる必要があるだろう。
「ステータスだけで言えばだいぶ強くなっている印象はあるんだけどな」
このゲームはステータスに現れないパラメータがあるようだ。
分かりやすいところで言うと重量。
うちのスライムはゴム鞠のような軽さだ。お陰でバンバン投げられるんだけど。
それに対しストーンゴーレムは見るからに重そうだ。多分100キロじゃ済まないだろう。
その2体から同じ振り下ろし攻撃をさせた場合、明らかに後者の方が威力が高い。
他にも特効もしくは弱点属性もあるはずだ。
それらが分かれば戦いを有利に進められるだろう。
……冒険者ギルドにそういった資料あるかな?今度聞いてみようか。
ゴゴゴゴッ
「地震!?」
突然地面が揺れ出したかと思ったら、地割れと共に地面が突如盛り上がっていく。
その場にいたプレイヤー達はあまりの揺れにたまらず四つん這いになったり盛り上がった地面を転がり落ちていった。
「いや違う。ボスが出るぞ!!」
ボスって言ったらあれだよな。遠目からでも小山みたいに見えたやつ。
あんな巨大なのを倒せるのか?
そんな俺の疑問を他所に、ボスへと突撃を掛ける人影が居た。鬼男組の人だ
「うおおおぉぉ。っぐ!」
「くそっ。やっぱり出現エフェクト中は攻撃無効か」
振りかぶられたハンマーが弾かれ、他にも魔法などが飛んでくるもHPバーが出てこないところを見ると全て無効化されているようだ。
「しっかしデカいなぁ。
この魔物の頂上に行けたら皆の戦いを眺める特等席になったり……ん?」
いま頂上に花が咲いてなかったか?
まさか……いや。もしかしたら特殊採取ポイントだったりするのかも。
よし、一か八かやってみるか。
「スライム。あの頂上に採取出来るものがあったら取ってきてくれ」
「すらっ」
隆起するボスの頂上目掛けてスライムを投げ上げる。
スライムは放物線を描いて見事頂上付近に落ちた、はずだ。
ボスは高さ10メートルに達していて、ここからだと頂上はもう見ることが出来ない。
更に体形が正面から見たら五角形になっている為、今から登ることも難しい。
そして全身が地上に出たタイミングで攻撃無効化は解除されたらしく、今はもう巨人に群がる小人か、象に群がる蟻のようにプレイヤーが攻撃を仕掛けている為、不用意に近づくと流れ弾に当たって死にそうだ。
「遠距離攻撃は顔面に集中。近距離攻撃は足を狙え!」
「「おおおぉぉ!!」」
誰かの合図で攻撃の方向性が統一される。
ボスもプレイヤーの攻撃をモノともせず噛みつき、踏み潰し、更に背中の甲羅山から岩石を飛ばして反撃を行っている。
まさに怪獣大決戦とでも言いたくなる光景だ。
初期装備に毛が生えた程度の俺では出る幕は無いな。
「すらっ」
「ん?」
「すら」
手元に召喚しておいたスライムが俺の肩を叩いた。
どうやら頂上に投げておいたスライムが流れ弾に当たって消えたらしい。
最近分かったことだけど、召喚しているスライムどうしでお互いの状態が把握できるらしいんだよな。
お陰で教会に預けてきたスライムがやられた時なんかもすぐに次のスライムを派遣出来たりする。
今もここからじゃ見えない筈のスライムの状態が把握出来たりと実に便利だ。
「GAAAA」
お、とうとうボスの右足が砕けたらしい。HPも2割くらいになっている。
そしてボスが右側に倒壊(?)したところにプレイヤー達が我先にと殺到している。
みれば遠距離攻撃していた人たちも攻撃の手を止めて、ツルハシを持ってボスに駆け寄っていく。
どうやらボスの背中は採掘ポイントになっているみたいだな。
とどめを刺さないところを見ると、倒してしまうと採掘できなくなるってことだろうか。
「くそぉぉ。ねぇぇ!!!」
「なんでだ!!」
そして頂上付近から響く怒声。
……何があったんだ?
そういえばどこかのモンスターをハントするゲームでも背中に乗って剥ぎ取りってありましたね。
このFFFでは倒した後は魔物は光になって消えてしまうので、剥ぎ取るなら倒す前限定になります。
後書き検証掲示板:
No.334 通りすがりの冒険者
ボスドロップって誰か使った?
No.335 通りすがりの冒険者
双剣の作成で2つ使ってみた。
11と17。
No.336 通りすがりの冒険者
2つって剛毅だな
で効果のほどは?
No.337 通りすがりの冒険者
かなり良い。
1ランク上の性能になった。
更に11より17の方がかなり強い
No.338 通りすがりの冒険者
やっぱ数字は意味あったんだな。
アイテムの説明にある通り、ボスの残HPと数値は連動するものと思われる
No.339 通りすがりの冒険者
確認された最大値は29。
恐らく30がMAXだろうね。
No.340 通りすがりの冒険者
出現タイミングで採掘できれば100行けんじゃね?
No.341 通りすがりの冒険者
残念。出現中は無敵状態で攻撃も採掘も寄せ付けない。
出現後は花のありそうなところまで攻撃が届かない。
落雷みたいに上空から攻撃すればって思ったけど、バリアみたいなので弾かれてボスまで届かなかった。
No.342 通りすがりの冒険者
他のボスはどう?
No.343 通りすがりの冒険者
東の猛牛はおでこの角なんだけど
『傷ついたマテリアルブレイブ』
やっぱり『傷ついた』って言う接頭語が付いてるんだよな
No.344 通りすがりの冒険者
南も『未熟なマテリアルフルーツ』だった。
何かこの接頭語を取り除く方法があるとおもうんだが。
No.345 通りすがりの冒険者
西の怪鳥はそもそも見つかってない
No.346 通りすがりの冒険者
あれじゃない? あの雲。
怪鳥が止まり木の様に定期的に戻る雲が段々降りてくるじゃない?
山の上から飛び降りれば乗れると思うのよね
No.347 通りすがりの冒険者
山って、あれだろ? 柱の様に突き出てるやつ。
イベントモンスターが飛び交う中、あれを登るのは骨だぞ。
No.348 通りすがりの冒険者
でも確かにあの山のそばに雲は降りて来ていた様な気がするな。
No.349 通りすがりの冒険者
よし、ちょっとクライミングしてくる!
No.350 通りすがりの冒険者
いてら~